第52話 ジョセフとリサの散歩(その3)

 ラーメンの話しで盛り上がりラーメン以外にも音楽、テレビ、スマホなどの話しもしているとリサは興味津々に目を煌びやかに輝かせながら顔をジョセフの方へと突き出していた。


 「おまたせしました。ハムサンドと紅茶です」


 会話をしていると店員が横から料理を持ってきているのが分かり伝票と一緒にテーブルに置き始める。置き終えた後店員は「ごゆっくりどうぞ」と笑顔で厨房へと戻っていった。


 そのままジョセフはハムサンドに勢いよく噛みつき口の中で咀嚼しそのまま飲み込む。味に関しては予想通りこしょうも塩気も少なくお世辞にも調味料をたくさん使っている地球人であるジョセフからしたらやっぱりしっくりこなかった。口直しに紅茶のカップを取り一口飲んでみるがこれまた砂糖がないからなのかただのお茶の味しかしなかった。


 どのみちこの世界で生きていくのなら好き嫌いは言ってられないし残さずに食べるがリサはとても美味しく感じたのか口を手で押さえながら驚きを隠せずにいた。


 「このとても美味しいです!」


 「…それはよかったな」


 ジョセフは全く美味しく感じることができずにただ味のない紅茶をゆっくりとズズズっと音をたてながら飲み、リサはもぐもぐと味わいながら食べていた。


 「ジョセフ様、音をたてて食べるなんて行儀が悪いですよ!」


 リサは音が気になったからなのかジョセフの方を見て指摘をする。当然といえば当然なのだが上品な育ち方をしたリサは王家の人間であるため食事のマナーなどしっかりと教育を受けているだろうからジョセフは何も言い返さずにリサの言う通り音をたてながら紅茶を飲むのを辞めた。


 「いいですか?ちゃんとデリカシーをもって食事をしないと他の方に失礼になるんですからね」


 早速リサはジョセフに延々と説教を始め、ジョセフはうんうんと頷くだけ頷いてあとは野となれ山となれ状態で聞き流していた。


 「この紅茶中々美味しいですよジョセフ様。確かに音をたてたくなる気持ちも分からないこともありませんがそれでもダメです!」


 リサは頬っぺたを膨らませ口をへの字にしながら言葉を発した。


 そういう上品なところはジョセフは好きなのだがここまで生真面目すぎるといわゆるジョセフは自己流の食べ方ができなくて退屈に感じなくもないのだけれど異世界での食べ方ってのもあるしそれも慣れるしかなかった。リサのようにラノベの美少女みたいなお上品な女の子なんて日本にはまずいないため日本にいた時よりジョセフはかなり幸せな方なのかもしれない。


 「ふっ」


 「もう、何で笑うんですか?」


 「リサのそういうところが可愛くてな、つい笑ってしまったんだよ」


 「あんまりからかわないでください!」


 リサは顔を赤くし必死に向きになり頭を掻きむしりながら天井を見上げていた。

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