第8話 闇に葬られたブリテン王国(その4)
ジョセフ達はブリタンニアの都心を手当たり次第回るも女王の手がかりは一切見つからなかった。
それどころかブリタンニアに到着してからずっと歩きっぱなしであったためかなりの疲労が下半身に蓄積しておりケイトは特にバテバテになっていた。
「ジョセフさん、この辺りで休憩しませんか?」
「今日は一日中歩いていたからな……泊まれる宿でも見つけて今夜はゆっくり休むとするか」
「そうですね、私も早くふかふかのベッドで休みたいです」
ケイトはジョセフに休憩することを提案し、リサはニヤつきながらジョセフを見詰めていた。
ジョセフはふと足を止め、ワルドから貰った地図を開き近くに宿がないかを確認した。地図を見るとジョセフ達が今現在いる位置は近くの宿から徒歩で五分程度でたどり着ける距離であることからケイトは迷わず指をさす。
「ここにしましょう!近くにあるんだしわざわざ遠い宿に行っていたら日が暮れてしまいます!」
ジョセフとリサはケイトの提案に賛成し近くの宿へと向かう。
五分ほど歩くと地図に書かれていた宿があり、看板には”ノーフォーク”と書かれておりそれが宿屋の名前であることが分かった。
「ワルドから貰った地図にこの宿と同じ名前が記されていたけど中々年季の入った宿屋だな……」
「私は早く休憩できるならどこでもいいです!」
ケイトはすぐさま宿に入ろうとジョセフとリサの手を握り強引に宿へと引っ張る。宿の扉を開けると客は2~3人程度しかおらずこれは空き部屋確実にあるなとケイトは結論付ける。
「すみません、今晩ここの宿でお泊りをしたいのですが空き部屋ありますか?」
受付へと駆け付けたケイトは唐突に受付の職員に尋ねる。
「シングルとダブルの両方空いていますけどどちらをご利用で?」
「そうだな……俺とリサと二人で寝るからシングルを二部屋でも大丈夫かな?あとは食事と風呂付でいいかな?」
「はい、お風呂でしたら今の時間帯が丁度空いています。食事とお風呂込みですと銀貨10枚頂いてもよろしいでしょうか?」
男女別々で入浴することを想定したジョセフは最低でも90分は確保したいと思い、職員にその旨を伝えると「そんなに長く入るんですか!?」と驚き始めた。日本人として育ったジョセフとしては譲れなかった。
ジョセフが職員に部屋の提示をするとケイトが発狂しだした。
「ちょっと、勝手に話を進めないで下さいよ!何で私だけ別室なんですか!仲間外れだなんて嫌です!」
ケイトはジョセフに猛然と抗議をするもジョセフはケイトを無視して手続きを済ませようとしているも職員はかなりの困り顔でいた。
「いいじゃないですか。私とジョセフ様は婚約していますし二人一緒でも」
「それなら私もジョセフさんと一緒の部屋がいいです!」
「ケイトさんはジョセフ様と婚約関係を結んでいないので一緒の部屋で一夜を過ごすなんて私が認めませんわ」
「……べっ、別に……リサさんみたいに下品なことは考えてなんていません……」
リサとケイトの会話を聞いた他の男性客はジョセフに嫉妬の眼を向け、殺意を剥き出しにしていた。宿の職員はキョロキョロとケイトとジョセフ、リサペアを交互に見ながら場を和ませようと試みるも踏み込む隙間さえ与えてもらえないでいた。
「リサさんが別室に行ってくれればいいじゃないですか!婚約関係を結んでいる割にまだ男女の関係に発展していないだなんてそれは婚約者としての存在意義はあるのですか?」
「……ん、ありますわよ……ジョセフ様は16歳で私が13歳だからっていう理由でまだ男女の夜の営みをしていないだけで……」
ケイトはリサが言われたくない痛いところを吐きケイトはあわよくばジョセフと一緒の部屋で寝ることができるとチャンスを掴みつつあった。
「ジョセフさんと私は同い年ですし……私は、ジョセフさんと婚約してジョセフさんに私の純血を捧げます!」
ケイトが言葉を発した途端辺りは静寂となり物音一つ立たず周囲はジョセフを凝視していた。
その後、手続きも無事に終了しジョセフとリサ、ケイトは同じ部屋で宿泊することが決定した。ジョセフは部屋に荷物を置き「やれやれ……」と呟き暫く沈黙とした様子で一人浴室へと向かい長旅で洗い流せなかった垢を洗い落としていた。
ジョセフの長い金髪はお湯で洗い流したことでハリウッド女優のように艶のある美しい髪の毛になりそれは男性であっても身を惹かれてしまいそうになるほどであった。リサとケイトは全裸で脱衣所から飛び出しジョセフは肩までお湯に浸かりながらその光景をサングラス越しから目の当たりにし、某バトル漫画の仙人のように鼻血をブシャーッと勢いよく血飛沫を上げていた。
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