第42話 ジョセフの中学時代(その4)
学校というものは小学校の頃はそれなりに高い点数も取れてそれなりに楽しく過ごせたんだけど中学になってから突然俺は異世界にでも飛ばされたのか?と疑問に思ってしまう程何もかもが変わってしまったのだ。
周りの大人から見れば何の変哲もないことなのだろうが子供という立場で世の中の何たるかを知らない十代からすれば別世界そのものだ。
さっき異世界に飛ばされたのか?と疑問に思っていた中学なり立ての頃は異世界ファンタジーなんて言葉をジョセフは知らずただ別世界に強制連行されたくらいに思っていたのだろうな。中学というのは特に何が違うのかといえば教師が全教科それぞれ違う人が授業を教える形なのだけどまあそれはいい。ジョセフが言いたいのは何故中学に入ってから小学校の頃のように点数が取れなくなるのか?その理由を知りたかったのだ。
小学校の頃仲の良かったと思った友達からは仲間外しにされ、からかわれたり、どんなに勉強をしても成績は下がる一方でこんな状態でスクールライフを楽しめるわけがなかった。小学校の頃のようにエミリーや仁と婚約までしていたルーシーといった超絶美少女がいるわけでもないこの日本にいても意味がない気がしていたのだ。
仁はそれが分かっていないためジョセフに学校へ来るように説得しているのかと思っていたのだがそうではなかった。仁はジョセフが必要でジョセフのいない学校なんて監獄と変わらないと思う程にまで追い詰められていることに気付くことができなかった。
そのことにジョセフはなんて自己中心的で最低な奴なんだと
「仁、学校に行く条件が一つだけある…」
「条件って?」
「俺と一緒にここでバンドの練習をすることだ!」
「それはいいけど俺ギターなんて持ってないぞ」
「心配するな、ないなら俺のを貸してやる」
ジョセフは仁にもう一本置いていたギターを渡し、ストラップをピンにつけ肩にかけるように促した。
「ギターって重いんだな…」
「これはギブソンレスポールだから重量はストラトより確かに重いが世界一カッコいいギターだ」
仁はポカーンとした表情で何がなんだか分からないでいた。
「丈、いきなり初心者にレスポールとかストラトなんて単語出しても分かるわけないだろ!」
「別にいいだろジョージ、丈は本気でこいつにギターを教えたいて思っているんだから悪くはないだろ」
ジョージはギターとかロックを知らない仁にギター用語を連発しているジョセフに注意をし、ジョニーがフォローを入れてくれた。
「こいつに教えるのはいいけどよ、お前練習はどうするんだ?」
「土日にでもすればいいだろ」
「ああそっか、土日があったね」
ジョニーはジョセフが仁にギターを教えることでバンドの音合わせする時間が少なくなることを危惧していたみたいだが土日に集中してやればいいことに気付き納得した。
ジョセフは早速仁にギターを教えることにしたのだがいきなり挫折されても困るのでメジャー、マイナー、バレーコードのようなチマチマとしたことではなくパワーコードから教えることにした。
「まず初心者が最初にぶつかる壁はコードだ」
「コード?」
「簡単に言えばドレミファだよ、それをギターではABCDEFGと分けているんだ」
「なんかめんどくさそうだな…」
「めんどくさいからこそ簡単に覚えられる方法から始めるんだよ」
そう言いながらジョセフは仁にパワーコードの押さえ方をまず仁の手に慣れさせるために仁の指を6本ある弦を押さえさせることにした。当然ギターなんて触ったことのない仁からしたら拷問に感じたのかもしれない、だがここでそれを乗り越えなければギターを弾くなんてことはできないからだ。
「チョットいてえよ…」
仁は歯を食いしばり、目をしかめながら涙をこらえていた。
「ちょっと6弦と5弦だけを鳴らしてみろ」
仁は言われるがままに右手に持ったピックで2本の弦を鳴らした。
「これがFコードだ」
「Fコード?」
「パワーコードのFでなければ初心者はすぐ挫折しギターを辞めることになっていただろう」
仁は「そんな難しいコードをいきなり教えるなよ!」と言いたそうな表情をしていたが一通りF以外のパワーコードを教えると一気に顔色が変わっていった。
「これがギターってやつか…思ってたより簡単なんだな」
「そうだろ?みんなパワーコードの存在さえ知っていれば挫折しないで済むんだけどな」
「だけど6弦と5弦で鳴らすのはできるけど5弦と4弦で鳴らすのは難しいな」
「焦ることはないよ、こういうのはゆっくりと覚えていけばいい」
ジョセフは仁にそう言いながら少しずつ上達している姿に驚いていた。
「おい丈、お前の連れてきた仁って奴パワーコードの鳴らし方とか始めてから5分くらいでプロ級に上手くなってるけどホントにあいつ初心者なのか?」
「あの手つきは間違いなくギターを触ったことない動きだよ」
ジョニーは仁の上達速度に驚いてしまったのかさっきまでと違い態度が緩和していた。仁の右手を見てみるとピックは親指と爪に当たるほど深く持っており、ピッキングハーモニクス気味に鳴らしていたのだ。ジョニーの奴がプロ級に上手いといったのはあながち間違っていなかった。
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