第8話
「久しぶりに来たけど、結構広いなぁーこんなに大きかったっけ?」
俺がきているのは家から少し離れたところにある大手ショッピングモール。休日ということもあり、中は大勢の人達でいっぱいだった。
階層は全部で六階まであり、殆どのものは大抵ここで揃えられる。
しかし、当たり前だが、こういった店の服やらはブランド物ばかりで、割と値が張るものばかりだ。服を自分からあまり買わない僕にしたら関係ないけど、普段からこんな所で買い物ばかりしている人達はどうなんだろう? ブランドとそう出ないのの違いもよく分からない俺からすればよく分からないことだ。
今日は立花さんに何かプレゼントするわけだけど、やっぱり服とかアクセサリーの方がいいのだろうか? 一応財布には2万円ほど入っている。姉さんが母さんに今日のことを話したらこれだけ渡してきたのだ。
正直に言うと、服なんて三千円もあれば余裕で揃えられるものだと思ってたので、
「多すぎない?」
と言ったのだが、
「女の子はこのぐらいはかかるもんなの!」
と言われてしまった。それに、
そんなに高いもの買ったって意味ないだろ、それよりそんな金があったら勉強に回そうぜ! などと頭の中で思っているのが見透かされたのか、母から
「勇斗、服はね、勉強とはまた違った意味で価値あるものなの! 一緒に考えてちゃダメよ! それに他にも何かに使うかもでしょ?
多めに持ってっときなさい。 」
となだめられてしまった。
とはいったものの、いざこの店で服を選んであげるってのはそうとうレベルが高いぞ。
「ごめん。遅れちゃった」
「ったく、おばあさんの荷物を持ってあげるとか、ほんと世話焼きなんだから! っていうか私も手伝ったんだからね!」
「でも、おばあさんすごく喜んでくれてたじゃん。良かったよ」
2人は人助けみたいなことをしていて遅くなってしまっていたらしい。
立花さんは白を基調としたワンピース、
星ノ宮さんは、清楚な感じで、どこか大人っぽさを醸し出していて、2人とも凄く綺麗だった。
「気にしないよ。それよりどうする? やっぱり女子はこういうところに来たら服とか買うの?」
「う〜ん、確かにそれもいいけど、せっかくなんだし少し遊んでからでもいいんじゃないかな? ほら、荷物いっぱいだと動く時大変じゃん!」
「え? 買い物するだけじゃないの?」
「私も買い物に付き合うだけだと思ってたんだけど」
「いいじゃん! ほら、あそこにゲームセンターがあるし、あそこに行こう!」
「まぁ多分お金は足りると思うけど……」
(思ったより気まずいな〜)
昨日話している通りだったら、2人より3人の方がいいだろうと思っていたのだが、いざ来てみると、相当に気まずい。
まず女の子と買い物に行くこと自体姉さんや母さん以外には初めてだったし、それが2人ともなると、男の俺は少し肩身が狭い。
◆
「まずは私の勝ちね!」
俺たちは100円ゲームで割と有名なクルマのレースゲームをしていた。
「やっぱ冴織は上手いなぁ〜」
「星ノ宮さんってゲームもできるの?」
「ゲームは反射神経とかを鍛えられるから息抜きがてらすることがあって、その時少し上手くなったって感じ?」
「もう1回! 今度は負けないからね!」
「いいわよ! どうせまた私が勝つもの」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ダメだ。レベルが違いすぎる。あの後5回ぐらいやったのだが、2人には毎回負けていた。
「3勝2敗、わたしの勝ちね!」
「くっ〜」
これ、俺いらないんじゃないだろうか?
でも、2人を見ていると、ほんとに仲がいいのが伝わってくる。親友っていうのはこのことを言うんだろうなと思った。
「じゃあ今度はあれやろうよ!」
といって立花さんが指さしたのは……太鼓を叩くヤツ。
(これならいける!)
昔小学校の頃、これをやりこんでいたのを思い出す。
純粋な反射神経やリズム感なら多少自信がある。思えば今でこそ勉強ばかりだが、昔はそうでもなかった。
別に後悔なんてしてこれっぽっちもしていないので、そんなことはどうでもいいのだが、久しぶりのゲームに、俺にしては珍しく燃えていた。
「言っとくけど……私これも結構得意よ?」
「私だって得意だもん!」
台は2台しかないので、まずは星ノ宮さんと立花さん。その次に星ノ宮さんと俺で、最後俺と立花さんでやることになった。
「どうする? 難しいとかにしておく?」
「う〜ん。そうだね。私鬼とか無理だから」
2人とも同じ曲の同じ難易度のをプレイする。その様子を眺めていると、どちらもなかなかうまいと思った。だが、
「凄い! フルコンだよ冴織〜」
「別にこれはそんなに難しくないわ」
やはり星ノ宮さんが強かった。
「次は貴方よ!」
「ああ、」
「勇斗君頑張ってー!」
「曲はどうする?」
「なんでもいいよ。難易度も鬼でいいし」
「……私と勝負して勝つ気なの?」
「どうかな? 久しぶりだけど、俺もこれは結構得意だったんだ」
なぜ少し挑発するように言ったのかというと、それは純粋に彼女と本気で戦いたいと思ったからだ。
「なら私も全力で相手するわ!」
二人は熱戦を繰り広げた。燈は、この時二人が全く同じ動きをしていることに只々驚かされていた。
「え〜! 2人ともどうやってるの?」
後ろからは立花さんが驚いたような声で喋っている。
「俺は今のところノーミスだぞ」
「生憎ね。私もよ!」
「どっちが勝つんだろう?」
●
結果。
「よし! 俺の勝ち!」
「………………」
「2人ともすごいよ! フルコンだよ!」
「ああ、凄くいい勝負だった」
凄く満足感があった。久しぶりだったというのもあるが、それ以上に対戦というのが俺の心を躍らせた。
「今回はたまたまだから。 次はこうは行かないんだから!」
星ノ宮さんは相変わらず負けず嫌いで、少し不機嫌そうだったが、結果的にお互いに少しは仲良くなれたと思う。
「次は俺と立花さんだけど……」
「私はもういいや。それよりそろそろお昼ご飯にしようよ!」
「そうだな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます