第4話 また女かよ!
初めてのクエストを無事にクリアし、食事も済ませ、ジョセフ達はまだ宿の泊り先を考えてないことに気付いてしまった。
「どうしましょう、泊まる宿を探してませんでしたわ!」
ジョセフはリサと一緒に冒険者になるための手続きをしたっきり宿を探すなんてことをしてなかったため、もしかして今夜はこのまま何処かで野宿しなければならないのではと思い、焦燥ぶりを隠せずにいた。
日本でもそうだが野宿をするということは盗賊等に襲われる可能性が大有りであり、女の子がこんな夜遅くに出歩くだけでもかなり危ないからだ。
「それなら今夜は私の部屋で泊まらないか?」
「大丈夫なのか?」
「今晩私が泊まる宿の店主とは仲がいいからその辺は何とかするよ」
テレサはとても頼もしかった。
歳はジョセフと同い年なのに精神年齢は大人で、ジョセフのいた世界の同い年なんて下品で下劣で破廉恥な人しかいないのに対してテレサは騎士なだけあって二次元美少女が持ってるものを兼ね備えた完璧美少女である。
(唯一まともなのがテレサだけなのが本当に救いだ……)ジョセフは素直にテレサがまともな判断できることに一息吐いていた。
リサは王女様だから世間知らずであり、マリーはチートすぎて協調性がなく、ジョセフは色々な意味で苦労してしまいそうでいた。
ジョセフは武器も揃い、いざ勝負!と思いきや美味しいところをマリーに持っていかれ初めてのクエストなのに活躍すらできなかったことに悔しさを感じていた。
(これってさ、逆に俺は足手まといなんじゃないのか?)ジョセフはいくら元いた世界で喧嘩が強くてもこの世界ではそんなものも所詮過去の栄光にすぎないと頭を抱え考えこむ。
井の中の蛙大海を知らず状態であることを痛感したジョセフはどうすればいいか悩みこのまま何も活躍できずに異世界生活を過ごさなきゃいけない葛藤に打ちのめされていた。
テレサが宿に到着し、店主に事情を説明し何とかジョセフ達はそれぞれ空いてる部屋に泊まることができた。
「店主、すまないが新しくできた私の仲間を泊めてくれないか?」
テレサが店主に声をかけた。
「テレサちゃんが仲間を作るなんて珍しいわねぇ。んでっ、お仲間さんはテレサちゃんと同じ一月くらいでいいのかしら?」
「ああ、一月でお願いする」
「キレイな女将さん、いくらだい?」
「一泊食事付きで銀貨1枚だから一月泊まるなら銀貨30枚てとこかな」
「結構お手頃ね、流石テレサが泊まるだけのことはあるわ」
マリーはえへへと笑いながら銀貨30枚を店主に渡し、ジョセフはリサの分も含め金貨1枚を店主に渡した。
「あんた金貨1枚なんか出しちゃって貴族か何かかい?随分と珍しい格好してるけど」
「そんなに珍しいかな?まぁ、俺のいた国でもこんな格好する人は少なかったけど…」
中折帽子にサングラス、革ジャン、ブーツの組み合わせはこの世界でもかなり珍しいみたいでジョセフの風貌を見た店主の顔はかなり驚いていた。
ジョセフ達は店主に泊まる部屋を案内されそれぞれの部屋に荷物を置いた。
ジョセフは自分が今晩泊まることになる部屋で異世界に来てからの出来事を日記に記すことにした。
もしも元いた世界に帰ることができたらラノベ作家を兼業している妹に小説のネタにしてもらい、書籍化してほしいからだ。
ジョセフはこの世界に来て初めて日記を書いているけど普段から日記なんて書いたこともなかったから書くペースはかなり遅く今日までに起こった出来事まで仕上げるのに、約30分くらいかかった。
日記を書き終えた後、トントンとノックが鳴った。
「ジョセフ様、今大丈夫ですか?」
「どうぞ」
「こんな遅くにごめんなさい、どうしても一緒にいたくて…」
「別に気にしてないよ、どうせ婚約者なんだからとか言うつもりだったんだろ?」
「もうっ、私をからかわないでください!」
リサはそう言いながら頬をぷく~っと膨らませていた。
「冗談だよ、許してくれ」
「それでジョセフ様、今日は色々とお疲れ様です」
(かっ、顔が近すぎる、しかもやっぱりリサは可愛いなぁ~)ジョセフはリサの華奢で色白の肌とまだ幼さが残っていた顔を見ながら口を大きく開けていた。
ジョセフはリサが同い年ならストライクゾーンに入るのにと内心嘆きながらそう思ってしまった。
神様のいたずらなのかジョセフは13歳の王女様と婚約させられる羽目になった現実を受け入れられず、そうなったことが全く理解できない。
(ここは普通に喜んでもいいんだろうけどやっぱり中1くらいの歳の女の子に心ときめいたら確実にロリコンだろ。日本だったらおまわりさんに連行されてSNSでつるし上げにされちまうぜ)とジョセフはまたもや帽子の上から頭を掻いていた。
ジョセフの傍にいつまでいるのかリサはベッドに腰を掛けた状態で眠っていたため、ジョセフはリサをお姫様抱っこして彼女の部屋まで送りベッドへ寝かせた。
本物の王女様をお姫様抱っこしたジョセフの感想は女の子の体というのはとても柔らかく、乱暴に扱ったら壊れそうなくらいの脆さがあって女性の体に触れることに躊躇いすら覚えてしまった。
翌日、異世界での3日目が始まりジョセフ達は宿で朝食を取ることに決めた。
朝食のメニューは異世界とかで定番の野菜スープに焼き立てのパンにサラダ、普段朝食を取らないジョセフからしたら何年ぶりの朝食だろうか、味は異世界の食文化に慣れてないからなのか美味しいというわけではなかったが食べられたものじゃないと思うほどではなく寧ろ、味が薄い気がしたがジョセフは勢いよく食事を口の中にかきこんでいた。
(でも、やっぱり日本にいた時と味が違うんだよなあ……異世界で生きていくことを決めたんだから異世界の味には慣れとかないとな。好き嫌いも言ってられないし……)ジョセフは内心味のことでぶつぶつ呟いていた。
「みんな、今日は何をする?」
ジョセフは食事しながらリサ達に尋ねる。
「今日もクエストを受けてみたいです。それよりもちゃんと食べ終わってから話してくださいジョセフ様!」
「あたしもかなぁ~」
何故かテレサだけ黙り込んだまま何かを言おうとしていた。
「よーし、今日はクエスト探しも兼ねて戦闘訓練をしたいと考えてるんだがいいか?」
「いやいや、あたしの魔法で一発で仕留めるから必要ないっしょ」
ジョセフは(相変わらずマリーは呑気だな…)と思ったその時だった。
「自分の力を過信しすぎればいつか仲間の命も危険に晒されるかも知れない!そのためにジョセフは戦闘訓練をすべきと考えたのが分からないのか?」
テレサは心の中で思ってたことマリーにぶちまけた。
「まあまあ、皆さん落ち着いてください、ただやっぱりマリーさん一人に任せっきりにするのもいけないと思うので私達も強くなりたいんです!」
リサはテレサたちの仲裁に入り強くなりたいことを伝えた。
ジョセフ達は朝食を済ませ宿出て、冒険ギルドに向かい掲示板に貼られてるクエストを探していると一人の女性がジョセフ達に声をかけた。
「ねえ、あんたたちのパーティてメンバー募集とかってしてるのかしら?」
「特に募集とかしてないけど何ができるんだい?」
「戦闘以外にも行商とかもしているわ」
(この女、商売もできるのか、交渉とかにも役に立ちそうだな)ジョセフは少女の外見を見た瞬間に自己分析をする。
体つきも見る限り細身ではあるがかなり引き締まった筋肉をしており、腹筋も薄っすらと六つに割れてて胸の推定サイズはFカップくらいでジョセフの好みだった。
「俺はいいけど他のメンバーがどういうかだな、テレサはどうだ?」
「そうだな、行商もしているとなればかなり話術にも長けているだろう、私は賛成だ」
テレサも中々の見どころをしており、戦士の感というものは鋭いものだ。
「それじゃ決まりね、私だったらこのゴブリン討伐とかいいと思うわ」
最近かなりゴブリンの被害が酷いみたいで報酬もそれなりの額が貰えるだろうとジョセフは思い、頭の中で構想を練っていた。
「ゴブリンかぁ、今日は戦闘訓練もしたいと考えてるからなぁ……」
「今回は私個人の依頼でも受けてもらえるかしら?」
「どんな依頼を受けるのか教えていただけますか?」
「実は最近浮気調査とかしているんだけど協力してくれる?」
「もちろんいいよ、浮気調査ならすぐに終わりそうだし引き受けるとしよう」
「了解、自己紹介忘れてたわね私はジンジャーよろしくね」
オレンジ色のツインテールのジンジャーはニコッと自己紹介を始めた。
「俺はジョセフ、こっちの魔法使いはマリー、あの赤毛の騎士がテレサ、そしてリサだ」
ジョセフはジンジャーに仲間を紹介した。
ジョセフはまた女性をメンバーに加えてしまったがマリーみたいに一人で突っ走ったりしないかだけ心配しておりハーレムパーティを無意識に作ってしまったのは読者から批判殺到しそうだと危惧していた。
(今初めて知ったことだが冒険者ってのは浮気調査とかの探偵紛いな仕事もやるんだなぁ、まあ浮気調査ならモンスターと戦うこともないし戦闘訓練をする時間も出来るな)ジョセフは探偵じみた案件があることを知り、更に計画を立てる。
「浮気調査は明日からするわよ、あと戦闘訓練だっけ?今からちょっとしようかしら」
ジンジャーの提案によりジョセフ達はベイカーハイドの門を抜け戦闘訓練を行った。
リサはマリーから魔法を教えてもらい、ジョセフとジンジャーはテレサから剣術を教えてもう事にした。
「ジョセフ、二刀流なのか?」
「まあ、利き手じゃない手でも戦えるようにしたいし」
「私も二刀流だよ」
テレサは少し不服そうな顔をしながらもジョセフ達に剣術の稽古をつけてくれた。
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