第3話 モンスターの森

三人の後を廣田はついて行きつつ、ジュドーから色々と話を聞いた。

彼らはシュテリア王国の冒険者ギルドというものに登録している冒険者で、いわゆるフリーランスのワーカーのようなものらしい。

ギルドに登録すると仕事のオファーが来る。


今回は、明け方に森の方向で強い光が目撃され、その調査を急遽仕事として依頼されたということだ。


なにか目的があって、人を集める。

、と廣田は思った。

こんな時もプロジェクトだとか考える自分に少し白けた。

プロジェクトマネージャーばっかりしているからかもしれない。


廣田はチームで、何かを成し遂げることが得意だ。そして、それが大好きなのだ。

数々のプロジェクトを成功に導いた経験がある。

チームで難しい目的を達成したとき、えもいわれぬ達成感を感じる。


今朝も、プロジェクトが終わり、そんな達成感を感じていた。

が、その矢先にこんな場所である。

プロジェクトマネージャーをしていた日常とは全く異なり、もはやここは、文字通りの異世界。


ファシュファルによればこの世界を良くするために廣田を転移したとのことだが、何をすればよいのやら。

プロジェクトを任せるのなら、背景を教えるのは必須だろう。

そんなことのこの世界の神は知らないとすれば、この世界においてはプロジェクトマネジメントの概念など皆無なのだろう。


廣田は、とにかく今は冒険者の彼らにすがるしかなかった。


「いつも、三人で仕事されてるんですか?」


廣田はジュドーに尋ねた。


「いや、この三人のパーティーは初めてだな。急な依頼だったから、寄せ集めの人員って感じだ」


「寄せ集め、ですか…」


確かに、三人の仲は良さそうには見えない。さっきのジュドーとマーテルの会話もなんだかよそよそしかった。

ジュドーが言葉を返す。


「寄せ集めって言っても、かなりの実力者が集まっているから安心しな。

 俺はまぁ、そこそこの戦士だが、この森のモンスターなら倒せなくはないさ。

 あのメグって娘は、若いけどシュテリアでもかなり名のしれた魔道士だ。

 マーテルは道具使いって言って、アイテムに精通してる。その道のプロってやつだ。」


後ろに続いていたマーテルが小声で言った。


「ジュドーさんも、難易度高ランクのモンスター討伐数、半年間トップじゃないですか。

 そこそこの戦士なんて表現、嫌味ですね」


「いや、たかが半年だし、まだまだだよ」


ジュドーが答えた。

三人とも手練ということらしい。

廣田は生きて帰ることに、さらなる希望が見えた。

廣田はジュドーに、さらに尋ねる。


「そんなに強い人たちが、よく急に集まりましたね」


「ああ、普通はこんなことないんだけどな。

 今回は光の調査の依頼の他に、もう一つ難易度が高い依頼があってな…」


「難易度の高い依頼…?」


「そう、もう一つの依頼ってのが…」


ジュドーは話している最中に、真剣な顔になり手で廣田を遮った。


「モンスターだ。気付かれないように、じっとしてろ」


廣田はジュドーの目線の先を見た。

木々の切れ目から、遠目になにか見える。

それは巨大なカマキリのような生き物だった。

距離があるのに、かなり大きく見える。

高さが3メートルは超えていそうだ。

良く見ると、ライニャスを大きな鎌でおさえ、捕食している。


「…!?」


廣田は驚きの声を必死で抑えた。

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