第49話 シャーロック王子の帰還(その6)

 シャーロックは長旅の疲れからなのかベッドで熟睡をしていた。


 自分が何故ワトソン王国に帰国したのかもすっかり忘れていたようでかなり気が抜けていたのだろう。


 そんなシャーロックは家族にとても愛されていた。リサのように相手の心を読んだりする能力は持っていなかったがとても頭がよく武器を持たない平和な世界を築き上げるという野望があったのだ。だがシャーロックは今の現状を考えれば武器を持たずに生きていくことは不可能だと思い始めどのようにすれば人間は、亜人族や魔人族を含めた生物は争いを辞めるのか答えを見つけるために遠出の学校に通うことを決めたのだが誰もシャーロックの意見などに耳を貸す者はいなかった。


 ワトソン王国は現状、他国との戦争はないものの帝国や魔人族にいつ襲撃されるのか分からない状況で王様も望まぬ戦争を準備する日がくるのではないのか警戒をしていたがシャーロックはそれでも戦わずにしてどうにかなる方法を探り続けていたのだ。ワトソン王国は他国と比較してもかなり治安は良い方でこれといって国王の政治について悪い噂を聞いたことがないほどに国は潤っていたのだ。


 シャーロックはそんな偉大な父の背中を見ながら育ち、リサという純粋で心優しい姉と母がいたからこそ平和を愛する少年に成長していったのだ。


 「いかんいかん、僕は一体どのくらい眠り込んでいたんだ?父上の容体が悪いと聞いて帰って来たのに父上に会わずに寝てしまうとは…」


 ハッと勢いよく起き上がったシャーロックは何故自分がワトソン王国に帰国したのかを思い出しすぐ王様のもとへと向かおうとしていた。


 シャーロックは部屋の扉に手をかけ、深呼吸をしながらぶつぶつと独り言を言い出した。


 「大丈夫だ、まだ昼にはなっていないから大丈夫だ…」


 手にかけてた扉を開け、すぐさま王様の王室へとシャーロックは駆け足で走り出した。


 「ん~ん、よく寝たな。やっぱり二度寝は気持ちがいい」


 ジョセフは二度寝を気持ちよくしていたからなのか疲れはだいぶ取れ、体も入れ替わったかのように軽くなっていた。


 ジョセフの隣にはリサがおり、そのリサもやっとお目覚めのようだった。


 「ふあ~、ん?ジョセフ様…おはようございます」


 リサは眠そうな目をこすりながら起き上がった。


 「おはよう」


 ジョセフはリサに一言挨拶を済ませそのまま部屋を出ようとした。


 「そういえばシャーロックというリサの弟が帰ってきてたぞ」


 「えっ、シャーロックが帰って来たんですか?」


 リサはとても驚いた表情で声をあげた。


 「随分と疲れていたようだったから彼を部屋まで送って寝かせたよ」


 「そうですか…シャーロックはお父様が元気になられたことをまだ知らないということですね」


 「多分そういうことになるね。今日一日はゆっくり二人でいないか?」


 「えっ?」


 いきなりジョセフがそう言ったからなのかリサは慌てた様子で顔を赤くしだした。

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