第84話 リサ・ワトソン

 ワトソン王国にて誕生したリサは盛大に祝福され愛娘として父親でもあるロバート・ワトソン王はリサのことをかなり溺愛していた。


 リサ・ワトソンは幼少期の頃から相手の心を読んだりすることができ王様に仕える貴族達からはその能力を危険視されたり気持ち悪がられていた。シャーロックはそんな姉であるリサの能力を羨ましがっていたのだがリサ本人は自分の能力のせいで不幸な気持ちになる自分が嫌いだった。


 「リサよ、お前の心を読める能力はもう誰にも言わない方がいいかもしれん……国の為以前にお前自身の為にも」


 ロバートはリサの身を案じるあまり能力のことを口外しないように忠告をする。


 「分かりました。お父様……」


 リサは自分の能力がワトソン王国に災いをもたらす可能性があることを示唆されていることを実感し能力のことを誰にもしゃべることは無くなったのだがそれでもリサの能力を知っている貴族達にとってはリサという存在のせいで王位を略奪することが困難でもあった。リサは心が読めるが故にそんな人間の欲深さと淀んだ空気に嫌気がさし心を閉ざすようになる。


 他国からリサに婚約を求めにやってくるものもいたが殆どがワトソン王国を支配下にしたりと下心が丸出しなためリサは即座に拒否をする。


 ロバートもそんなリサを心配してはいたのだが本心としては(大事な娘が本気で添い遂げたいと思える相手と結婚させたい!それが例え庶民であっても……)とリサの意思を尊重しているほどの親バカである。


 「姉上はどうして結婚を拒否し続けるのですか?」


 シャーロックは幼いながらに疑問に思ったのかリサに尋ねる。


 「シャーロック、私は本当に心から愛し合える人と結婚したいんです。それに私に結婚を求めてくる人はみんな自分本位に考えている人しかいないんですもの」


 リサは本音をさらけ出しシャーロックはリサの言葉に感激しうんうんと頷く。


 「愛ですか?」


 「はい、愛です!」


 「しかし姉上、そんな夢物語みたいな理想を抱いていてはワトソン王国は確実に他国に侵略されるかもしれないんですよ!僕も姉上のように外の世界を知らない世間知らずな王子という立場ですが本当にこの国と自分自身のことをお思いであるなら……」


 シャーロックは途中から声が詰まり続きを言おうにも言えなかった。シャーロックは(自分は姉上と違い心が読んだりできない……)とコンプレックスに感じシャーロックが内心思っていることを読み取りリサはシャーロックを責めることなく強く抱きしめる。


 シャーロックは一体何が起きているのか全く理解していないようで茫然としている。


 数日が経ち、シャーロックは立派な国王になるべくして他国の学校へと留学をする。いわゆる寄宿学校のようなもので卒業するまではワトソン王国に帰国することはないのだとか、リサはシャーロックの志を立派に思い(自分もショーロックのように覚悟を決めなくては……)と決心しようと馬車の中で考え事をする。


 馬車を走らせていた衛兵がゴブリンの奇襲により重傷を負いリサを必死に護衛するのだがワトソン王国はロバートが王位に就任してから大幅な戦争がなかった為殆どが実戦経験なしの模擬戦しかしたことのない者達ばかりだ。


 そんな時、黒い帽子に黒いサングラス、黒い革ジャンに青いジーンズを着用した長い金髪を靡かせていた男がリサの眼前に現れたのだ。見ず知らずのものの為に落ちている剣で10体のゴブリンに立ち向かい、毒の塗られた剣で右手の甲を軽く斬られかすり傷ができていることにも気づかない程にまで無我夢中にゴブリンを討伐していた。


 リサはその男の姿を見て、(この人となら心から愛し合える気がしますわ!)と内心思っていた。その思いは的中?しており、リサは見ず知らずの男を心から愛することにしたのだ。


 ゴブリンを全て討伐し終えたその男はは傷口から毒が蔓延したからなのか意識が朦朧とし地面へと倒れる。すぐさま治療しなきゃと宮廷に急速で戻り宮廷魔法師の迅速な対応のおかげで後遺症と命の別状はなく、あと5分ほど遅れていたなら右手も切断しなければいけない状態だったとのことだとのことだ。


 その男の帽子とサングラスを外しベッドに寝かせたリサは付きっ切りで看病をする。メイドや執事に「代わりましょうか?」と休憩を促されるも「この人は命の恩人なんです!」とそれを拒否し、リサはその男の看病を続ける。


 目が覚めた後、男の名前が判明し男はジョセフ・ジョーンズとリサに名乗った。リサはジョセフを王室まで誘導し、国王でもありリサの父親でもあるロバートにジョセフと婚約することを報告をする。ロバートとその妻であるリーナは「娘が選んだ相手なら」と祝福した。リサが心から結婚したいと思える相手に出会えたことを反対などするはずもない。


 リサは他人の心が読めるためロバートとリーナはジョセフが怪しい人間ではないと即座に信じることができたのだ。ジョセフ自身(そんなラノベやアニメみたいなご都合主義展開が訪れるなんてありえない……)と思っていたみたいで断ろうとするのだが折角異世界に転移させられたんだからと開き直り断れずにいた。


 ジョセフも(ロリコン認定されるのは嫌だからいきなり婚約はちょっと……)と思ってはいるみたいだがリサのように心から自分のことを愛してくれる人がいることを嬉しく感じ、ジョセフとリサは相思相愛の仲に発展していた。

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