第13話

「はぁ。やっと収まった」


さっきまで俺への質問攻めがすごかった。どんな質問かというと、どんな関係なのかとか、名前呼びになった経緯とか、はたまたどっちと付き合ってるんだとかいう意味の分からない質問まで。

まぁそれは、最近知り合ったばかりの二人のことを急に名前で呼ぶようになったら不思議に思うのかもしれない。特に冴織さんは燈以外の人と名前で呼ばれていなかったからか、俺はとても驚かれている。(両性から)


だが、はっきり言って全然釣り合ってないと思う。それに仮に、万が一釣り合っていたとしても、俺は恋愛とかには全く興味ないし、するつもりはない。俺の青春は勉強だとすら思っている。


「何だか大変そうだね。僕もその気持ちわかるよ」


そう言って俺を励ましてくれているのは同じクラスの神杉君。今は委員会の時間で、僕と彼は同じ図書委員で、一緒に本の整頓をしている。クラスで仲の良い同性の友達と言ったら彼ぐらいだ。物静かでお互い気兼ねなく会話できるし、かと言って会話しなきゃいけないといった雰囲気もなく、本当に話したい時だけ話すといった感じ。お互いが相手の領域に踏み込みすぎないからこそ、こういった関係が築かれているのだと思う。


「そう言えば、神杉君は俺と同じ中学だよね?」


「うん。お互い話してみるものだね。僕は中学時代は水上君とあんまり接点無かったし、それに水上君は高校デビューしてたから、全然気が付かなかったよ」


「え? 高校生デビュー? 別にそんなつもりは全くないんだけどな。だって髪の毛を切ってコンタクトに変えただけだし」


「そんなことないよ。……もう別人だから」


「そうかなぁ」


「そうだよ! それにもずっと僕に水上君の話ばっかしてくるし」


「愛華?」


「ああ、ごめん。関係ない話だったね」


「いいよ。でもなんでその愛華って人が俺の話を神杉君にするんだ?」


「ああ、実は愛華も同じ中学で、僕とは幼稚園からの幼馴染なんだ」


「そうだったんだ。俺中学の頃の同級生はあんまり覚えてないな。あ! でも神杉君の事は少しだけ覚えてるよ」


「え? どうして?」


「中学の頃よく神スギって言わ「それはいいから」


神杉君が少し声量を大きく僕にこう言ってきた。普段から静かだから、そこまで大きな声でもなかったけど、明らかに言ってほしくなさそうだった。


「ごめん。なんか嫌なこととか思い出させちゃったかな?」


「嫌というかなんというか……あれは人生の汚点だよ」


「どうして?」


「僕も水上君ほどじゃないけど、そこそこ勉強ができたから、テストの点も良くて」


「ん? 別にいいことじゃないの?」


「それだけだったら良かったんだけど、あるテストの成績表をクラスの人に見られちゃって、その時から事あるごとに、





神すぎるだろ! 神杉君!


とか言われるようになったんだよ!」


「……………………」


何か言おうと思ったのだが、何をいえばいいのか分からない。正直それだけ? と思わなかった訳でもない。


「正直それだけ? とか思ってそうな顔してるね」


(神杉君エスパーなの? 神すぎるだろ! 神杉君!)


…………………………なるほど。俺もついつい心の中で言ってしまった。


「たまに言われるぐらいなら良かったんだ。でもクラスの奴らはことある事に神だ神だ……ときにはGODとか言ってきて……僕の平穏は一気に消えていったんだ!」


(そうだったのか。それはなんだか悪い事言ってしまったな)


そう心の中で反省していると、


「仕事終わったんなら帰るわよって……水上君!」


「えっと……もしかして彼女がさっき話してた愛華さん?」


「うん」


「あ〜見覚えあるかも。そう言えば中学で凄い可愛いって言われてたよね」


燈や冴織さんとはまた違って純粋にカワイイ、といった感じ。

「………………」


「あれ?違った? 」


「水上君…………」


なんだろう? 神杉君も、なんだかなぁって感じで、もしかして呆れてる? のだろうか。





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