第83話 マリーと誠
『エニィウェアゲート』で誠のもとへと向かったマリーは誠にドラゴンの爪と牙をぶっきらぼうに投げ渡した。
「本当に僕なしでドラゴンを討伐したんだね……」
誠はまさか本当に討伐するとは思っていなかったようでかなり驚愕していた。
「ええ、おかげでジョセフ君が無茶しすぎて瀕死になったからすぐに魔法で回復してリサちゃんと一緒に帰ってもらったわよ」
「それは済まないことをしてしまったね……」
「あなたがドラゴン討伐なんて依頼をしなければジョセフ君が死にかけることもなかったのよ!その責任はどうするつもりだったの?」
マリーは怒号をあげ誠に質問攻めを始める。誠は「ジョセフなら無事に討伐してくれると信じていたから……」と言うだけで反省しているようには見えない。
誠自身に悪気がないのは傍から見ても分かるがそれで命を落とすとなればただで済むわけがない。マリーは同じ冒険者仲間として仲間を心配することは当たり前だったのだ。
マリーはすぐさま『エニィウェアゲート』を開きワトソン王国へと戻り、佐藤夏樹は誠に「べーっだ!」と舌を出す。テレサは「みっともないぞ!佐藤夏樹!」とツッコミを入れジンジャーはテレサを宥めアイリスは唖然としている。
「誠さん、マリーさんに嫌われてしまいましたね」
リンは誠に一言そう言う。誠の髪の毛とロングコートが風でなびき考え事をしていた。
(僕はあのマリーって人が何故あそこまで僕に敵意剥き出しなのか理解できないけどもしも僕がマリーの言うことを無視して同行していればジョセフを瀕死に追い込む真似はしていなかったのになあ……でも今はそんなことを考えている場合ではないかな。またジョセフと共に行動もできるだろうし)誠は相変わらず危険な目に合わせていることに自覚がなく何故マリーがあんなに起こっているのかが理解できずにいた。
今の誠は再びまた一緒に行動できることを信じフッと笑う。リン、トキ、レイラ、マギーは何故誠が笑っているのか理解できず茫然としており「まあ誠さんのことだし……」と質問することはなかった。
「それにしてもよう、何でマリーはあのハーレム野郎にあんな殺意剥き出しなんだ?」
「私もそれ気になるな」
「ジョセフが瀕死になる前からそんなんだったけど何かあったの?」
佐藤夏樹がマリーに尋ねテレサ、ジンジャーも続けて質問をする。
「…………別に何もないわよ?」
マリーはいつものようにひょうきんな顔でニコッとしてそう言う。テレサ達はそれでもやっぱり気になるみたいでしつこく尋ねるのだがマリーは一向に答えようとしない。
それどころかマリーは話題を逸らそうとドラゴン討伐したことをギルドに報告すべしとすぐさまギルドの方へと佐藤夏樹達を強引に連れて向かう。
ギルド前へと『エニィウェアゲート』を使い到着しギルドへと足を踏み入れる。ギルドの受付にはいつものようにお姉さんがいてマリーはドラゴンを討伐した戦利品としてドラゴンの牙と爪を受付のお姉さんに手渡しをする。
明らかに誠の時と態度が違い佐藤夏樹達は頭にクエスチョンマークを浮かばせる。
佐藤夏樹は(女ってやっぱ怖えなあ……)と内心改めて実感する。国民的アイドルが表向き清楚でとても愛嬌のある優しい女のことだと思ったら蓋を開けると中身は下品で男好きのビッチで性悪女であることを知り幻滅するのと同じだ。佐藤夏樹は日本にいた頃を思い出し頭を掻きむしり始める。
理想としていた異世界でのウハウハハーレムを誠という転生者が体現し、チート能力を神様から授かっていることを考えれば情緒不安定になりかねない。
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