第98話 退屈な一日(その1)

 ジョセフは冒険者活動を休業してからリサが傍にいるからなのかウォーミングアップすらできずに退屈な日々を過ごしていた。


 「……リサ、本当にダメなのか?」


 「ジョセフ様、冒険者になってからというものあなたが無茶をしなかった日がありますか?」


 リサは詰め寄りジト目でジョセフの眼前で問い詰める。


 「……そう言えばないな、討伐ってのは命懸けだし……」


 「だから今日は体を休めて私と二人っきりでいなければいけないのです!」


 「いやね、リサと一緒にいられるってのは嬉しいよ。でもさ、ちょっくら一人で散歩するくらいいいだろ?」


 「ダメです!」


 「俺は嫁に束縛されてる旦那かよ!」


 ジョセフは女の子にモテモテなラノベ主人公ももしかしたら描写されていないだけでジョセフのように自由を奪われ、ヒロインに監視されていたりしているのかもしれないと想像していた。


 そう考えるだけでも面倒なことなのだが、ジョセフは今まで無理をしすぎて過労で倦怠感まで感じているのだから自業自得と言われればそれまでなのだがやはり一人で自由に羽を伸ばしたい日もあるものだ。


 ジョセフはいわゆるラノベ主人公のような黒髪中肉中背のイケメンとは真逆の北欧系アメリカ人で長い金髪に碧眼に白い肌、80年代の核戦争により文明が滅んだバトル漫画のような筋肉質でどちらかというとラノベ主人公に向いていない風貌なのだ。そのうえ異世界に革ジャンにサングラス、黒いハットまで持ち込んだりしているため中二病交じりの喧嘩に明け暮れていたオタクだったのだ。


 そんな荒れた生活をしていたジョセフをも受け入れてくれるリサの包容力と優しさというのは育ちの良さではなく生粋のものであろうことは見ていて分かるものだ。


 美人は三日で飽きるというがジョセフはそうは思わなかった。アニメの世界と違い現実世界に本物の美人というものが存在しないことを考えればそんななことはありえないからだ。


 リサは華奢で二次元美少女のような可愛さを持っており、ジンジャーのようにグラマラスでテレサのようなスレンダー美女を見て飽きることなんてないためジョセフは美人は三日で飽きるという言葉はデタラメとしか思えなかった。


 二次元オタクは基本ロリコン認定されたり犯罪予備軍と呼ばれることもあるがそれは偏見というものだ。


 ジョセフ自身小学生の頃から二次元の美少女こそが女だと思っていたからそれが全てだと思い、現実の女に興味を持てなかっただけで別に悪いことでも何でもないのだ。だが、世間の人間というものは現実の女を好きになれない人をキモイと思っているのもまた事実だ。


 エロゲーだったりギャルゲー、萌えアニメと言った美少女がいっぱい出るような作品が好きな人達のことを主にキモイと思っており、そういう類のものが好きなオタクのことを世間ではキモオタと呼称しているのだ。

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