第7話 名刀陸奥守吉行

 坂本龍馬がかつて、1867年11月15日、日本では慶応三年頃だったかな?この当時は西暦と月日がずれていたりしているみたいだから本当は12月10日辺りに暗殺されたみたいだ。


 近江屋で十津川郷士を名乗る武士が暗殺に来るその日まで持ち歩いていたその名刀をまさかジョセフがこの手で所持することになるなんて誰が想像しただろうか。


 名刀陸奥守吉行は確か龍馬暗殺後親戚に引き取られ厳重に保管されていた筈だが一体何処でどう龍馬は転生する際どうやって取り寄せたかに関しては何通りかジョセフはパターンを考えてみた。


 一つは転生される時点で最初から持っていた、二つ目は神の転生特典として日本から取り寄せたか、三つめは日本にある刀を神の力でレプリカを作ってもらったかだ。


 どちらにしろ坂本龍馬本人が使用していた刀であることに間違いないからレプリカか否かなんてジョセフにとって気にする必要もない。


 もしも龍馬が転生特典を授かるとしたら間違いなく世界の海援隊を作りたいからと言って商売道具を複製したりとかその辺のチート能力を貰うはずだ。


 ジョセフは陸奥守吉行を鞘から抜き刀身をじっくり眺めていた。


 「う~ん、やっぱり日本刀の刃文は美しい…これをどうにか複製できないものかな?つってもこの異世界は中世ヨーロッパ風の世界観だし剣は敵を斬るというよりは相手を叩きつけ骨を粉砕させる硬さを主にしてるから日本刀みたいに薙刀や弓みたいにメインウェポンが無くなった時のサブウェポンとして作られたようなものだしこの世界のモンスター相手は不利かもしれない…それに坂本龍馬本人が所有していた刀ということは経年劣化で刀自体がもろくなっている可能性もありそうだから使用頻度はかなり少ないだろうな」


 そんなことをぶつぶつ言いながら見惚れていると後ろからリサ達の声が聴こえた。


 「ジョセフ様、そろそろクエストに行きますので準備の方お願いします」


 「分かった、今から行く」


 ジョセフは陸奥守吉行と3本の剣を帯に刺し、ランスを持って今日も仲間達とクエストに出かけた。気分はとても上機嫌だ。ジョセフは陸奥守吉行を帯にさせる日がくるなんてと考えた瞬間子供のように興奮していた。


 あれからアーサーや色々な人達とも出会いそれなりに人脈も増え、この世界では日本にいた時よりもいきいきと生活できているのだがやはり女子4人とパーティを組むというのはかなりきついもので、ハーレムといえばオタクの理想でもあるのだがこんなにもキャラが濃ゆいと正直辛いこともある。


 今回のクエストはゴブリンの討伐で、ここ最近ゴブリンが使用されていない洞窟に住み込んでしまったため近くの村などが被害にあってるみたいなのだ。


 「ここから先はゴブリンが沢山いるからみんな、気を引き締めるように!」


 「俺達は毎日きついシゴキを受けているんだ、ここで死なないように無理のないようにな」


 先陣はテレサが切り殿しんがりはリサがジンジャーに任せることにした。


 あの浮気調査終了後もずっと戦闘訓練を続けていた。


 初めてリサに出会った時よりもジョセフは強くなり、チームワークもよくなってきたのだがマリーが自分勝手に一人で行動するなんてことはありえなくもなかった。


 ゴブリン達も馬鹿ではあるが同じ手は何度も通用しないと思っておいた方がいいだろう。


 「んっ、血の気が酷くなってきたな…」


 テレサが何か悪臭を感じてようだな。


 「近いか?」


 「多分、ここから先は間違いなくゴブリンはいる、マリー、閃光魔法で目くらましをしてくれないか?」


 「了解、閃光魔法『フラッシュ』」


 あたりはピカーっと強く光りジョセフ達は突入する。


 「全員かかれ~!」


 テレサの指揮で俺達はゴブリンに奇襲をかけゴブリンをバサバサと斬り捨て、返り血を浴びながらも攻撃を1秒も止めることなく続けた。


 「一つ、二つ、三つジョセフ、私ゴブリンを三体も倒したよ」


 「ジンジャー、戦闘中は私語を慎むように」


 ジンジャーはゴブリンを容易く体術を混ぜながら斬り捨てテレサは厳つい表情で油断しないように注意を促す。


 「ちっ、あと何体ぶっ倒せばいいんだ?」


 倒しても倒しても次々と現れてこれではキリがないな。


 なんとか効率よく倒せる方法はないのか模索しマリーの魔法で一気に殲滅する手もあるがそれではチームで戦っている意味がなく、かといってチームワークに拘っていては全滅することは間違いなく目に見えていた。


 ジョセフはチームワークという固定観念を捨てることにした。


 「マリー、あのゴブリンを一気に殲滅できるか?」


 「できるに決まってんじゃん、私を誰だと思ってるの?」


 「今からマリーが魔法で殲滅するからみんな下がれ!」


 ジョセフ達はマリーが呪文を詠唱している間に後ろに下がった。


 「ゴブリン達よ、ここで焼き払ってやるわ!炎属性魔法『ファイヤーバード』発動!」


 マリーの掌から鳥の形をした炎が飛び出し、周りのゴブリン達を焼き尽くす。

 炎は完全に周囲のゴブリンを覆い消し炭と化した。


 「ジョセフ、最初からあたし一人でゴブリン倒した方がよかったくない?」


 「なにを言ってるマリー、お前の魔力は強力すぎて場合によっては仲間を危険に晒すことだってある」


 マリーはため息を吐きながら自分一人やればと言い出す始末だが事実、彼女一人に任せっきりに出来るほどここ最近クエストの内容も簡単ではなくなってきているからだ。


 ジョセフ達はクエストを無事終了した後、武器屋に寄ることにした。


 「あら、この前の剣3本とランス買った兄ちゃんじゃん、今日は何の用?」


 「実は頼みたいことがあって…」


 「もしかしてあたしに惚れちゃって愛の告白?」


 武器屋のジャスミンは冗談は飛ばしながらジョセフにそう言う。


 「ジャスミンさん人をからかうのは辞めてほしいものだ、この刀と同じ物を作ってほしいのだが出来そうか?」


 ジョセフは帯刀している名刀陸奥守吉行を取り出し彼女に渡した。


 「これ、珍しい形の刀ね、素材さえ分かれば作れそうだけどお金と時間かかるわよ?」


 「見積もりはいくらするんだ?」


 「そうねぇ、素材にもよるけど友人価格で金貨50枚以内てとこね」


 金貨50枚以内か、流石に宿代に食事代、装備品等などの維持費を考えたら普通の剣を買い揃えておいた方が妥当である。


 「そうか、悪かったな、今回の話は聞かなかったことにしてくれ…」


 「ちょっと、まだ話は終わってないんですけど!その刀と同じものだけど、条件次第では金貨20枚に値引きしてもいいわよ?」


 「どんな条件だ?」


 「剣の素材探したいものがあるから私もメンバーに入れてほしいの」


 (めっ、メンバーに加えてほしいだと?いい加減にしろよ、こっちはただでさえ女子4人に毎日囲まれて生活してるのにその上ジャスミンまで加わったら俺の立場どうなるんだよ?ただでさえ俺会話するの苦手なのに、でも金貨20枚に負けてくれるなら我慢するしかないか……)ジョセフは自分のコミュ障ぶりを考えたらそれは断固避けたいと思っていた。


 「分かった、あなたの素探したい素材も探すしメンバー加入も認めるからちゃんと金貨20枚の値切り、よろしく頼むよ…」


 「これで交渉成立ね」


 ジャスミンはルンルンとしており相当ジョセフのメンバーに加わりたかったのだろうかかなりの上機嫌だ。


 日本にいた時は逆にキモがられたジョセフなのに異世界に来てからフェロモンでも漂わせてるのかというくらいの確率で圧倒的に可愛い女子達が寄ってくるのだけどこんなことが続くくらいならだと心の中で絶叫していた。


 (このままじゃ読者から批判されること間違いなしじゃねえか、読者からは「女の子をはべらかす最低男」と罵声をネット上で嵐の山の如く浴びせられる気がして精神状態が不安定になりそうだ……とにかくこれも全て日本刀を量産するためだこんなことで根を上げてはオタクの恥というもの、メンバーの可愛い女の子達や読者達を失望させないためにも頑張るしかねえな)ジョセフは肩を竦めながらも現実を受け入れていた。

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