第5話 闇に葬られたブリテン王国(その1)

 クラウディウス帝国の領地っていうのは核戦争で格の炎に包まれ文明が崩壊しているわけでもないのにこの血と暴力支配するといった感じがまさに世紀末感が強く、誰もが正常では生きてはいられない世界であった。


 一人の女性は長い赤毛をなびかせながらクラウディウス帝国の紋章の入った鎧を纏った男に剣を突き出し尋ねていた。


 「お前はクラウディウス帝国の人間だな?あたしの娘二人は何処にいる?」


 「しっ、知らねえ……おめえの娘が何処にいるかなんて知らねえよ!」


 「そうっ、ならここで死んでもらうだけね……」


 赤毛の女性は凍えるような声でクラウディウス帝国の兵の喉を剣で突き刺す。怒りと憎しみに満ち溢れていた赤毛の女性は剣に付着した血痕を払い落とし鞘へと戻す。


 女性の持っている剣は装飾品がつけられておりどこかの貴族か王族が持っていそうなものでありどこかしら人を殺すことに罪悪感を抱いているようにも見えた。


 「クラウディウス帝国が共同統治の約束を破りブリテン王国を略奪さえしなければ、凌辱されることもなく娘達が攫われることもなかった……」


 カバンからクラウディウス帝国の兵から奪い取ったパンを口の中に頬張り泥を啜るような思いで荒野を彷徨っていた。


 赤毛の女性は二人の娘と病気で死別した夫のことを思い出しながらもクラウディウス帝国への憎しみを募らせながら、フード付きの白いマントを纏いながら考えていた。


 「スエトニウス、あいつは絶対に許せない……娘の純血だけでなく国を、財産を奪われたこの憎しみを晴らすまでは死んでも死にきれない!」


 純白のマントとは裏腹に女性の心は荒み切っており、復讐の旅を続けるべく次々とクラディウス帝国の人間を殺害していた。


 これも全ては病死した夫と攫われた二人の娘を取り戻すため、悪魔に身をささげる覚悟さえあった。


 ジョセフ達は街へと到着し、ギルド支部長に手紙を渡しに受付のお姉さんに「支部長本人に渡してくれ」と頼みそれを了承した受付嬢は「かしこまりました」とにこやかに受け答え支部長質へ向かうべく上の階へ行き、ジョセフはケイト、リサと共にクエストの張り紙を探していると冒険者達が噂をしていた。そう、クラウディウス帝国の人間が近頃何者かに無差別に殺害されていることだ。


 何故無差別にクラウディウス帝国の人間が殺害されているのか、考えられることは反乱軍が少しずつクラウディウス帝国の人間を暗殺していること、もう一つはブリテン王国の貴族か王族が復讐のための仇討ちをしているかだ。


 ジョセフは顎に手を当て眉間に皺を寄せ考え込んでいると傍らにいたリサが心配そうに俺に言葉を発した。


 「ジョセフ様、考えていることは分かりますけどあまり無理はなさらないように……」


 修行の旅に出た時からリサはずっと無茶ばっかりしているジョセフのことを心配し続けていた。ジョセフはリサに無理はしないようにと気休めの言葉を言うもリサの表情は曇ったままだった。


 「リサさんは本当に凄いですよね、ジョセフさんの顔は色眼鏡で表情が分からないのにそれを瞬時に察しているわけだから……」


 ケイトはリサに言葉を発しながら関心をしており、リサは「ジョセフ様のことを本気で愛しているからですよ?」と微笑する。


 リサの笑みはとても妖艶でロリコンでなくてもときめいてしまう程でジョセフのアドレナリンが脳内を迸らせていた。

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