第4話 仲間割れ
ジュドーがボリュームを下げて話す。
「キラーマンティスだ。
最近、あいつが森に現れた。
普通の冒険者じゃ歯が立たないランクのモンスターなんだ。
だから、実力のあるメンバーでパーティーが構成された。
光の調査以外の、もう一つの難易度の高い依頼ってのは、キラーマンティスの討伐だ」
「え、あれと戦うんですか!?」
超巨大カマキリ。
どう見ても人間が生身でどうにかできる大きさではない。
なんだ、この人達は本当にゲームの世界の住人のように、超人的な力があるのか?
確かに、ライニャスは一瞬で倒してたけど…
廣田はそんなことを思い、不安な顔をする。
「あのランクのモンスターは、滅多にこの辺りには来ないはずなんだが、あんな感じでうろついているんだ。
キラーマンティスは雑食で、人間も襲う。
硬い装甲に覆われていて、並の冒険者ではダメージを与えられない、とても厄介な相手だ。
放置していると、冒険者が森を敬遠して依頼がこなせなくなってしまうから、ギルドから光の調査と共に討伐の依頼が出たんだ」
「ということは…?」
廣田は恐る恐る聞いた。
「あれを討伐する」
予想通りの返事が返ってきた。
その時、マーテルが口を挟んだ。
「依頼としてはキラーマンティスの討伐もありますが…あのサイズはかなりの大きさですね。
やめておきませんか?急場で構成されたパーティーより、しっかり準備したパーティーの方が良いでしょう。
怪我でもされたら、余計なアイテム消費で儲けが減りますから。
迂回しましょう。
もうそろそろ帰路につかないと日が暮れます。
森で夜を迎えることが危険なのは、ご存知でしょう?
まぁ、この怪しい男が見つかったので、成果ゼロではないですし」
ジュドーがそれに答える。
「確かに、もう街に戻るべきなのはその通りだな。
でも、迂回って言っても、見つかる可能性があるだろ。
街はキラーマンティスがいる方向なんだし」
「まぁ、確かに匂いで気づかれるかもしれませんね…。
キラーマンティスの好物であるライニャスの返り血を浴びてますから。
ジュドーさんと…その男」
マーテルはそう言いつつ、廣田のグレーのスーツの端に付いた血の跡に目を向ける。
ジュドーがライニャスを切った時に、廣田にも血がついていたのだ。
マーテルが続けた。
「ジュドーさんは見つかってもなんとでもなるでしょうが、そこの男はライニャスも倒せないようですから、ひとたまりもないでしょうね。
私はキラーマンティスに気が付かれたら、すぐに逃げますよ」
ジュドーがマーテルに反論する。
「おいおい、メグは回復魔法は使えないらしいんだ。
回復アイテム無しで相手しろってのか?」
「あんなの、倒さなくても倒したと言っておけば良いんですよ。
この森にいるのが一体だけかどうか分からないですし」
「そんなふざけたマネできるかよ!」
ジュドーとマーテルは言い争いを始めた。
廣田はゾッとした。
あの巨大カマキリが自分を襲ってくれば、確実に殺られる。
さらに、冒険者たちが仲間割れしている状態ならば、ばらばらに行動されて廣田一人はぐれるかもしれない。
見た感じ、ジュドー以外は助けてくれそうにない印象だ。
これは、仲間割れせずにこの三人できちんとキラーマンティスを倒してもらわないと、自分の生存率がぐっと下がる。いや、死ぬ。
廣田はそう思った。
「あの…みなさんは何が目的でこの依頼を引き受けたんですか?」
廣田は遮って聞いた。
ジュドーが答える
「俺は、もちろん依頼を達成して困っている人を助けるためだ」
次に、マーテルが口を開いた。
「依頼の達成で報酬をもらうためですよ。
だから、出費は抑えたいんです」
しばらく間が空いた。
メグも答える。
「成り行き…あえて言えば、生活費のため」
廣田は思った。
これは、三人の目的が合っていない。
この光の調査&キラーマンティス討伐の依頼を一つのプロジェクトとした場合、非常にまずい。
目的が統一されていなければ、各人が好き勝手に行動してしまう。
「なんだか、こんなプロジェクト、以前見たことがあるな…」
廣田はつぶやいた。
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