第30話 メグの嫉妬

ジュドー、サレナを先頭に、ヒロが真ん中、その後ろにマーテルとメグ、という陣形で一行は歩みを進めていく。

朝早くから湿地帯に最も近いキャンプから出発したため、まだ太陽は西側に見えている。

ああ、この世界でも太陽は西から東に移動するんだなぁ。

そんなことをヒロは思いつつ進行方向を見ていたら、遠くに湿地帯らしきものが見える。


同時に、ゾームによって壊滅したという村の残骸も見えてきた。


遠くに視点を飛ばす魔法を使い、サレナが村の状況を確認する。


「想像はしていたけれど、やっぱりひどいわね。

 残った村人の遺体は王国兵が処理してくれたみたいだけど…。

 見たところ、村の廃墟にモンスターはいなさそうね。

 行ってみましょう」


ジュドーがそれに答えた。


「よし、念のための警戒はおこならないようにな」


一行は廃墟となった村の方へ移動を開始した。

歩みを進める中で、ジュドーがヒロに問いかけた。


「ヒロ、死体とか見たことあるのか?」


ヒロは平和な世界から来た。

よって、人の死というものに直面するようなことは、日常としてはほとんど無かった。

そんな中、大量殺人が起きた村へ向かう。

ヒロは息を飲んだ。


「お気遣いありがとうございます。

 このプロジェクトの担当になった時から、覚悟は決めてます」


「そうか。

 慣れてない奴は、モンスターが食い荒らした場所を見るだけで倒れることもあるからな」


「私も聞くだけでゾッとはしますが…

 もし私が倒れたら、ジュドーさんが運んでください」


そのやり取りを聞いてたメグは、少しだけ眉をしかめ、口を挟んだ。


「…いまだに信じられない。

 あなたが大魔法を使ったなんて。

 呪文詠唱を省略していた。詠唱省略は高度なスキルだし、威力もこれまで見たことないものだった…」


それを聞いてヒロが頭を掻きながら答える。


「いやぁ、自分でもなんで出せたか分からなくてですね…

 そんなすごいことしたという実感もないんですよ。

 次はいつ使えるのか、正直分からないですし」


メグがポツンと言った。


「少し、悔しい」


メグはさらに言葉を続けた。


「でも、コントロールできないなら、どんなにすごい魔法でも、意味ない…」


「確かに、おっしゃる通り…」


ヒロとしては、充実感を得たら大魔法が使える、と聞いてからある程度意識して生活していた。

冒険者コンサルティングでも充実感がないわけではない。しかし、魔法は使えない。

他にも、難しいなぞなぞを解いて達成感を味わってみたりしたが、何も起きなかった。

どんな充実感でも良いと言うわけではないらしい。


全く以て女神ファシュファルも人が悪い。

きっと、プロジェクトマネジメントの知識を使って充実感を得ることが、大魔法発動のトリガーなのだろう。

プロジェクトは成果が上がるまで時間がかかるもの。

好きなタイミングで大魔法が撃てるというわけではない、ということだ。


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