第51話 ジョセフとリサの散歩(その2)

 「いらっしゃいませ~」


 ひとまずカフェらしき建物があったため入店すると貴族が経営しているのか?と思ってしまう程に美しいシャンデリアが天井につるされており、快晴な天気と合わさって中はとても明るかった。


 店員にテーブル席まで誘導され、ジョセフとリサは椅子に座り、メニュー表を開きるんるんとしたリサを見て俺も何か頼まなきゃと思いながらメニュー表のページをペラペラとめくりながら何を食べようか迷っていた。どのみちジョセフの舌は異世界飯に慣れていないためどれを選んでも一緒なわけではあるがリサといる時くらいはカッコよく、見た目がきれいなものでも食べておきたいと思っていた。


 「あの、すみませ~ん」


 リサが手を大きく上げ店員を呼ぶ。


 「ご注文はお決まりですか?」


 「私はこのハムサンドと紅茶をお願いします」


 「そちらのお客様はお決まりですか?」


 「それなら俺もハムサンドと紅茶を貰おうかな」


 「かしこまりました」


 店員は注文をメモした後、せっせと厨房の方へと向かい料理を作り始めた。まだこの時間帯だから客が少ないからなのか店員は余裕をもっているのかかなりきらびやかとした表情をしていた。


 異世界に調味料が沢山あるならばそれなりに好みの味を楽しめるのだが中世ヨーロッパレベルの文明であるため調味料自体が高価で種類も少ない。


 「ジョセフ様も私と同じメニューが食べたかったんですか?」


 リサが上目遣いでジョセフの方を見つめながら尋ねてきた。


 「一応そういうことにしておくがこの世界のハムサンドがどんなものか気になってね、俺の故郷では普段家でラーメンばっかり食べていたから」


 「とは一体何ですか?」


 リサは当然ながらラーメンという単語に反応し、そのラーメンというものが何なのか分からないでいる。日本では当たり前のように愛されている食べ物であるがやはり異世界ではラーメンは存在しないのだとジョセフは再認識する。


 「ラーメンってのは世界で一番満腹感の出る食べ物でな、確か小麦粉と卵で麺を作り豚骨スープだったり鶏がら、しょうゆ、味噌スープで作る料理なんだ。麺というのは細い線のようなものでこれがもちもちとしてのど越しのあってとても美味しいんだよ」


 ぽか~んと状況を判断できずに頭から蒸気が湧き出てきたリサはただ茫然とジョセフの話を聞いていた。それでもなおジョセフの好みの味を知ろうと努力している姿勢はとても可愛らしくてジョセフは頭を撫でたくなっていた。


 「そのラーメンという食べ物、いつか食べてみたいです」


 ラーメンの話しに食いつき、いつになるか分からないが必ず食べてみたいと思ったリサはよだれがこぼれるのを堪えながらも、お姫様らしからぬ行動を慎むように我に返っていた。

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