第19話
ついに王都へ着き、王との対面の時が来た――。
「ただいま参りました!! ……勇者とその一向をこちらに!!」
王の前で
後ろにいた、碧もそれを見真似て膝を着く。
更にそれを見た、黄華が膝を着いた。
最終的に烈人は皆を見たのだが何故か
「なんでそーなるのよッ!! 皆と同じ格好しなさいッ!」
「うえッッ?」
碧による痛恨のツッコミが烈人に炸裂した……。
「遅ォォォいッッ!!」
目の前で玉座に座っていた、馬鹿でかい影が叫び出す。
「どれだけ待たせるんだアレックスよ!!」
どうやら噂の怖い王の怒号だったようだ……。
「うわ!! ……おッかねぇジイさんだな~……俺の親父に見た目も雰囲気もソックリだよ……いっつも大声で怒ってる姿はそのまんまだな!!」
その玉座の大きさが物語るくらい、体格も身長も普通の人間のサイズを越えている王だった。
「申し訳ありません『ウィルムス王』よ!! 実はここに来る途中――」
ここに到着するまでに起こった経緯を王に報告するアレックスだった。
――――。
「……なるほど、お前がルイーゼで出会った獣人と言うのがそこのヤツなのだな!」
「ハッ!! その通りです」
「……ふむ……まず、その獣人をこっちに……」
「ハッ!!」
アレックスと、周りにいた配下の騎士二人が手伝い、鉄格子の中にいた獣人を荷車ごと王の前に運んぶ。
「檻から出してここに置けぃッ!!」
ウィルムス王は自分の座っている玉座の足元を指指し、目の前までその獣人を運んでくるよう指示した。
「承知しましたッ!」
更にその檻を開け、アレックスと二人の騎士は獣人を運び、王の足元へと置いた。
「『シュナイデル』よッ!!」
「……ハッ! ……」
…………。
「えッッ!?」
ウィルムス王は『シュナイデル』という名を呼ぶと、アレックスと王との間に音もなく一人の男が出現する。
まるで最初からそこにいたかのような現れ方だったのだ……。
そしてその男は、金色の短髪でかなり重装な格好をしており、普通の剣より大きめな……おそらく大剣というモノを背に担いでいた。
……いきなり現れた謎の男に烈人、碧、黄華は驚きを隠せない様子だったが、アレックスは一人落ち着いた様子だったようだ。
そして――。
「あ……兄上……いえ、団長……」
アレックスはボソッと呟いた、その呟きを三人は聞き逃さなかったのだった。
「あ、兄上!?」
「えッ!? アレックスの……お兄さん!?」
「団長ってお兄さんだったの~!?」
三人が驚いたのも束の間だった。
「シュナイデルよッ!! この獣人を殺るのだッ!!」
「なッ!?」
「……承知……」
「ふんッッ!!」
「!!」
いきなり現れた、アレックスの兄であり団長というその男は……。
ウィルムス王の命で、自らが持つ大剣を軽々と使いこなし躊躇なく獣人の首と胴を両断したのだった。
そのあまりにも凄惨で急な出来事に、烈人達は言葉も出なかった……。
「何故ッ!!」
その沈黙を引き裂く様にアレックスは声を荒立てる。
「……王の御前だ……
団長シュナイデルはボソッと呟き、アレックスに向かって悲しい目を向ける。
「も……申し訳ありません……」
「アレックスよ!! 別に構わん!!」
「……して、この獣人は確か……リュカオンと言ったな!」
「儂も昔、戦いの中にいた……魔王がまだこの世に君臨してた時……まだ王子として一国の王となる為に、名に恥じぬよう戦果を挙げていた頃よ!!」
「……かの勇者の背を追ってな!!」
ウィルムス王はこの世界の勇者、ハジメの姿を思い出していた様子だ。
「その時コイツらの手によって血塗られ、死んでいった民の報いを……受けてもらったまでに過ぎぬ!!」
「……意識がない内に討ち取られ……痛みも苦痛も感じなかった事だけが情けと思えぃッ!!」
そう強く言い放つと、王はアレックスに質問する。
「アレックスよ……」
「こやつが意識を取り戻したとして、そもそもどうするつもりだったのだ?」
「どの道戦いは避けられぬ……」
一瞬だが、鬼の様な形相の王の顔が悲しい顔をした様に見える。
「……くッ……その通りでございます……」
…………。
重たい空気の中、耐えきれなくなった烈人が口を開いた。
「おいッ!! なんで捕まったヤツを殺す必要があったんだよジイさんッ!!」
「大体……この犬っころを生かしたのは俺だ! アレックスは何も悪い事をしちゃあいないッ!!」
「……俺の親父に似てるって言ったの取り消す!! こんなクソジジイ俺の親父に似てる訳がねぇッ!!」
「ムッ? ……お前達が過去にこの世を救った勇者の息子であるな!!」
「ああ!! どうやらそうみたいだけど、それがどうしたッ!!」
「ちょっと……烈人君ッ!!」
烈人の子供の様な文句ばかりにハラハラして、止めにかかろうとするアレックスだった。
しかし、ウィルムス王はそれで怒る事はなかったのだ。
「ふんッ……威勢のいい事よ……あの勇者と面影がソックリだ……」
…………。
烈人の顔をじっと見つめる王の顔はどこか穏やかな表情を見せる。
「……話は以上!! シュナイデル!! あとは頼んだ!」
「……は? ジイさん!! 話はまだ終わってねーだろ!!」
「……勇者のご子息よ……すまぬが王はこれ以上の面会は望まない……」
急に話の腰を折られ、烈人は更に頭に血が上るが、それに割って入る団長シュナイデルの姿があった。
「烈人君!!」
アレックスも烈人に声をかけると、目を閉じて首を横に振る。
もうやめた方がいい……と言うジェスチャーなのだろう。
「烈人……行こ」
「烈人くん……」
碧も黄華も烈人を心配して声をかける。
「ムカツクッ!!」
そう言った烈人は身体から炎が溢れる様に輝き出し、自らの拳を固い地面に叩きつける。
物凄い衝撃と共に地面には亀裂が生じ、ウィルムス王の足元で亀裂は止まった。
「ふんッ!! 皆行くぞッ!!」
「あ、烈人くん待ってよ~」
「し、失礼します」
烈人は先に早足で王の間から飛び出し、碧と黄華も王に一礼するとすぐに烈人を追いかけた。
「……何故?」
アレックスはウィルムス王に聞いたが……変わりに、団長であり兄のシュナイデルが応えたのだった。
「……頭の良いお前はいずれ理解する……はずだ……」
このシュナイデルの発言に何の意味があるか、アレックスは理解出来ないでいた。
「彼らを頼んだぞ……副団長……アレックスよ」
「は……はい!!」
そうして、アレックスは烈人達のあとを追ったのだった。
…………。
「王よ……これで良かったのですね?」
「ああ……これで良いのだ……これで……」
「そうであろう? ダルク……」
ウィルムス王は何か水晶の様なものに話しかけた。
…………。
『……ああ、すまねぇな……ウィル……損な役回りさせちまってな……』
―― とある洞窟内 ――
(……むッ? ……
「……もしや、勇者の息子達の仕業か!? ……ヒヒッ!」
「思ってた以上にやるではないかッ! これは急がねばなッッ!!」
「……ヒヒヒヒヒヒヒッッ!!」
ミカエラの不気味な笑いが洞窟内に響き渡ったのだった――。
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