第60話 佐藤夏樹の過去(その1)
佐藤夏樹は日本に生まれ、両親からしっかりと愛情を注がれ健やかに年相応の子供として成長していた。父親は警察官で街のヒーロー的存在でいつも友達に自慢できちゃう立派な父親で母親は専業主婦。
小学校の頃は全教科満点で運動神経もそれなりにあり運動会のかけっこはいつも一位でクラスメイトからも慕われており人気者であった。だが高学年に入る辺りから佐藤夏樹よりも優れたクラスメイトの現われにより自分が今まで築き上げた努力の結晶は崩れ落ち、それと同時に自信喪失により成績は低下していた。
運動会では必ず一位を取っていたのが二位、三位と順位が落ち始め誰からも注目されず友達と思っていたクラスメイト達からも遊びに誘われることもなく孤独に生きていた。
「佐藤はやっぱり凄いよな」
頭の中にはその言葉が過り、吐き気すら感じるようになり頭を抱えながら自分の部屋で蹲り涙と声を殺しながら必死になっていた。
テストの答案用紙が返ってくる日が訪れ、教師は児童の名を呼び答案用紙を返却し、「今回はよく頑張りましたね、この調子で頑張りましょう」と児童を褒めており次は自分の番だと思い必死に頑張ってきたんだからみんなにと思いを寄せながら名前を呼ばれるのを待っていた。
「佐藤夏樹さん」
佐藤夏樹は勢いよく「はい!」と返事をし背筋をピンと立て教師の下へと向かう。(これでもう一度みんな俺に注目してくれるぞ。今回は徹夜したからなと)やり切った思いで一歩一歩思いを込めながら歩いていた。
「佐藤さん、今回の点数なんだけどどうしたの?珍しく20点だなんてちゃんと勉強はしているの?」
「えっ?」
佐藤夏樹は一体自分に何が起きているのか理解できずにただ茫然と立っているだけで教師の声が耳に入っていないようだ。
答案用紙を受け取り、罰点だらけの答案を確認し(そんなはずはない!)と心の中で否定しながら徹夜したせいでしっかり睡眠がとれずに本領発揮ができなかっただけだと自分に言い聞かせる。
「低学年辺りまでは成績がよくて他の先生や児童から評判がよかったのに…」
教師は佐藤夏樹を憐れむような表情で見つめ、期待を裏切られたとでも思っているようですぐさま他の児童の名前を呼ぶ。
次こそはいい点を取るんだと死に物狂いになるも次のテストで結果は覆ることはなく教師にこっぴどく怒られた。
「佐藤さん、あなたどうしてこんな簡単な問題で10点なの?他の子たちはみんな平均80点台出してるのに何であなただけ!」
教師は佐藤夏樹に罵声を浴びせながら他の児童たちと比較し、ダメ人間の烙印を押されることになった。それからというもの佐藤夏樹は点数が低かったことを他の児童たちにもネタにされ、休み時間ドッジボールに加わろうとするも「お前が混ざったらみんなバカになっちまうよ」と敬遠しゴミでも見るような見下した表情で突き放す。
「クソッたれ!どいつもこいつも俺をバカにしやがって!勝手に期待して勝手にガッカリしてお前らは俺の何を知っているんだよ!」
佐藤夏樹は脳内に浮かぶ「佐藤はやっぱり凄いよ」という言葉に対し涙を流し唇を強く噛みしめた後口をへの字にし、蹲り床をどんどんと叩きながら泣いていた。小学生でありながらこんなにも苦しい思いをして周囲の期待に応えようと頑張っているのに結果を出せず罵声を浴びせられ仲間外しにされ、クラスメイトから
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