第105話 ジョセフのいないクエスト(その2)

 佐藤夏樹達はジョセフとリサ抜きでゴブリンの討伐をすることになり遠足でも行くのか?と言わんばかりにマリーとアイリスのテンションは上がっておりテレサと佐藤夏樹は無表情で、ジンジャーはどうすればいいんだ?といった感じだった。


 「それではゴブリン討伐の為に行ってきます」


 「気を付けるんだぞ姉ちゃん、最近魔物も強いのがいっぱいいるみたいだから」


 門番の人は親切にマリー達のことを気にかけていた。


 「それにしてもいつものあの色眼鏡で顔の良く分からない長髪の兄ちゃんはどうしたんだい?」


 「ジョセフ君は暫く休業してもらっているから今回のクエストには参加しないんですよ」


 マリーは門番の人にジョセフがクエストに不参加である旨を伝える。


 「そっか……まあとにかく生きて帰ってこれるのを祈っておくよ」


 門の外へと出てゴブリンの討伐するべく目的地まで向かう。


 今回のゴブリン討伐は洞窟ではなく新人冒険者の狩場としても有名な迷宮にしているので距離も街からそんなに遠くはないためなんとか日帰りで帰れそうだ。迷宮は今のところ他の冒険者が20階層まで攻略しており、上の階層はまだ誰も足を踏み入れていないそうだ。


 「マリー、あの時みたいに『エニィウェアゲート』を使えばよかったんじゃないのか?」


 「佐藤夏樹君、あれは実際に知っていたとしてもこの目で見たことがなかったら意味がないのよ」


 佐藤夏樹は『エニィウェアゲート』はどこへでも移動できる魔法だと思っていたのだがマリーが説明したことによって初めて学習したようだ。


 「マジかよ!魔法ってのも万能じゃねえんだな……」


 「そりゃそうよ、死んだ人間を生き返らせることができないように魔法にも限界はあるのよ。でも、成長することに限界はないとあたしは信じているわ。それをジョセフ君は私達に教えてくれたと思っているからね」


 「そのおかげで私もジョセフみたいに魔力をコントロールするすべを身につけられたしね。まだ未完成だけどさ……」


 マリーがそう言うとジンジャーも同じようにジョセフに出会ったことに感謝の気持ちを込めて言う。


 「いつも無茶ばっかしているけど、そのおかげで私達もジョセフから学ぶことができたし……」


 テレサは照れ隠しをしながら呟く。


 「テレサちゃんか~わいい」


 「からかうな!」


 マリーはテレサの頬を人差し指でつんと当てテレサは慌てて手でマリーの指を振り払おうとする。


 佐藤夏樹はどさくさに紛れテレサの胸を後ろから触ろうとするも「何触ろうとしているんだ!佐藤夏樹!」と肘打ちで佐藤夏樹の顔面に一発攻撃を入れる。


 「別に殴らなくたっていいだろ!」


 「お前が私にセクハラをしようとするからだ!そんなことだからお前に婚約者どころか恋人一人もいないんだよ!」


 テレサは佐藤夏樹にいきどおり正論を言う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る