1章 プロジェクト発足すべし

第7話 冒険者ギルド

ヒロがこの世界にきて、一ヶ月が経過した。


森でキラーマンティスの群れを消滅させた後、ヒロはジュドーとメグに街まで送ってもらった。

シュテリア王国の王都、シュテール。

3万人ほどが住む、この世界では大きな街に分類される街だ。

”この世界”とは、この異世界のこと。

地球ではない。にわかには信じがたいが、ヒロは街の人々の話を聞いていて、確信した。

本当にファシュファルに異世界転移されたのだと。


一ヵ月前、ヒロが魔法をぶっ放した時、ジュドーから矢継ぎ早に質問を受けた。


メグからも

「あなた、何者?」

と少し感情をあらわに尋問された。


だが、ヒロは女神ファシュファルからお願いされた、としか答えられなかった。

ジュドーは

「すごいなおい!神の使いか!」

と興奮したが、メグは大魔法のすごさは認めたものの神の使いであるということは眉唾と思っている様子だった。


メグによれば、キラーマンティスを倒した破壊の魔法も、転移の魔法も、とてつもない大魔法で、使える人はシュテリアにはおらず、もはや書物にのみ書かれた伝説のようなものだと言う。

ファシュファルは、本当にヒロに対して大魔法の力を授けたということだ。


ヒロという謎の魔導士の存在は、ギルドへの土産としてはかなり有用だったらしく、ジュドーとメグ、そしてマーテルはそれなりの報酬をもらったようだ。


マーテルは途中で逃げたにもかかわらず、ヒロはジュドーとメグに平等に報酬を分けるように促した。

ヒロは、まだこの世界に来て右も左も分からなかったので、敵をなるべく作りたくないと考えたのだ。マーテルでさえも。

森での状況を覆した、半ば命の恩人たるヒロには、ジュドーもメグも従った。メグはしぶしぶだったが。


その後のシュテリア王国内でのヒロへの尋問は激しかった。

王宮へ連れて行かれ、いろいろと問い詰められた。

ジュドーとメグという知名度のある人間がヒロの大魔法使用を証言したことで、ヒロがとてつもない大魔導士と思われたのだ。

急に現れた大魔導士。何が目的なのか、皆いぶかしんだ。


だが、実際のところヒロは魔法が使えない。

森でなぜ使えたのかと言えば、女神ファシュファルの気まぐれのような気がする。


結局、王国の魔導士ケルンという老人にいろいろ体を調べられたが、危険性はなさそうなので解放された。

が、シュテリア王国配下には置きたいらしく、王国直轄の冒険者ギルドで働くことになった。


ギルドで働く人数は十数人。

その一員として、ギルドの受付雑務処理のような役割を任せられた。

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