第6話 闇に葬られたブリテン王国(その2)

 クラウディウス帝国領土の大都市ブリタンニアの冒険者ギルドはワトソン王国の冒険者ギルド以上に大きな建物で大都市と言われているだけその分稼ぎの良いクエストもジョセフとリサが旅に出る前にいたワトソン王国ロンドハイド支部よりも豊富であった。


 かつて、大都市ブリタンニアはブリテン王国の領土でありクラウディウス帝国の兵が監視を付けていたりと帝国の政策に反対する勢力が少なからずいたのだ。近頃は反対勢力からクラディウス帝国の兵が闇討ちに遭っており、同盟国でもあるワトソン王国の冒険者でもあるジョセフとリサでさえ入国審査の際、しつこく尋問をされたりとブリタンニアには悪印象を抱いていた。


 ジョセフはキョロキョロとギルド内を見物していたが国直属の貴族がかなりの出資をいてるからなのか豪華な装飾類で固められており鹿の剥製が置かれていた。その光景を見たジョセフはこれも支部長の趣味なのか、それとも温室育ちかのどちらかだろう。


 「ジョセフさんとその御一行のみなさん。支部長がお呼びです」


 受付のお姉さんは支部長室へと誘導し扉を三度ノックした。


 「支部長、ジョセフさん達御一行をお連れしました」


 「うむ、そうか……入りたまえ」


 支部長の声が中から聞こえ、受付のお姉さんはゆっくりと扉を開けた後すぐさま一階の受付へと戻っていく。そこに現れたのは明るい赤毛の長めのオールバックで切れ長の目の30代前半の男性だ。支部長室の机には書類がどっしりと置かれており、その支部長は机に座っていた。


 「君がワトソン王国を略奪しようとした魔王ベルを討伐した一員のジョセフか……手紙をわざわざ遠方からご苦労だった」


 「それはどうも……帝国ってのは中々に物騒な奴等が多いみたいだがいつもああなのか?」


 ジョセフは支部長に国情を訝し気に尋ねると支部長は目を瞑りフッと息を吹く。


 「ブリタンニアは名前の通り以前はブリテン王国の領地であったことは知っているかね?」


 「いいえ」


 「ここにいる笑死を含めたギルドの職員は皆、ブリテン王国の人間であり以前はもっとクエストも気軽に行えたのだがクラウディウス帝国に占拠されてからというもの色々と制限が設けられてね……そこで君に頼みたい!ブリテン王国の女王陛下を探してはくれないかな?これは私個人の頼みだ。報酬も望んだ額を出そう」


 「支部長さん、何事にも順序があると思っているが俺もあんたもまだ自己紹介を済ませていない」


 「これは失敬……改めて自己紹介をしよう。私は冒険者ギルドブリタンニア支部の支部長をしているワルド・ドゥカティと申す」


 「ジョセフ・ジョーンズ、そして横にいる二人はリサとケイトだ」


 ワルドとジョセフは互いに自己紹介を済ませ、再度ワルドは支部長としてではなくブリテン王国の一国民としてジョセフに女王の捜索を依頼する。


 「ワルドさん、女王はブリテン王国は事実上王族の血は途絶えたと聞いています。生きているかも分からない人間を捜索するというのは……」


 「確かに女王陛下が生きていらっしゃるかは誰にも分からない……だが、このところクラウディウス帝国の兵が夜中に惨殺されていることを考えれば女王陛下は間違いなく生きていると思いたい」


 「女王の捜索を依頼するってことはあんたもされるんだぜ?」


 ジョセフは今後の身の安全のためにもワルドに注意を促す。


 「勿論、これは私個人の頼みでありブリテン王国国民の願いでもある。嫌ならばこの件は忘れてもらいたい……」


 「ちょいと待ちな……俺は別に断るとは言っていないぞ。ただし条件はある」


 「その条件とは……?」


 机上で俯かせていた顔を見上げたワルドはジョセフにその条件とは何かを尋ねる。


 「俺は事実、ブリタンニアに到着する前にクラウディウス帝国の凶悪組織ジークのメンバーを数人殺している。女王捜索が終わる前は俺達の後ろ盾になってほしい。それでいいか?」


 ジョセフは多少強引ながらもワルドに交渉を持ち出す。


 「ちょっと待て!今、と言ったか?」


 ワルドは慌てて立ち上がり両手を机上の上に置きジョセフに尋ねる。


 「そうだ、リサとケイトの三人でな」


 「ジークはここら一辺でもかなりの強敵揃いの人間が集まっている極悪組織なんだぞ!」


 「それは人間の間での話で魔人族と比較すれば大人と子供くらいの差はあるはずだろ?」


 ジョセフは焦燥しているワルドにジークは人間としては強くても魔人族と比較すれば大したことはないと豪語した。ジョセフは数々の魔人族と戦い生還したからこそ貫禄を感じさせていた。


 「ギルドカードを拝見した限りそれなりに結果を出しているとは聞いていたがこれほどまでとは……」


 「まあ、殆ど成り行きでこうなったんですけどね」


 ワルドは冷や汗を流しながらジョセフに尋ねるとジョセフは苦笑しながら言う。


 「信じられんな……君がそのうちの一人であるとは……だからこそ興味深い……しかしいいのか?君は仮にもワトソン王国で活躍していた冒険者で女王を捜索するということは同盟国でもあるクラウディウス帝国と敵対することにもなるが?」


 ワルドはジョセフの経歴を知ったうえでジョセフに再度確認を行う。


 「俺がワトソン王国の冒険者であることがバレないように行動すればいいだけの話だ」


 「君が持ってきたハイード支部支部長のリバープルの手紙を読んだときから中々興味深い少年だとは思っていたがね……」


 ワルドはジョセフに渡すべく依頼書を作成し書き上げた依頼書をジョセフに手渡しする。ジョセフは依頼書を手に取り内容を確認した。

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