第6話
3日後、テストの結果が返ってきた。
(よし! 無事全問完答。 ノーミス。まぁ数学の最後の問題以外はそんなに難しくなかったし。当然かな)
クラスの人達はお互い自分の成績を見せあって一喜一憂している人や、1教科ごとだったり、総合点の点数で勝負している者もいた。
「どうやら俺の勝利のようだな」
「あぁぁ! どうしてだよぉぉ!」
「○○君凄いねぇ〜僕じゃ絶対無理だよ〜」
「まぁ、当然の結果かな」
「今度のテスト、私にも教えてよ!」
このような会話が色んな方から聞こえてきた。まぁこんな話をちまちま聞いていたって、得るものは何も無いので、俺は静かに
机の上にうつ伏せた。
「はい。みんな元の席に戻って!それと、 校内順位は今週中に掲示されると思うから、確認しておいてね!」
『分かりました。』
(そう言えば、この学校は校内のテストの成績が掲示されるんだった)
今時こういった学校は珍しいのかもしれないが、だからこそ常に意識を持って勉強ができるのだろう。
◆
昼休み。
俺はこの学校の図書室にいた。
僕の唯一の趣味とも言える読書。ここ最近は書店で買うことも多いが、買った本はその日のうちに読んでしまうので、殆どが家でしか読まない。
(へぇー、こんなに色んな数の本があるんだったら、帰る前に少し寄って帰ってみてもいいな)
しばらく1人であたりの本を見て回っていると、
「あ! 冴織〜。冴織も本読みにきたの?」
「燈。えぇ、まぁただの暇つぶしかしら」
「じゃあ一緒に本見て回ろうよ!」
(へぇ〜2人って知り合いだったんだ)
星ノ宮さんと立花さん、2人とも楽しげに話していた。特に驚いたのが、クラスでいつもピリピリとしている星ノ宮さんが、いつもよりにこやかに話している様子だった。
どちらもすごく美人で、なんだか絵になるなぁ〜なんて思っていると、
「勇斗君だ!」
あれ? 気づかれてた。
「そうだ! あったら言おうと思ってたんだけど、テスト大丈夫だったよ。むしろいい方だった!」
「おお、それは良かったよ。こっちも教えたかいがあった」
「あなたは確か、隣の席の……」
「えっ! 冴織、勇斗君の隣の席なの?」
「ああ、星ノ宮さんは僕の席の隣だよ」
「へぇ〜そうなんだ。なんだか不思議だね」
確かに、高校で初めて知り合った人の友達とクラスが同じで、しかも隣の席というのは割と珍しいのではないだろうか
「それより、燈は何で彼に勉強教わってたの?」
「えっとそれは……色々あって……お互い一緒に勉強してたほうが都合がよかったから、かな? そんなことより冴織も聞いてよ! 勇斗くんすごく教えるのが上手くてね、私数学で75点も取れたの」
「えっ! 今数学って言った? ………… あの国語以外の勉強はからっきしな燈が?」
…………正直に言ってしまうと、俺も驚きを隠せない。勿論出来ることは全てやったつもりではあったが、元々の彼女の数学の点数では考えられないほど伸びていた。元々並外れた集中力があったことも由来しているのかもしれない。
「勇斗君が教えてくれた問題をしっかり一人で解き切れるまで練習したり、おすすめのやり方とかを試してみたら、すごく自分にあってたみたいで、本当に感謝しかないよ! 今度なにかお礼させて!」
「あれは僕が教えたかったからしただけだから、気にしなくていいって言ったのに……」
「………………」
「要らないよ。それにテストの結果は自分の努力が実った結果だろ? 僕じゃなくて、自分自身のことを褒めるべきだ。僕が教えたことなんて、立花さんの努力の前では微々たるものだよ」
「…………………………………………」
(あれ? さっきから、 なんだか星ノ宮さんにずっと睨まれているような…… )
「ねぇ、水上君だったかしら? あなた今回のテスト何点だったの?」
「え? なんで急にそんなこと聞くの?」
「燈は確かにとんでもない集中力を持ってるけど、それでもこんな短時間で苦手科目の点数が上がるだなんて思えない。でも、実際にそうなのだから、原因はそれ以外、つまり教えた側にあるって事」
「原因って言われても……僕も立花さんの点数見てすごく驚いたし……」
「冴織! そんな言い方じゃまた誤解を生んじゃうよ。 ごめんね、勇斗君。冴織はいつもこんな言い方しか出来ないの。でも、多分勇斗君の事を凄いって思ったからだと思うから」
とりあえず俺は無言でうなずく。
「で! どうなの? あなたの点数!」
「……いわなけゃダメなのか? 僕に拒否権は……「無いわ!」
「そんな……」
「でも、私も水上君の点数知りたいな!」
(グッッ)
2人から追い詰められて、もはや言う以外に選択肢はないように思えた。
「はぁ、……分かった。その代わり、他の人には言わないでくれよ! 後、聞いてから変な目で見るとかもなしにしてくれ!」
「分かったわ」
「わかったよ」
「…………1000点だった。」
「え? 今なんて言ったの? 聞き間違い?」
「嘘! あなたは…………」
「嘘じゃないよ。点数は全10教科満点だったから」
「 勇斗君は初めて見た時からなんか凄いんだろうなぁ〜って思ってたんだけど、なんて言うか……予想以上だね!」
「まぁ、自慢じゃないけど中学の頃は勉強しかしてなかったからな」
「…………ひとつ聞いてもいいかしら?」
「何? 星ノ宮さん。」
「もしかしてだけど、中学二年生の時期から全国模試でずっと1位を取ってたりする?」
「えっ! どうしてそれを」
「やっぱり! あなたがあれの正体だったのね!」
え? どういうことだ? 話が全く呑み込めない。一体どういうことか?
「あなたのせいで私は……いつも2位だったのよ!」
「2位?」
「そうよ! 私は中学の頃から勉強だけは誰よりもできると思ってた。一年の頃は模試を受けたら、毎回1位だった。でも、2年生から受けた模試は…………全部2位だった!」
「えぇぇ!ってことは、中学の頃冴織がいつも言ってたのって、勇斗君の事だったんだ!」
「ええそうよ! また私はあなたに負けたのね」
「ちなみに沙織は何点だったのだったの?」
「…………982点よ」
「えぇー冴織も凄すぎ! どうやったらそんなにできるようになるの?」
「彼の点数を聞いてからだと、皮肉にしか聞こえないわ」
「もう! そんなつもりじゃないって!」
「おれもうかうかしてられないな~」
俺はなるべく笑みを崩さないように話していたが、
(あっぶねー! もし配点がでかい問題を間違えてたら最悪負けてたかもしれないじゃないか!)
全国模試2位、なるほど。これは本当に安心してられないぞ。
だが、そんなことよりも……
「………………」
「さっきからその無言で圧かけてくるのやめてよ!」
そう言いながらも、世間ってのは狭いんだな〜同じ高校に全国模試1位と2位が偶然集まるなんて! と思っていた。
「今回は負けたけど、次は絶対負けないわよ! 覚悟しておきなさい」
「……ああ」
すごい敵対心をむき出しにされているのが伝わってくる。当然と言えば当然なのかもしれない。2位っていうのは、本人からすれば相当不本意な結果だ。
お互い高めあえるライバルができたという点では嬉しい限りではある。正直朝のクラスの話を聞いていた時は、少し不安もあったが、いい意味で気が抜けなさそうだ。
◆
「ただいま〜」
「おかえりなさい勇斗」
「おかえり」
「それにしても、今日は早いんだね、父さん」
「ああ、いつもよりスムーズに仕事が進んだんだ。あと
「そうなんだ。良かったね」
「それより、どうだ? 、高校生活は? 楽しいか?」
「うん。結構楽しい。今日なんか特に面白くて、世間って狭いんだなぁーって思ったよ」
「そうか! まぁ楽しめてるんだったら何よりだ」
それから、久しぶりにテレビのワイドショーを一緒に見た。最近全然見てなかったので、少し新鮮な感じだ。番組に出ている芸能人も全然知らない人がたくさんいた。
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