第5話 浮気調査(その1)

 戦闘訓練を開始して30分が経ち、ジョセフとジンジャーは手汗をかき剣を握ってるときに滑って外れてしまいそうでいた。


 「どうした?もう根を上げたのか?」


 「そうかもな、手汗が酷くて気持ち悪くなるくらいにな」


 テレサの剣撃はかなり力強く、男性顔負けなためジョセフは軽く受け流せるほど余裕がなく、もっと速く、もっと力強く打ち込まなければ魔王どころかテレサに勝とうなど夢のまた夢だと思いジョセフは知覚を研ぎ澄ませる。


 この世界の女性は日本と違って冒険者になったりと力仕事をする人が多いため、ジョセフみたいなちょっと喧嘩が強くたって軽くいなされ、常識的に考えてチート能力でも授からない限りかなり高難易度であることは結果的に見えていた。


 「俺には強くならければいけない理由がある、こんなことで諦めたら男として恥というもの」


 「ジョセフって結構カッコいいとこあんじゃん、私もテレサから一本取れるように頑張りますか」


 ジョセフとジンジャー二人がかりで攻撃を繰り出すも軽くかわされ間合いを取られてしまう。


 これはあくまで戦闘訓練ではあるがここで一本取れるようになりたいとジョセフは思っており、何かテレサを油断させる手段はないものかと考え直す。


 そこで思いついたのはテレサとてあの綺麗な格好からして実戦経験は少ない筈、少し卑怯かもしれないが喧嘩の時に使用していた技術をここで披露してみることにした。


 ジョセフは右手に持っている剣をテレサにめがけバシュッと投げつけその隙に左手で持っている剣を両手で持ち、彼女の眼前で寸止めをした。


 「一本取ったぞ」


 「…騎士としてあるまじき行動だったがよく私から一本取れたな」


 テレサはハアッと溜め息をつきながらもジョセフを褒めてくれた。


 「しかしジョセフ、あの戦い方は何処で身に着けたものなんだ?」


 ジョセフはそのあたりをどう説明しようか全く考えていなかった。


 「普段から喧嘩に明け暮れていたかその時にでも思いついたんだろう」

 取り敢えずそれだけ言いながら後は適当に雰囲気で誤魔化したりと色々と大変だった。


 「あ~あ、結局あたしはテレサから一本取れなかったな…」


 「ちゃんとした戦闘訓練を受けてるテレサに同じ手は何度も通用するわけないだろ、第一あの戦法だってイチかバチか賭けたのが運よく通じただけで…」


 「ジョセフの言う通り騎士たるもの二度同じ失敗をするでないと教えられたからな」


 こうやってテレサからの剣術の稽古を終了し、リサとマリーの魔法訓練がどれくらいまで進んでいるかジョセフ達は見ることにした。


 魔法の訓練はどうやら剣や体術のような訓練と違いぶ厚い魔法の書を読み、魔法を使用する際仕組みや構造等を知っていないとその属性の魔法適正があったとしても使用できないそうだ。


 「ジョセフ様、この魔法の書には100種類以上もの魔法の仕組みや構造を覚え実際に使用することが出来るようになりましたけど初めてだからなのか中々制御できないです」


 「一日で使用できるのは凄いじゃないか、魔法っててっきり生まれつき無意識に使用できるものだとばかり思っていたのだがそうでもないんだな」


 「水魔法、アクアカッター!」


 リサの学習能力がいいからなのか実際に魔法を披露してもらうと威力こそは低いものの戦闘で使用できる程度には完成しているためこのまま練習すればもっと強くなるに違いない。


 「見ましたか?ジョセフ様」


 「魔法ってのは一日で構造や仕組み知るだけでここまで完成度高く出来るものなんだな」


 「それはリサちゃんの飲み込みが速いだけよ、ジョセフ君も一緒にどう?」


 「そう言いたいところだが今日は剣術の修行をテレサからみっちりシゴかれたから遠慮しとくよ」


 ジョセフはそう言うとマリーは、え~っと言いたそうな表情を浮かべており顔をプイッと背けるようになった。


 殆ど何の苦労もせずにこんなにもハーレム状態でパーティ組んじゃってるジョセフだけど同年代の男子をパーティにでも加えて少しでもハーレムを解消したいものだが人が増えるということはその分クエストをクリアする度に支払われる報酬も分割されるしどうしようか悩んでいる。


 ジョセフのパーティは女子が4人もいるため男子であるジョセフとしてはかなりの確率で意見の討論なんかでもしようものなら負けてしまうと実感していた。


 昔から男子よりも女子の方が口が強いと言われており、その辺はあたりざわりの無いように慎重に行動していくしかない。


 リサの魔法適正は水と風属性で光属性回復魔法等を得意としているみたいだ。


 回復系等の魔法は光属性魔法に分類されるものであって光属性の適性がある冒険者の殆どが回復系魔法を習得するのが基本にしているくらいだ。


 ジョセフが使用できる属性魔法は光属性の一種類とのことだが実際のところジョセフのいた日本というか世界では魔法という単語は存在するものの物理的には実現不可能であるためいきなり魔法を発動などのご都合主義全開は不可能に近い。


 「マリー、魔法ってのは呪文詠唱したりしてるけど無言で発動することは可能なのか?」


 「無言で発動は理論上難しいけどそれに近い異能力だったりとかなら存在するわよ」


 「例えば相手の真実を見抜いたり心を読めるテレパシー能力とかそんなのか?」


 「まあそんなところね、ただ異能力は魔法と違って適正があれば誰でも習得できるわけじゃないのよ」


 なるほど、異能力と魔法の違いは大体把握することは出来たがどれも大変そうな話だ。


 そんなこんなで俺達は宿に戻り明日の浮気調査に向けて準備を万全に整えた。


 今回受ける依頼は討伐でも素材集めでもなくただの浮気の調査をするだけだが任された仕事は手を抜かずいつも通りやるだけである。


 翌日、ジンジャーが依頼を受けた浮気調査の依頼主の男性に会いに行った。


 「冒険者の方々よ、今回は浮気調査の依頼を引き受けて下さりありがとうございます。早速なんですが私の妻が浮気をしているか調査をしていただきたいのですが」


 「奥さんが浮気をされたと思った時期はいつごろでしょうか?」


 「時を遡ること1年くらい前からです。私がいつも通り仕事から家に帰ってきたときには妻は家を留守にして気になった私は妻を探しに外に出たんですけど夜の繁華街付近で妻が他の男と歩くのを見かけてしまったんです…」


 「うむうむ、確かにそれだけでは浮気しているか証拠が不十分ですね、分かりました。あなたの奥さんが浮気してないかしっかり証拠をせます掴むんでみせます」


 男性はジンジャーに何度も泣きつきながら感謝の言葉を述べジョセフ達は男性と共に早速、繁華街付近の調査を行うことにした。

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