坊っちゃんとして、裕福さに翻弄されるばかりの、彼の巡礼の年
ひろみつ,hiromitsu
死にたくて死にたくて辛い、と甘えまくってやる
僕が二十歳だろうが、アラフォーだろうが、幼稚園児だろうが、
「もう死ぬ。死ぬったら死ぬ。ええい死ぬ!」
「坊っちゃん、どうかしたんですか?」
キヨが心配そうに訊いた。本当はキヨは、僕のことなんてすべてお見通しだ。でも、知らないふりをしてくれているのだ。
「ああ、キヨ。またね……」
「また、どうしたのですか?」
キヨは、僕が言うまで、あえて知らないふりをする。
「僕はまた――、女の子にフラれたよ……」僕はニヒルな笑みを口元に浮かべた。
「そうなんですか……たしかもう267回目ですね」
「武田鉄矢なんて、話になんないよね。101回プロポーズしてるんだから、まだいい。僕なんて、プロポーズ以前だよ」
「ええ――」
「もう死にたいよ!」
「そんなことおっしゃらずに……」
「いやだ、もう生きていたくない! こんな屈辱ばっかりで。おかしいじゃないか! 僕ばっかりさあ。不公平だよ。職場でもコケにされるし。こんな世の中殺したい! 全員殺したい! 殺しちゃダメなら、もう死んでやる、死んでやる、死んでやる!!」
「うっせえなあ、じゃあ死ねよ!!!」
「え?」
「あ……、すみません。頑張って生きてください、坊っちゃん……」
僕はキヨの変貌ぶりに驚いて何も言えず、こっくり肯いた。
僕たちは黙ったままでいたけれど、しばらくしてキヨが仕事があるような素振りで、気まずそうにそそくさと立ち去った。僕は、それでもまだポカーンとしていた( ゚д゚)ポカーン
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