第9話
いくつも料理店はあったが、3人ともこれといって食べたいものが決まっていなかった。
結局、燈の提案で、昼ごはんはフードコートでお互いそこで気に入ったものを選んで食べた。
「さて、じゃあそろそろ買い物しよっか!」
「そうだね。女子って色々見て回って決めると思うんだけど、2階からでいい? ここ色んなブランドあるから、どこからいけばいいかわかんないくて。」
「うん? …………え! 勇斗君、まさか服買ってくれようとしてる?」
「え? 女子と言ったらやっぱり服じゃないのか?」
「そりゃそうだけどここの服はみんな高いし…………悪いよ。」
「こんなこと言ってもあれだけど、別に俺の小遣いから払うわけじゃなくて、お母さんが女の子のプレゼントはしっかりとしたものを買いなさいって貰ったお金だから、気にしなくていいって言うか、むしろ全部使ってくれなきゃ怒られるって言うか…………」
「貰っておけばいいじゃない。プレゼントなんだから」
「でも、私そんなの返せないし……」
「いや、それこそ気にしなくていいって言うか、気にして欲しくないかな。お互いが嬉しければ、それが最高のプレゼントだと思うし、金額がどうこうとかは、俺は特に気にしない」
それにさっきも言ったがこれは俺の金じゃない。寧ろ申し訳ないぐらいだ。
「ありがとう。じゃあわたしも、勇斗君が最高に喜んでくれるものプレゼントするね!」
「うん。そうしてくれると嬉しいよ」
「どう? 似合ってる?」
今は服屋を巡って、3店目。
「う〜ん。さっきまでの服も良かったけど、やっぱり今の淡い色の組み合わせが1番似合ってると思う。個人的にその服のイメージが立花さんにピッタリだし、凄く綺麗で可愛いと思うし………………」
「もういいよ!」
「あ、ごめん。迷惑だったか?」
「私が聞いたんだから迷惑じゃないけど…………恥ずかしい」
みると立花さんの顔が少し赤くなっていた。
(そういえば姉さんも一緒に服の買い物に行くときこんな反応するんだよな)
感想を言えと言われたら正確に答える事がベストなはずなのに、いつも途中でもういいといわれる。
「燈、私のはどう?」
買い物を一緒にしているのだから、当然星ノ宮さんも服の試着をしていた。
「冴織はやっぱりなんでも似合うね! 体型もモデルみたいだからかな?」
「そうだね。全体的に黒っぽい感じで、ところどこのワンポイントが際立ってる。いるだけで周囲を惹き付けるようなクールさを感じるよ。さらに言うなら…………」
「……あんたには聞いてない。それと褒めすぎ。ひょっとして天然なの?」
「え? 天然? それはないよ。俺が天然ならほとんどの人が天然じゃないか」
「……あなた勉強はものすごくできるのに、こういうところは全然自覚がないのね」
星ノ宮さんが初めて俺に向けて笑みを見せた。いい意味ではないと思うけど……うん、すごく馬鹿にされた気がする。
「勇斗君。これ買ってもらっていい?」
「勿論、気に入ったんなら」
俺はさっき立花さんが着ていた服を買った。財布の中はちょっと余ったけど、気に入ったものをプレゼントできたので、お互い満足だと思う。ちなみにだが、星ノ宮さんもちゃっかり購入していた。
「星ノ宮さんはいいの?」
「私は自分で買うわよ」
「そう? ならいいんだけど」
「それにこの程度のことで私はあの権利をむざむざ手放そうなんて思わないもの」
「あははは……」
「じゃあ次は勇斗君のプレゼントだね!」
「俺か〜そういえば何も考えてなかったな」
「う〜ん。靴とか?」
「靴は別に…………」
「じゃあ鞄とか」
「う~ん持ってるしいらないかな」
そうこう言いながら、欲しいものを必死に絞り出そうとするが、
(ダメだ。……参考書しか出てこない)
「本とかはどう? ほら、初めて会った時も本を探してたし」
「本か……うん。本がいいな」
結局日常的に読む本をもらえるのが一番だと思った。それに本はいくらあっても問題はない。
「じゃあ本で決定! 1冊だけじゃ流石にあれだから、勇斗君が欲しいと思った本を何冊かと、私も選んでプレゼントしたいから、それと合わせ買うって感じでいい?」
「うん。とても良いと思う。やっぱり自分の趣向で選ぶのもいいけど、他の人が選んでくれた本もなんか新鮮な感じがするし」
こうして、俺が選んだ本、基本的にシリーズはあまり揃えないタイプなので、それぞれ1冊完結のものを4冊、立花さんが選んだのは、3話完結の小説と、本人がめちゃくちゃおすすめしてた絶対に泣けるらしい小説、これは上下で2話完結。計9冊の本を買ってもらうことになった。
……これは流石に一日じゃ読み切れないな。
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