第79話 チートすぎるだろ!(その9)
魔人族は右掌から再度魔法を発動するために出し呪文を詠唱し始める。魔法陣がラノベやアニメみたいに手から飛び出しとても綺麗だ。
「邪神よ、魔王よ我に闇の力を授けてくれたまえ!『ダークスピア』!」
漆黒の矢が瞬時に飛び出し俺の方へと軌道に乗る。間一髪でよけることができたのだがもし少しでもかすれば確実にジョセフの体が吹き飛んでいただろう。
「これが魔人族の力……ゴンザとかい奴より手ごわそうだな……」
「ゴンザ?ああ、あの泣き虫ゴンザのことか。あいつは確か人間に殺されたと聞いたがお前だったのか」
あんなに人間相手に粋がっていながら泣き虫呼ばわりとは魔人族の世界はかなり基準が高すぎるようだ。ジョセフは魔人族を二人も倒したからと浮足立っていたのだと思い、自惚れが度を過ぎていたことを内心反省していた。
「ここは逃げるか……」
ジョセフは魔人族から逃げることにした。リサは心が読めるためジョセフが逃げる理由を瞬時に察することができるからいいもののテレサ達から見れば敵前逃亡したようにしか見えないだろう。
だがそれでよかったのだ。
魔人族を油断させること自体がジョセフの作戦なのだから。興奮状態でいるあの魔人族は現在まともな判断力を持っていない。それを利用することでマリーに討伐を任せる方が無難であろう。
「マリーさん……ジョセフ様が心の中で……」
リサはジョセフが心の中で思っていたことを小声で耳元で話していた。リサの話しを聞いたマリーはうんうんと頷きジョセフが思っていたことを実行しようと行動に移す。
「『サンダーアロー』!」
誠の右手から『サンダーアロー』が放出され魔人族の右腕をかする。魔力量は多くても魔力コントロールできないため火力は低くゴブリンやスライムなどの低レベルの魔物相手出ないと無双できないのだ。
「慈悲深き地母神よ、我らに聖なる光を与えたまえ『ホーリーライトビーム』!」
マリーの杖からエネルギー波のようなものが集中し『ホーリーライトビーム』が魔人族の身体を貫く。ジョセフの作戦自体は成功と言ってもいいのだが肝心な魔王が復活したのかどうかジョセフは確認することを忘れていた。
「この……卑怯者共っ、が……」
魔人族は下半身がマリーの魔法により失い出血多量で残り僅かの命と言えよう。ジョセフは魔人族の方へとゆっくりと向かい見下ろすような目で魔人族に尋ねる。
「おい、死ぬ前に聞きたいことがある。ワトソン王国を支配しようとした魔王は復活したのか?」
「ふっ……復活したさ……あのお方はっ、あの程度の封印なら自力で……」
魔人族は吐血しながらも丁寧にジョセフ達に説明をしていた。どうせ死ぬのだ。言っても罰は当たらないとでも思ったのだろう。
「そうか、ならばその魔王は別世界から来た存在である説があるみたいだがどうなんだ?」
「あの、お方は……確かに貴様の言うように別世界から来たものだ。そして貴様達が束になっても勝てはしない……そしてワトソン王国を……いや、この世界を支配するだろう……」
魔人族は最後の力を振り絞り「魔人族に栄光あれ!」と叫び力尽きる。
ドラゴン討伐が目的なのにこんなにも魔力を消費してはドラゴンを討伐する前にジョセフ自身どうかなりそうでいた。
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