閑話 勇斗の休日
今日は休日。この前立花さんに買ってもらった本を読んでいた。短編や1巻で読み終わるもの以外は久しぶりだったが、完結してる作品だからということもあって、つい一気読みしてしまった。
1巻完結も勿論面白いが、やはりストーリーが何巻にもわたって続いていると、伏線などが際立って感じられる。
「ああ〜面白かった」
朝起きてからずっと読書ばかりしていた俺は、読了と同時にそう呟く。すると、
「ねえ勇斗〜今暇でしょ?」
「まぁ、暇だけど」
「買い物お母さんから頼まれてたの思い出したの。荷物持つの手伝って」
姉さんが買い物の荷物持ちに俺を呼びに来た。
「わかった。すぐ行くからちょっと待って」
特に出かける用事もなかったので、ずっとパジャマだった俺は、姉さんをあまり待たせないようすぐに着替えて、急ぎ階段を降りる。
近くのスーパー。今月はポイントが5倍らしい。母さんもそれを知ってか、姉さんにここで買ってくるよう言っていた。主婦は大変だ。男の俺は、そんなの気にせずに買い物をするが、母さんはそういったことを確認してから買い物をしている。
母さん曰く、使うべき時は惜しまずにドンと使う。それ以外はできるだけ節約するのが人としての常識だと。お金に困っていなくても、そういった心がけを持つことが大事なんだそう。
「え〜と、あとは人参とじゃがいもでいいの?」
「それと牛肉だって」
「おっけい。母さんカレー作るのかな?」
「甘いわね。母さんはきっと肉じゃがを作るつもりなのよ!」
「どっちも途中まで同じ作業だし、材料もあんま変わんないからわかんないなぁ。多分どっちかだろうけど……」
そう思いながら姉さんに言われた物を探す。
「あ! 勇斗くん」
「立花さんか。奇遇だね。お互い買い出し中かな?」
「うん。私もお惣菜とか、あ、あと日焼け止めとかもついでにかな。今度京都に遠足行くでしょ? その時使うかなぁ〜と思って」
「そういえばもうすぐだったなぁ〜」
うちの学校はこの時期は毎回京都に日帰りで遠足へ行くことになっている。
「立花さんたちのクラスは班の人とかってもう決まってるの?」
「まだクラスで話し合ってる最中。勇斗君は?」
「俺のクラスもまだ」
「お互いクラスが違うし、一緒にいられないから残念だなぁ~」
「そうだな…………でも立花さんは班すぐに決まりそうだからいいだろうけど、僕はそうはいかないだろうから...............」
中学時代班決めの際はずっと最後まで残っていたし、入ることになったグループからも避けられていたことのある俺だ。今いる高校にはそんな事をする奴はいないだろうし、俺も中学の時とは違う。だが、やっぱり不安が残らないかといわれればそうではない。
「勇斗くんは冴織が一緒のクラスだからしゃべる人いるでしょ? でも私はそこまで仲のいい友達がいないから…………」
「そうかな? 立花さんすごい人当たりいいし、仲がいい人は多いと思ってたけど」
「 勿論クラスの皆とは楽しくやってるよ。でも私から話しかけるのは勇斗君とか冴織だけだから」
「へぇ〜」
立花さんの話に俺は驚いた。初対面でも明るく話しているから、てっきり話す友達は多いんだろうなぁと思っていたのだが、意外だった。
「ご飯できたわよ〜降りてきなさ〜い」
『は〜い』
夕食ができたみたいなので姉さんと俺はリビングまで降りる。
「ああ。肉じゃがだったのか」
「やっぱりね! 私の勝ち!」
「いや、別に勝負してないし」
「でも勇斗は外して私は当てたんだから私の勝ちよね」
「どうでもいいよそんなこと」
「ほら、さっさと食べなさい」
『は〜い』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます