第7話 闇に葬られたブリテン王国(その3)
ジョセフは依頼書を読み終えた後リサとケイトに渡し、二人はないように目を通しコクリと頷きジョセフ二つ返事で答えた。
「OKだ」
ワルドは女王捜索の引き受け手が見つかり安堵した。支部長でもあるワルドは一冒険者にすぎないジョセフにゆっくりと頭を下げることはそうそう出来ることではなかった。ブリテン王国の国民として女王を慕っているだけあってワルドの人柄の良さが滲み出ていた。
ジョセフはリサ、ケイトを連れて事件の起きた場所を記した地図や資料を受け取り支部長室を軽くお辞儀をしながら出て行った。
ジョセフ達が出ていき暫くワルドは息を吹きながら背伸びをしていたら秘書が現れワルドに声をかける。
「……いいのですか?よそ者に女王の捜索などさせても……もしかしたら彼らはクラウディウス帝国のスパイである可能性だって……」
「仕方ないさ……彼ら以外に女王を探せるものなどこの国には誰もいないわけだからね。あのジョセフとリサの二人には色々と興味深くも感じているわけだしね。彼らも危険は承知の上で承諾しているわけで特に問題はなかろう。それに……」
「どうかされましたか?」
「そうだな……レストレード君、知っているかい?ワトソン王国の王女が一冒険者と婚約をしていることを?」
秘書のレストレードはワルドが突然話し出したワトソン王国の冒険者の話に瞳孔が開いた。
「支部長はまさかあのジョセフという少年がワトソン王国の王女と婚約しているとでも?しかし、そんなことはありえないですよ!第一王家の人間がたかだか冒険者と婚約だなんて――」
「そのまさかだ、そして偶然にも彼が一緒に連れている冒険者にリサという名の少女がいたんだよ。ワトソン王国の王女の名前もリサだったし彼がその婚約者で間違いはないだろう」
レストレードは首を横にふりながらワルドの推測を否定しつつジョセフ達が帝国側の人間ではないかと疑っていたがそれとは別にワルドは何処か面白そうな表情でジョセフ達のことを期待していた。
女王の捜索を開始していたが手がかりらしきものは一切見つからなかった。クラウディウス帝国の兵が闇討ちされた現場を記した地図をワルドからギルドを出る前に貰ってはいたもののワトソン王国王都ベイカーハイドの倍以上もの人口がいるためそうそう簡単なものではなかった。
「リサ、あのワルドという支部長はかなり誠実そうに見えるがどう思う?」
「ジョセフ様と会話しているときから心を読んでいましたがあの人は本気でブリテン王国への愛国心の強い方だと思いましたよ。他国の人間を巻き込むことには深く申し訳ないとも思っていながらも背に腹は代えられない状況を理解しながらジョセフ様に依頼を申し込んでいたみたいですし」
「取り敢えず女王様を帝国の人間に見つからないようにしなければいけないな……リサ、ケイト、慎重に行動しないと確実に命取りになるだろうから気を引き締めていこう」
「「はい!」」
ケイトとリサは同時に返事をし、ジョセフはフッと微笑しながらもう一度地図を開きながら帝国兵が殺された現場へと足を運ばせていた。
一刻も早く、女王を見つけてこれ以上ことを大きくしないでいいためにも。
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