第15話

「おはよう」


「おはよう水上君。昨日はどうだった?」


「昨日?」


「愛華とだよ。あの後僕は別れたから二人で帰ってたんでしょ」


「あぁ、うん。一応家まで送って行ったけど、それが?」


「なんにも気づかなかった?」


「え〜と、なんだかドキドキするとか、名前で呼んでほしいとか言ってたけど…

それがどうかしたの?」


「…………こりゃ大変だ。というか重症だ」


「え? 何が?」


再び神杉君に問いかけるも、彼はやれやれといった感じで答えてはくれなかった。


「それにしても、最近水上君は立花さんと星ノ宮さんとよく一緒にいるね」


「昼食とかは、まぁしばしば一緒に食べてるかな」


「2人とはどういう関係なの?」


「友達…って言ってもいいのかな。一応俺はそう思ってるんだけど。それがどうしたの?」


「別に。それよりさ、今度一緒に遊びに行こうよ!」


「遊びに行く? 随分唐突だね」


「そうだね。でもなんか急に行きたくなったんだ。カラオケとか、どう?」


「カラオケかぁ〜小学校以来ずっと行ってないなぁ」


「ほんとに?」


「うん。こう見えて小学校の頃は人並みに遊んでたんだ」


「あ、いや、別にそれが意外だった訳じゃなくて、逆にカラオケに行ったのが小学校以来っていうのに驚いたんだよ」


「え? じゃあ神杉君は?」


「だいたい半年前くらいかな 」


「へぇ〜ってことは割と頻繁に行ってたりするの?」


「うん。勉強の息抜きとか、気分転換にもなるし」


「気分転換になるなんて発想、俺にはなかったなぁ」


「水上君はどうやって息抜きしてたの?」


「息抜きかぁ〜基本インターバルで読書とランニングを挟むくらいかな。あとはたまに音楽を聴いたり短い睡眠を入れたり?」


「うわぁ。なんか聞いてるだけで凄いって想像出来ちゃったよ」


「本当は15時間連続くらいで勉強したいんだけど、それするのは効率悪いし…………そもそも、もうやろうと思っても出来ない」


「もしかしてだけど、水上君テレビ見たことない?」


「流石にそれはないよ。テレビは中学2年の二学期ぐらいまでは普通に見てたよ。そう言えば、高校に入ってから久しぶりにテレビ見てたんだけど、知ってる番組が終わってたり、面白そうなのが増えててビックリしたよ」


「………でも水上君は既に全国模試で1位なんだから、そこまでする必要はなかったんじゃ」


「もし高校に入って成績が落ちたら、あくまで中学時代の栄光になるでしょ。それが嫌だったからね。というか高校に入ってからの事を考えたらやって当然って思ってたよ。そもそもその時俺高校受験の範囲を勉強してないし」


「………………」


「どうしたの?」


神杉君が口を開いたまま呆然としている。



「そう言えば、俺たちカラオケの話をしてたんだよな」


「あ、ごめんごめん凄く話が脱線してたね」


「行くとしたら何曜日? 」


「日曜日かな。学校も休みだし」


「それが妥当かな」



「ねぇ勇斗君。なんの話ししてるの?」


「あ、おはよう燈」


「うん。それより、さっきカラオケ行くって話してなかった?」


「してたけど」


「じゃあそれ私達も行っていいかな?」


「私達って冴織さんもってこと? それ勝手に決めちゃっていいの?」


「いいにきまってるじゃん! それじ


「ちょっと! 人の予定を勝手に決めないでくれる。燈」


「うゎ、びっくりした。もう冴織〜、驚かせないでよ!」


「それを言いたいのは私なんだけれど」


「冴織もおはよう」


「ええ、おはよう。それより燈、私カラオケに行くなんて一言も言ってないわよ」


「楽しそうじゃん! 」


「あのね…………ブツブツブツ」



「あの2人さっきから言い合っているけど、大丈夫?」


「う〜ん…よくある事だから大丈夫だと思うよ。それより、どうする?」


「ああ、一緒にってことだよね。いいんじゃない。僕も愛華を誘うつもりだったし」


「え、そうだったのか?」


「そもそも、男2人だけでカラオケっていうのはなんというか…………シュールすぎるよね」


「そういうものなのか? いまいちよくわかんないけど」


「そりゃ2人だけだと何曲も回せる分多く歌えるだろうけど、長くは喉も体力も続かないだろうし、曲のジャンルも男性の曲ばっかじゃ飽きちゃうからね」


「確かに、女の子がいた方が和む……のかな?」


「カラオケは歌うことも楽しいものだけど、聴くのもすごく楽しいものなんだよ」


「そういう事なら」


「うん。だから2人には大丈夫って言っておいて。僕は…………悪いけど先に行かせてもらうよ」


「……ああ、わかった」



「だから、私は!」


「あの……」


「いいじゃん!」


「…………」


「お二人さん、ちょっといいですか?」


『何!』


「……神杉君OKだって……言ってました」





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