第39話 ジョセフの中学時代(その1)

 王様を助けたことにより王宮の客室で一泊することにになったジョセフは日本にいた頃を思い出していた。


 ジョセフが中学の頃、誰も信用できなくて学校をさぼり家で漫画を読んだりギターの練習をしたりと自堕落な毎日を過ごしたり、たまに外出しても学校のヤンキー達と喧嘩したり悪徳教師をぶちのめしたりと真面目な人間とはお世辞にも言えないほどのアウトサイダーであった。


 「ジョージ、今日はお前んちで音合わせしたいけどいいか?」


 「それなら今すぐ家に帰ってやろうか。ジョニー達とそろそろ家に帰ろうと思っていたから」


 ジョージはジョニー、ジョナサンが帰っている頃であろうと腕時計を確認し、椅子から立ち上がりジョセフはジョージと一緒に学校を出た。ジョージってのは母親がイギリス人で父親は日本人でもありジョセフの育ての親でもある綾野家の親戚だ。


 ジョニーとジョナサンはジョージの母親の亡くなった姉の双子の兄弟で日本語はかなり流暢だ。本当に小6までイギリスにいたのか?て疑いたくなるほどだ。


 「ジョー、お前も今日は帰るのか?」


 「一人でギターの練習なんかしているくらいならお前らと練習した方が上達するから」


 「それもそうだな、行こうぜ!」


 ジョニーは満面の笑みを浮かべながら校門の外に出るように走る準備をしていた。ジョニーはジョセフのことをジョーと言うのは日本名の綾野丈の愛称で、異世界で名乗っているジョセフ・ジョーンズのジョセフを略称で呼んでいるわけではない。


 「コラー!お前達!まだ3時限目の授業が終わったばかりだぞ!」


 「やべっ!体育教師の那須じゃねえか…」


 那須に捕まらないように俺達は全速力で走りだした。


 「あいつら…」


 そう言い残しながら那須は校舎へと戻っていった。


 「また勝手に帰ったんですか?あのはみ出し者たちは」


 「はい、あの4人校内でも評判の悪いヤンキー達をぶちのめしたかと思ったら今度は学校をさぼりだしたりと手に負えんですよ」


 「あの綾野丈って生徒は10人以上のヤンキーを相手に無傷で勝つほどだからなあ…」


 教師達は職員室で愚痴をこぼしながら机上で仕事をしていた。


 ジョージとジョセフは上手く教師から逃げることができジョージの自宅へと到着することができジョージはポケットから取り出した鍵で扉を開ける。


 「母さんただいま」


 「ジョージ、もう学校から帰ってきたの!?」


 「どうせいてもいなくても変わらないからね。地下でバンドの練習するからご飯できたら教えてね」


 ジョージは母親に気軽にそう言いながら地下の防音室へとジョセフ達を誘導した。


 「ジョージのお母さんはいいよな、美人でナイスバディなうえに優しいからよ、俺の母親なんて口うるさすぎて交換してほしいよ…」


 「そう言うなって、丈」


 ジョージは苦笑いしながらジョセフの肩をポンポンと叩いた。


 地下の防音部屋に入り、ジョニーとジョナサンは事前に用意していたギターをハードケースから取り出しマーシャルのヘッドアンプに電源を入れシールドをギターのジャックに挿した。実はジョセフもここに自分のギターを置いていたため、ギターを借りる必要はなかった。


 「何の曲から練習する?」


 ジョセフがジョニーに何の曲を演奏するか質問した。


 「レッドツェッペリンのロックンロールから始めよう」


 「んじゃジョージ、カウントお願い」


 「ワン、ツー、スリー、フォー」


 ジョージはドラムスティックをカンカンと鳴らしカウントを取った。


 ハードロックなのに1950年代のリズムに激しいギターリフ、重低音の響くベースが防音設備の整った部屋の中を揺らしていた。

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