第80話 自分達の力で……(その1)

 魔人族を討伐した後洞窟を抜けドラゴンがいそうな場所を誠から聞き出そうとしたのだが自分のパーティメンバーとイチャイチャしているためタイミングがずれてしまう。


 「誠君、ドラゴンなんだけどどこにいるのかしら?」


 「えっ?」


 マリーは突然、誠に真顔で尋ねる。今まで気にしていなかったのだがマリーの様子が何だかいつもよりもおっかないようで何かにイライラしているのかな程度にしか思っていなかったが誠に対する態度は明らかにおかしい。


 「ゴブリンのような低レベルの魔物をジョセフ君に討伐させたりさっきの魔人族だってわざと討伐させているんじゃないか?と疑いたくなる程に偶然が重なっているし」


 「本当に僕はジョセフにドラゴンを討伐の依頼をしたくているんだけどなあ……」


 誠は何かを隠しているかのように声を震わせる。マリーがここまで怒っているのは初めてだし普段あんなにサバサバしていてひょうきんなのにここまで不穏にいるのはおかしい。


 「あたしは心を読んだりとかはできないけどあなたの策略はなんとなく分かる気がするのよ。ジョセフ君の技量を試して魔王を討伐させたいんでしょう?ドラゴン討伐を口実に魔人族と遭遇させたりと」


 「マリーさんの言っていることも一理あるけど魔人族がまさかあの洞窟を拠点にしていたなんてのは想定外だったんだ。ジョセフは無報酬でゴブリンを討伐したっていうからどれほどの技量なのか実際知りたかったし……」


 「だったら早くドラゴンのいる場所教えなさいよ。そのドラゴンのビジョンとかは見ているんでしょ?」


 マリーは誠にしつこく質問攻めを始め、誠は肩を竦めながら溜め息を吐く。


 「分かったよ……マリーさん、僕の手に触れてくれないかな?ドラゴンのビジョンを見せればマリーさんも詮索することもできるだろうし」


 誠は右手を出しマリーは躊躇いもなく手に触れる。


 「『メモリースキャン』!」


 マリーは無属性魔法『メモリースキャン』を発動し誠の記憶を読み取りドラゴンのビジョンを見る。そのドラゴンは黒く大きさはおおよそコンビニと同程度の大きさで漆黒の鱗に覆われとても強そうな外見をしていた。


 「マリー、ドラゴンはどんな見た目をしているのか分かったのか?」


 テレサはマリーに尋ねマリーはうんと頷き無属性魔法『スヌーピング』を発動し詮索を開始した。


 「ドラゴンはどうやらこの辺にはいないみたいよ。ホームズ王国の領土にいるのは間違いないみたいだけどね。『エニィウェアゲート』!」


 マリーは『エニィウェアゲート』を発動しすぐさまドラゴンの場所へと向かうためにジョセフ達も一緒にマリーのもとへと駆け付ける。


 「誠君、あなたはここで待っていて。ドラゴンはあたし達だけで討伐するから」


 マリーは冷徹な目で誠に一言言い残し、ジョセフ達は『エニィウェアゲート』の中に入り込みマリーが殿になり入ると同時に空間は元に戻り誠は冷や汗をかきながら唖然としていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る