第8話 看板娘

そんなこんなで一ヵ月。

この世界の生活にも慣れ始めたヒロ。


この日も、昼時にギルドで冒険者からの受付をしていた。


冒険者ギルドはシュテール内にいくつかあるが、王国直轄の冒険者ギルドは最も規模が大きい。

国からの仕事もここで募集されるし、他国の仕事もこのギルドに集まりがちだった。


その分、冒険者の登録も最も多く、冒険者たちが仕事を探しに来たり、仕事を街の人が依頼しに来たり、ひっきりなしに人が来る。


今日も忙しかったが、少し人に切れ目ができ、ヒロは一息付けそうなタイミングだった。


「今日もヒロさん、がんばってますね」


そうヒロに話しかけるのは、ギルドで働く女性、レインだ。

金髪の髪を束ねた、活発な印象の従業員である。

仕事としては、何かといろいろこなす。事務処理から交渉まで、ギルドに関することならなんでもやってのける。

全ての仕事が完璧!と言うわけではないが、ギルド内ではとても重宝されている。

人当たりも良い。

若そうなのに、仕事ができる。素晴らしい人材だ。


しかも見た目も良いとくるので、看板娘のようになっている。


なお、ヒロが大魔法を使ったことは、一部の関係者を除き、伏せられている。混乱を招くのを防ぐためだ。


レインも知らない。

ヒロは、違う世界から来たと言うと信じてもらえないので、基本的に遠い国から来た、と自分のことを説明している。

その甲斐あってか、みな普通に接してくれる。


ヒロはレインに、自虐的に言葉を返す。


「いやぁ、そんなことはないですよ。

 レインさんはすごいですよね。

 レインさんと話すために来た冒険者が、私が受付だった時の落胆の顔をよく見ますから」


レインがさらに返す。


「ギルドで働いて、結構経ちますから!

 "一日の長"です。

 ヒロさんの受付も、なかなか評判が良いんですよ?聞いたことありませんか?」


「私の受付が評判が良い…?いや、それは初耳…」


と話している最中に、冒険者と思わしき男がヒロのもとにやってきた。

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