第6話 浮気調査(その2)

 ジョセフ達は早速依頼主の男性と共に浮気調査のために繁華街付近に向かったのだが、人混みが多すぎて男性の妻を見つけるのはかなり至難の業だ。


 「依頼主さんよ、あんたの奥さんはどんな人なんだい?」


 「えっ、えっと…うちの妻は…髪の長い黒髪で金色の髪飾りを付けています…」


 この依頼主、なんだか様子が少しおかしく、妙におどおどしておりこの男はジョセフ達に言えないことを何か隠している様子である。


 「リサ、あの男なんだか怪しい感じがするから心を読んでくれないか?」


 「分かりました……」


 気になったジョセフはリサに小声で男性の心を読み取るように指示を出した。


 「ジョセフ様、私の能力で心を読み、感じ取ったのですがあの男性はどうやら嘘は言っていないようです…」


 「そうか、もし仮に嘘でなかったとしても用心にするように他のメンバーに気付かれないように伝えてくれないか」


 そう言いながらリサに再度支持を出した。


 ジョセフもやっと少しはリーダーらしい活躍だと想像を膨らませ、あの男性が何か危害を加えた時の対策を考えていた。


 リサのテレパシー能力を使っても何ともないとのことだから信用するしかないのだが、違和感を拭えずにいるのは何故なのか、ここであの男性に尋問しようと考えたジョセフだがそんなことして依頼がパーになったら一緒に同行している仲間達にも申し訳が立たない。


 ジョセフ達は繁華街で依頼主の奥さんの特徴や他の男性と交際してる目撃情報などを聞いてはみるものの全く手掛かりが掴めずにいた。


 どうにかならいないものかと思いきや、ジョセフはまたもやアイディアが閃いた。


 「マリー、お前の詮索魔法は誰か探したい相手を探すことは可能か?」


 「勿論、相手が持っている所持品や相手が出している気配なんかから感知することなら可能よ」


 ジョセフはマリーにお得意の魔法で相手を探せるか聞いてみるとどうやら可能みたいだ。


 「そっそれならこの指輪から探すことは出来ますか?」


 そう言いながら男性は指輪を彼女に渡した。


 「探してみるわね、スヌーピング!」


 マリーは何かを感じ取ったのか右手で持っている杖を右方向に向けていた。


 「あの方向に奥さんはいるようね」


 「ありがとうございます!」


 男性はマリーに深々と頭を下げお礼を言った。


 ジョセフ達はマリーが指した方向へと向かい人気の少ない路地裏へと入ってしまった。


 「んっ、誰かいるぞ!」


 ジョセフ達は物陰に隠れた。


 「ねぇ~っ、次はどこ行くの?」


 「ぐへへ、言わなくてもわかってるだろ?宿だよ宿」


 「それにしてもいいのかい奥さん、旦那もいるんだろ?」


 「だってあの人よりあなたと一緒にいた方が満たされるんだもの、ねぇ早く宿に向かいましょうよぉ~」


  間男らしき男性と女性はどうやら本当に浮気をしていたようだ。


 「あぁぁ~、やっぱり浮気していたのかぁ~、私との関係は全て嘘だったのか…」


 男性は縮れた黒髪をかき乱しながら泣き崩れており、ジョセフ達は男性に返す言葉が見つからなかった。


 さっきの間男と女性のあとを尾行することにした。


 まだ確実な証拠が不十分だし、あの場で成敗してやってもよかったがもう少しあの二人を泳がせてからの方がよかろうと思った。


 間男たちの向かった宿に到着しジョセフ達も宿の中に潜入する。


 「宿に着いたことだしここでお楽しみといこうじゃないか」


 間男は顔をニヤつかせながら颯爽に服を脱ぎ始めた。


 「まっ、まだ早いわよ!」


 「うるせえ、もう後戻りはできないんだぞ!このことを旦那にバラされてもいいのか!?」


 ジンジャーは間男達が泊まっている部屋の扉をバンッ!と蹴破った。


 「あんた達、もう観念しなさい!」


 間男は眉間のしわを作りぐぬぬと唇を噛みしめていた。


 「何者だ!貴様らは!」


 「貴様のような外道に名乗る名前などない!」


 「何だと!ふざけやがって…」


 間男はナイフを取り出し、ジョセフに刺しにかかろうとしたためナイフを持ったての肘を下から殴り、正拳突きを顔面に食らわせた。


 「ぐわぁぁ~!」


 間男は勢いよく吹き飛び、低い声で両手で顔を覆い痛がっていた。


 「そこのベッドに腰かけてる奥さんよ、あんたの浮気現場の証拠は揃ったぜ」


 「チッ、バレちゃあ仕方ない」


 女性は舌打ちを打ちながら不貞腐れた態度を取った。


 「どうしてだ!どうして浮気なんかしたんだよ!?」


 「あんたがいけないんじゃない!いつも仕事仕事って私のことに構ってくれないから…」


 どうやら女性が浮気した原因は男性が仕事人間で女性とのプライベートを優先にしてくれないことだったらしい。


 「そんな…私は家庭を守るためにやっていたのに…」


 男性は膝をつき涙を流していた。


 「そんで依頼主さんよ、浮気は発覚したことだしどうするよ?」


 ジョセフはそっけなく男性に尋ねる。


 「離婚しよう…」


 「ちょっ、何言ってるのよ!」


 「慰謝料もたんまり取るから」


 女性は「そんなぁ…」と言いながら泣き崩れ、浮気調査は無事?終了した。


 その後、裁判により間男と女性は男性に多額の慰謝料を支払うように命じられ、当然支払う金などは無いため、慰謝料を支払うために日夜仕事をしているみたいだ。


 「みなさん、この件はどうかありがとうございました…おかげで私は色々と決心することができました。お礼にこれを受け取ってください」


 男性は報酬金以外にも引き出しから何かを取り出していた。


 「実は私、前の妻と結婚する前は冒険者をしていまして…もしよければこの刀を受け取ってください」


 男性は日本刀に似た刀をジョセフに差し出した。


 「この刀は軽いうえに鋭さと柔軟性を併せ持っていますためそんじょそこらの剣なんかと比べ折れにくいんです」


 「この刀、名は何というんだ?」


 「はい、名刀陸奥守吉行むつのかみよしゆきです」


 名刀陸奥守吉行?それは幕末の頃に坂本龍馬が所持していた刀の名前である。ジョセフは一体何故日本刀がこの世界に存在するのかと疑問に思い、ジョセフは男性からありがたく名刀陸奥守吉行を受け取った。


 「失礼ながら名は何と申されますか?」


 「私はアーサー・サカモト、この刀は先祖代々伝わるものです」


 サカモト?異世界にまさか坂本龍馬が転生したとでもいうのか?神様は手違いでジョセフを異世界転移させたと言っていたことを思い出し自分以外の人間が異世界にいても何ら不思議なことではないがそんな簡単に複数もの人間を異世界に送り込むのかどうかは疑問に感じていた。


 「あなたのご先祖様はなんという名だったのですか?」


 「ん~っと、確かリョウマ・サカモトだったと思います。ご先祖様に関する資料は私の家にありますのでもし良ければいつか私の家に遊びに来てください。その時はいつか一緒に食事でもしましょう」


 リョウマ・サカモトということはやはり転生した坂本龍馬の子孫だろうとジョセフは思っていたのだが、アーサーが坂本龍馬の子孫であることは明らかになった。この世界に関してはまだ謎に近い状態で勉強不足ではあるが日本に似た地域があるのかもしれないが日本そのものに近いのかはまだ分からない。


アーサーはご先祖様の話を語り終えた後俺達はサカモト宅から離れ、ジョセフ達は宿への帰路を辿っていたのだ。

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