第15話 魔力解放(その1)

 ジョセフはマリーに魔法を教わることになったのだがどうやら魔法の適正属性はあったとしてもリサ達のように魔法の書を読んで簡単に習得することができなかった。


 この世界では適正があってもそれを制御できずに魔法が使用できない人間もいるみたいなのだ。


 というよりはジョセフのいた世界で魔法なんて使用できた人間なんているわけないため魔法を習得できないのは当然のことだ。


 「それじゃあジョセフ君が魔法使用できるように解放するからそこに立って」


 ジョセフはマリーに言われるがままに支持された場所に立った。


 ジョセフが立っている場所には魔法陣が書かれており、どうやら魔法陣を書かないと魔力を開放することはできないそうだ。どちらにせよここで魔力を開放しておかないと今後ジョセフ自身も困ることになるわけだから早く終わらせようと目を閉じ深呼吸をしていた。


 魔力開放の儀式は始まり、ジョセフの周りを赤い光が包み込んでいた。


 「神よ、このものの眠っている魔力を解放させたまえ、『マジカルリリース』」


 マリーが呪文を唱えるとジョセフの周りを赤く包んでいた光が一瞬にして体内に取り込まれていくのが分かった。


 「ジョセフ君、何か呪文を唱えてみて」


 「光魔法、『スパーク』」


 ジョセフはマリーに言われたとおりに呪文を唱えると、左手にはバチバチと青白い電流が弾けているのが分かった。


 「これが魔法…か」


 「そうよ、これでジョセフ君は魔法を習得することができるわね。ただし魔法を使用すると体力を消耗することになるから使用回数を考えること」


 マリーは魔法を使用する際の注意をしたあともそのままジョセフは魔法の書を読みながら習得できそうな魔法を脳内にインプットすることにした。


 魔法というのは、ゲームとかみたいにMPという概念がるのかと思ったけど魔法の威力が高ければ高い程自分の魔力が消耗して無理に使用すれば死ぬこともあるそうだから諸刃の剣とでも言った方が正しい、これからモンスターの討伐クエストを受ける際は無理のないように魔法を使っていくしかないのが現状だ。


 さっき魔法を一発使用しただけでもかなりの魔力消耗してしまったから1日でも最低1回、多くても2~3回が限界と考える方がいいだろう。


 ジョセフは他の光属性魔法も試しに使用したいと思ってはいるものの体が今日はもうこれ以上はしない方がいいと体が悲鳴を上げていた。


 「なあなあ、マリーさんよ、俺もジョセフみたいに魔法を使いたいんだが…」


 「佐藤夏樹君だっけ?魔法って適正がないと使用できないことは知ってる?」


 「全く知らない」


 「それなら佐藤夏樹君が使用できる魔法を適正するわね」


 マリーはさっきから膨大な魔力を使用していることが分かるようになったのだけど一向に息を荒げることがないけどマリーの魔力の量は異常だ。マリーの魔力の量を確認しようと思えば思う程ジョセフ自身がその強大な魔力を前に倒れてしまいそうだった。


 「魔法の適正はあるようね…」


 「俺は何が使えるんだ?」


 「無属性魔法が使用できるわ」


 「無属性って?」


 「簡単に言うと無属性魔法は属性を持たない魔法でその魔法はその人以外は習得できないってこと」


 佐藤夏樹は何が何だか分からない様子でいたが自分も魔法が使用できるのだと分かっただけでもかなり嬉しい様子だった。


 「それで無属性ってどうやって習得するんだよ?」


 「ん~っ、無属性魔法は魔法とは言ったけどどちらかと言うなら異能力に近い存在で無意識に名前とかイメージが出てくる感じね」


 「それじゃー今の俺は魔法が使えない人間と大差変わらないってことじゃん~」


 そのことを聞いて佐藤夏樹は愕然がくぜんとした表情でうつむいてしまった。


 「気にすんなって、そのうち使える魔法がポンと出てくるはずさ」


 「普通の属性魔法の使えるお前に言われたくねえよ」


 佐藤夏樹はジョセフに突っ込みを入れた。


 もしジョセフが佐藤夏樹と同じ立場だったら間違いなく同じように突っ込みを入れていたことだろう。


 正直なところ魔法の適正が無いのよりはまだマシだとは思う。


 ジョセフ達のいた世界なんて魔法使える人間なんていないわけなんだし、異世界で魔法適正があるだなんて普通なら喜ばしい話だ。

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