第95話 ジョセフ、休業?

 スタンフォード氏に手紙を配達し終えギルドへと戻り報酬を受け取った後、やることがなく一日が終えるのかと考えると少し退屈な気もしていたのだが事実、ジョセフの容体を考えれば魔物の討伐に行ったとしても大した戦果を挙げられないのは目に見えていた。


 『パープルサンダー』という魔法を使い始めてからというもののジョセフは疲労感と倦怠感がすぐに出てしまい、時々体が重く感じてしまうこともあるため魔力を無駄に消費せずに威力を落とさない方法を考えなければいけなかった。


 「ジョセフ様、最近なんだかいつもより疲れた顔をしていますけどやっぱり無理はしない方が……」


 リサは寂しげな顔で俺の体調を心配している。


 「リサには嘘は付けないな。このところ体が重く感じたりとブラック企業で法外の時間まで働かされて過労死寸前のサラリーマン程ではないが暫くはリハビリも兼ねて簡単なクエストでもやろうかと思っているよ」


 「ブラック企業?」


 「俺自身社会人経験ないから詳しいことは分からないがブラック企業ていうのは就業時間が法律で週48時間と規定されているのに対し時間外労働を強いるうえに休日すら碌に取らせてくれない企業のことを世間ではブラック企業と呼んでいるんだよ」


 「そうだったのですか……尚更無理してはいけませんね……」


 「そうだね……」


 「お二人さん、横から悪いんだけどジョセフ君、あなたは暫く休んでいた方がいいと思うわよ?」


 ジョセフはリサに今後は無理のないようにすることを伝えるとマリーが真面目な顔で横から休みを取るように促す。


 「おいおいマリーさんよ、ジョセフの傷とかはもう癒えているんだろ?だったらそんな顔して言わなくてもいいんじゃねえのか?」


 「佐藤夏樹君は分からないだろうけどジョセフ君が万全に戦える状態でないのは私以外にリサちゃんくらいにしか分からないのよ?」


 佐藤夏樹は「なっ!?それマジかよ!」と声をあげてしまい後ろにいたテレサとジンジャー、アイリスは何事かと駆け寄る。


 「佐藤夏樹、公共の場で大声なんか出して何があった?」


 「ジョセフの奴、魔物討伐ができないくらいかなり重症らしいんだよ!」


 「「うそお!?」」


 ジンジャーとアイリスは同時に驚き声を出す。


 「ジョセフ、大丈夫なの?」


 「日常生活には何ら問題ないよ。それに今日は少し過労のせいもあってか少し体が重く感じるくらいだから……」


 ジンジャーはジョセフの体調を心配したのか急に抱きつき豊満な胸がジョセフの顔に当たり埋まってしまった。そのうえジンジャーの腹筋は六つに割れておりかなりバキバキであったこともあり、柔らかいものと硬いものをジョセフは同時に味わうことになった。


 「ジっ、ジンジャー……むっ、胸が顔に当たっているのだが……」


 「あっ!」


 ジョセフがそれを指摘するとジンジャーはすぐさまジョセフから離れ顔を赤らめる。


 「心配してくれるのは嬉しいのだがその急に抱きつくのは辞めてくれないか?」


 「どうして?私だって君の婚約者よ?抱きつくくらいいいでしょ?」


 「だからって急に抱きつかれれば俺と同じ反応をラノベ主人公もするはずだ。それにリサだっているんだぞ……」


 ジョセフは無垢で妖艶なリサの健全なる小柄で華奢な少女には教育上刺激的すぎると思ったからなのかジョセフはリサの方を指さしながらジンジャーに注意する。


 「……私だってまだ成長期ですもの……数年後にはジンジャーさんのように大きくなるはずです……」


 リサは頬をリスやハムスターのように膨らませジト目でジョセフのことを睨みつけていた。


 「いや、別に巨乳になってくれとは言っていないんだがな……」


 「でも好きなんでしょ?」


 「男なら誰でも大きい胸を触ってみたいと思うものだよ」


 ジョセフにとってリサはラノベの妹キャラポジのロリ顔少女に胸の大きさは求めていないため特段、リサに巨乳になってほしいとは思っていないのだけれどリサは胸の大きさにコンプレックスを抱いていたみたいだ。


 「……ジョセフ様のエッチ!」


 リサは恥ずかしげな顔でジョセフに言った。


 「そんなことより今後のクエストの話をしなくてはいけないんじゃないのか?ジョセフが休養を取るとしての!」


 テレサは一向に話が進まないことに苛立ちを感じていたのかジョセフがいない間どうするのかをマリーに尋ねる。


 「そうね、そもそもが討伐系のクエストやるにしてもまずテレサちゃんくらいしか前線で戦闘できるメンバーがいないことを考えたらジンジャーちゃんとアイリスちゃんはあたしと一緒に魔法がある程度うまく使えるようにしておく必要があるわね。佐藤夏樹君はテレサちゃんにでも戦闘訓練でも受けて強くなることが課題で」


 「私は一向に構わないけど……」


 テレサは声を詰まらせながらもマリーの意見に賛成する。


 「いや、俺の意見も聞いてくれないか?」


 「そもそも君が一番活躍していないんだからジョセフの代役としても強くならなきゃダメでしょ。それに強くなればモテ期が来るわよ?」


 ジンジャーは佐藤夏樹に念を押しやる気を出させようとしていた。


 「マリーに魔法の修行を付けてもらえるのかあ……」


 「ちゃんと無理のない練習メニューを考えておくからそんなに心配しないでいいわよ。アイリスちゃん」


 アイリスは修行に関して不安に思っており、マリーはニコッとアイリスに笑みを見せ説得をする。


 「リサはどうするんだよ?」


 「リサちゃんはジョセフ君と一緒にいてもらうわ」


 佐藤夏樹がリサについてマリーに尋ねるがジョセフと一緒にお留守番をするみたいだ。


 「マリー、リサもせめて修行させてもいいんじゃないのか?休むのは俺一人で……」


 「とか言いながらジョセフ君のことだからまた無理して体壊しそうな気がするからリサちゃんにはしっかり監視してもらわなきゃダメよ!」


 「そうです、ジョセフ様!」


 マリーとリサはジョセフ一人で休ませるとこっそりと何かするのでは思ったからなのかかなり意気投合しているようだ。ジョセフはリハビリと称してゴブリンやスライムといった低レベルの魔物を討伐でもしようかとも考えていたみたいだがリサはともかくマリーには図星だったみたいだ。


 「ジョセフ~、私もっと強くなるからリサと一緒に休養を取ってね」


 アイリスは笑みを浮かべ、ジョセフに休むように促す。ジョセフはアイリスの無垢で可愛らしい笑顔で上目遣いで言われてしまい、それを拒否することができなかった。


 リサもマリー動揺回復魔法は使えるため何ら問題はなかった。


 それでもジョセフは色んな意味で束縛された感じがして休めないのではと疑問に思うがジョセフは「これが恋人ができるって意味でもあるんだろうな……俺彼女とかできたことなかったし……」と呟き始める。


 ジョセフは彼女を通り越してリサといきなり婚約を異世界でしている時点で完全にオタクの妄想の産物を体現していることを考えたらオタク達からネットで炎上しそうだと思っていた。異世界でインターネットなどのSNSが存在しないため炎上も何もないのだけれど日本に帰って侑の小説のネタにされたら確実に炎上回避不可である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る