第13話
烈人達三人とアレックスは馬車の中で静かに口を閉じ、町に着くのを待っていた。
誰も話そうという雰囲気ではなく……とにかく早く町に付いて欲しいと願うばかりの三人だった。
家族、親戚ならまだしも……見ず知らずの人の遺体と一緒にいるのは決して気分がいいものではなかった……。
しばらくして、馬を引いている騎士より声がかかる。
「皆様!! もう着きますよ!」
ようやく『ノーカ』の町並みが見えてきた所だった。
「なんだか静かな町だな……」
馬車から降りた烈人は、町の入り口に立ち……物音も人の声もない町の様子に違和感を覚えた。
「ええ……最初に私達がアレックスさんのいた町に着いた時は、お祭りのように賑やかだったわ……」
「なんだか僕、気味が悪いよ~……」
碧や黄華も烈人に続き、町の様子がおかしい気がしてならなかった。
「いや……これはあまりにも静かすぎる!! 確かにアルエイダよりも小さい町だが……人々も町もアルエイダと同じくらい賑わいを見せていたはず……一体何が!?」
「とりあえず、町を入ってすぐに教会があるから、先にこの村人の遺体をそこへ運ぶよ」
「君はこのまま馬車の所で待っていてくれ」
アレックスは馬車を引いてた部下の騎士にそう伝えると四人は町の中へと入っていく。
町の入り口から、すぐ左手に教会らしき建物が建っていた。
そのわずか十数メートルほどの距離しかないものの……その間には、人の気配も愚か、物音すらやはり聞こえなかったのである。
「失礼する!!」
そう言って教会の中へ村人の遺体を運んできた烈人達とアレックスだったが、その教会の中は神父の姿すらなかった。
「なぁ! ……全く人の気配を感じないんだけど……どういうことだ?」
「うむ……すまない……私もどうなっているのかさっぱり……」
「とりあえず遺体を一緒にここまで運んでもらえて助かったよ!」
「少し、町の人々を探してみてもいいかい……」
「ああ……早く王都にも向かわないといけないのだろうけど……目の前の問題を解決するのが俺たちヒーローの役目でもあるからねッ!!」
こうして三人はアレックスと共に教会から出た後、手分けして町の人々を探しにいったのだった。
――数分後――
「……何か見つかったかい?」
「いや……家の中ですら人っ子一人いなかったぞ……碧は?」
「はぁ……私の方も全然……あれ、黄華はどこまでいったのかしら……?」
「皆~!! ちょっとこっちこっち~!」
少し遠くの方で黄華の声が響く。
そこへ向かうと、町と森との丁度境界線上に立てられている、町を囲っていた木の柵の一部が破壊されているのを発見した黄華だった。
そしてその先を見ると、無数の足跡が地面に付いているのがわかったのである。
「この先にきっと何かあるのかも~」
「やったな! 黄華!」
「ん~、でも、先に行くのが怖いです~」
「ハハ! あとは私に任せてね!」
「お願いします~……」
「その前に、馬車の所にいる私の部下にこの事を伝えておくよ……この先何があるか分からないからね!」
そう言って自分の部下に伝え、戻ってくるとすぐ、アレックスと烈人は先陣を切って前に進んだ。
森の中を進んで行くと、木々が開かれた場所に出る。
そこには古い小屋が腐食して崩れているのを発見したのだった。
「うわ、見たところかなり古い小屋みたいだね」
「一体皆はどこに行っちゃったんだろ……」
烈人は、全く手がかりも掴めないままもどかしさを募らせるばかりでいた。
「ちょっと中に入ってみる?」
「何かしら手がかりが見つかればいいのだけど……」
そして、崩れかけた隙間から皆は中に入る。
「わぁ、今にも全壊しそうでおっかないよ~……」
「そうだね……これは……ひどい」
黄華もアレックスも恐る恐る中の様子を確認した。
「やはり何も手がかりは無しか……」
「皆! この小屋もいつまた崩れてしまうかわからないからこれ以上は危険だろう……ここは外に出て道の先を目指そ……」
アレックスはこの小屋の探索を諦めて、道の先を進もうと提案したその時だった……。
「……ちょっと待って!!」
「何か掴めそうなの!! 何かここの部屋の空間、違和感を感じるのよ……」
「碧ッ! なんだ違和感ッて!!」
「……」
いつもなら、ここで烈人に向かって「うるさい! 黙ってて!!」などと罵声を浴びせる碧なのだろうが……今は真剣にその謎を解く鍵を探していた。
「ハッ……クシュン!! ……んー、ホコリっぽくてやだな~……碧まだ~……?」
「!!」
「それよッ!!」
「わかったわ!! ……それはつまり……」
皆は「ゴクリ!」と唾を飲んだ!
「この古い小屋! 床が異様に綺麗なのッ!!」
「床~?」
「確かに綺麗だけど……それが何か手がかりに?」
「これほどの古い小屋に、床にホコリがないってことは、人がいたって事に繋がるわ!!」
「そして、あそこの床の一角……あの部分だけ床が他より壊れそうなほど古いと思わない?」
「ふむ……見てみよう!」
アレックスはその古い部分の床に触れると、驚いた様子で皆を呼んだ。
「むっ!! これは!」
「ちょっと来てくれ! ……どうやらこの床には偽装の魔法がかかってるようだ……」
「偽装解除の魔法をかけてみよう!!」
そう言ってアレックスは偽装解除に試みた。
すると、その古くてすぐに腐りそうな木の板がスゥッと透き通り、強化ガラス並みの固さを持つ透明な板へと変わっていったのだった。
透明なガラス板の下は暗く、階段状になっているのが見える。
「碧くん! 君の推理のお陰で先に進めそうだ! ありがとう!!」
「凄いね! 碧~!!」
「いえ、私なんてそんな……黄華のお陰でもあるわッ! 町での発見がここに導いてくれたんだもの!」
「それに……いえ、何でもないわ……先を急ぎましょう!」
(昔見たラノベの謎解きの箇所に似ているところがあった……なんて、言えないわね……)
「それじゃ、開けるよ……」
アレックスはこの小屋に不自然に置いてあったバールを使用して開ける。
そして三人は暗い階段の中を降りて行くのだった――。
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