第38話 ワトソン王国略奪計画(その6)

 「ジョセフ達は何やっているんだ?」


 「私に分からないけどもしかしたら大事な話でもしているんじゃないかな?」


 「もしそうだったら俺達がここでのんびりお茶飲んでていいのか?」


 「大丈夫だと思うよ」


 「アイリス、お前って本当に適当だなぁ…」


 佐藤夏樹はアイリスは他愛もない会話をしながらのんびりとお茶を飲んでいた。


 「それにしてもこのお茶、最初は味がないのかと思ったけど飲み続けると段々味がしてくるようになったぞ!?」


 「もしかしてお茶飲んだことないの?」


 「俺のいた国ではお茶はよく飲んでたけど違う国の飲み物はまだ味が慣れなくてよ…」


 異世界でのお茶の味に慣れていなかった佐藤夏樹は飲み慣れることによって美味しく感じるようになっていたのだ。


 佐藤夏樹が最初に異世界に来てから日本と食べ物の味が全く違い、口に合わなかったことから思っていた異世界生活と違うと唖然としている様子であったのだが今ではとても美味しそうに異世界の食文化を楽しんでいた。


 「早くジョセフ達と一緒にゆっくりしたいのにまだ戻ってこないのかな~?」


 アイリスは少し不安になりながらも戻ってくるのを待っていた。


 「お待たせ!」


 「ジョセフー!待っていたよ~!」


 アイリスはすぐさまジョセフの方へと向かい勢いよく飛びつきそのままジョセフはアイリスを優しく抱きしめた。


 「それよりこんなに遅くまで何やっていたんだお前達は?」


 「この城内に魔人族と内通していた裏切り物を探していたのよ」


 「リサのおかげで手っ取り早く見つけることができたがな…」


 「ジョセフ様が私に助言を与えてくれたおかげですよ」


 佐藤夏樹はすぐ近くにいたマリーに質問をし、マリーは内通者がいたことを伝えジョセフはリサの心を読む能力を使うように指示を出し、リサは照れながらジョセフがいたからこそ事件は解決したと謙虚な様子でいた。


 「それで犯人は誰だったんだ?」


 内通者が誰だか気なりだした佐藤夏樹はジョセフに顔を近づけワクワクしており、ジョセフは5分前の出来事を回想しながら順に説明していた。


 遡ること5分前。ジョセフはリサにこの中に犯人がいる可能性が高いと思った為一番怪しかったガーグ伯爵の心を読んでほしいと他の人に聴こえないように耳元で伝え、リサは集中して心を読み始めていた。


 そしたら予想は的中したのかリサの顔は一瞬にして氷のような冷たい表情へと変わっていった。


ガーグ伯爵は心の中で(魔人族に陛下を殺させようとしたのはこのわしだ!陛下が特殊な毒から回復してしまったおかげでわしとあのお方の計画は全て台無しになってしまった…)と思っており、リサはガーグの心を読み取ったのだ。


しかし、あのお方とは一体何者で王様が言っていた先代の国王の命と引き換えに封印した魔王を自称するベルという男のことなのか?ガーグ伯爵という男が何を考えているのかリサには到底理解できずにいた。


 「どうしたんだリサ?」


 「ジョセフ様の言う通りガーグ伯爵がこの事件の犯人みたいです…」


 「そうか、あの悪人面したおっさんが犯人だったか…」


 あとはガーグ伯爵が裏切った動機を探るだけであり、ジョセフはリサに心を読んでもらおうとも考えていたがリサの顔色を伺うとどうやら大量の冷や汗をかいており少し青ざめていたためこれ以上婚約者でもあるリサに無理をさせないようにしようと思っていた。ジョセフ達はこれを何とか自力で考えるしかないなと思っていた。


 「陛下、この件に関してですが陛下はどうお考えになられるおつもりで?」


 「貴様、若造の分際で陛下に気軽に話しかけるでないぞ!」


 「ガーグ伯爵、彼は余に質問をしているのだ」


 「しかし陛下…もしかしたらではありますがこの若造が陛下に魔人族の特殊な毒を盛ったのではないのでしょうか?」


 (ビンゴだ、今ガーグ伯爵は魔人族の特殊な毒と言ったね。王様は一言もそんなことを言った覚えはないのにな)ジョセフは内心形勢逆転するチャンスが転がり込んだと思った。


 「そんな、言いがかりです!そもそも私が陛下に…」


 「うるさい!お前の妻は亜人だというではないか!貴様の妻が魔人族と内通して毒入りのワインを陛下に飲ませたに違いない!」


 ガーグは必要以上に若い男に罪を擦り付けようとしていたのだ。


 「つまらん茶番はそれぐらいにしておけハゲヤロー」


 「何だ貴様は!どこの馬の骨とも知らん奴がこのわしにたてつくつもりか?」


 「お前が魔人族を使って王様を暗殺しようとした犯人であることは分かっている」


 「証拠はあるのか?証拠は?」


 ガーグが冷や汗をかきながらジョセフにそう言うためリサに証言を言ってもらうようにした。


 「お父様に特殊な毒を盛って殺そうとしたことは私が心を読みました…」


 「なっ、そんな馬鹿な!?心を読むだと?魔法対策はしているはずだぞ!」


 「私の心を読む能力は魔法ではありません!だからあなたがどんなに魔法対策をしていても私には通用しません!」


 「くそ!こんなところで捕まって…」


 「ウリィヤァァァ!」


 ジョセフはガーグの顔面に重いパンチを一発入れ、床へと倒れ込んだ。


 「安心しろ、簡単には殺さん。お前には色々聞かなければいけないことがあるからな」


 「何が安心しろだ、どうせそういってワシを殺すつもりなんだろ?」


 「今から俺が質問することに答えてもらう、お前は王様を殺して何がしたかったんだ?」


 「誰がそんなことを、ぐぅぬぬ…」


 ガーグ伯爵は急に蹲りながら悶え苦しんでいた。小声で『エレクトリックショック』を発動させようと試しに一発ぶん殴ったけど成功したようだな。軽い麻痺症状に陥ったがすぐに症状は落ち着くだろう。


 「もう一度言う、王様を殺した後何がしたかった?次はもだえ苦しむだけじゃすまないぞ?」


 「分かった、ちゃんと話すからわしを殺さないでほしい。魔人族と手を組んだのは事実だ。奴らは王を殺せば領地の一つはくれてやると約束してくれた。」


 「あなたは…領地が欲しいがためにお父様を…汚らわしい!」


 リサはまたもや涙を流しながらガーグを汚物を見るかのような目で睨みつけていた。


「ガーグ伯爵を牢へ…」


 王様は目を瞑りながらそう言い、ガーグはそのまま近衛兵に引っ張られ牢屋へと連れていかれた。


 「お父様?」


 「まさかあの男が魔人族と手を組んでいたとは…これは余の失態だ…」


 王様は顔を俯かせながら罪悪感すら感じていた。


 「王様、あなたのせいではありません。あの男の過去に何があったのかは知りませんが他の男に罪を擦り付けようとした奴にどのみち未来などありません」


 「ジョセフ、流石はリサが婚約者に選んだだけのことはある。君がいなければ余は今頃死んでいただろう。君は余の…この国の救世主になるためにやって来たのかもしれんな」


 王様はジョセフに頭を下げながら感謝の言葉を述べていた。


 取り敢えず佐藤夏樹に説明をし終えると長話だったからなのか溜め息を吐きながら茫然としていた。

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