どうしようかなぁ?
キヨももう僕に愛想を尽かしているんだね。ハッキリ分かんだね。
そりゃそうだよね、僕もう55歳だからね。キヨだって、たしか80にはなってないけど、そのくらいだからね。自分がもうすぐ死ぬかもしれないってのに、こんなクソ馬鹿オッサン野郎に「死にたい!」なんて言われて、それを
いや、そんな生ぬるい言葉じゃなく、ストレートに〈ムカついて〉きたんだろうね。もはや女中キャラをキープすることが難しいくらい、ムカついているんだろうね。だろうね、なんかじゃないよね。ムカついてるのは確定だよね。許してなんて言えないよね――って言ってるナウシカの愛おしいこと……と、こんな感じですぐ真剣さを失う、こんな自分が嫌い!
キヨは自分と同じ名前の、夏目漱石の『坊っちゃん』に出てくるキヨを尊敬し、あんな風になりたくて、この大金持ちの財閥の僕のうちに女中、今で言えば家政婦としてやってきた。
それからもう60年経つ。キヨは僕が生まれる前から、この家にいる。昔はウン十人といたんだけど、今や、このデカい豪邸には僕とキヨの二人だけになっちゃった。そんで、親の遺産を食いつぶして生きてる。仕事なんてたまにセブンとかでバイトをするだけ。ちょっとしてみるだけなんだ。暇つぶしに。
こんな僕、死んだ方がいいかな? でも僕が死んだらキヨがどうなる? それ以上に、キヨが死んだら僕はどうなる?
「例えば僕が、死んだ~ら~♪」と突然、気軽に森田童子の歌を口ずさむ僕……ふざけてるよね、まったく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます