第12話
馬車は大きく揺れて止まり、馬車を引いていた馬が大きく鳴き声を轟かせる。
うとうとしていた三人はその揺れで眠気も飛んでいってしまったのだった……。
「むっ!! 何があった!?」
馬車を引いていた騎士にアレックスは馬車から乗り出し聞いたのだった。
「副団長!! あれを!!」
騎士は前方を指差した。
皆の乗っている馬車からすぐ前方に、村人らしき者がうつ伏せで倒れている姿を発見したのだった。
遠目でもわかるくらい、背中にはパックリと裂けている傷と大量の血……。
アレックスは馬車から降り、烈人達も心配そうに顔を覗かせている。
「君たちはそこにいてくれ! 私が様子を見てくる!」
そう言って、アレックスは倒れている村人の方へ向かった。
「おい! 大丈夫か!?」
アレックスは声をかけるも、全く返事も反応も示さない村人だった。
そして、アレックスは村人の首元に触れ、脈を調べる動作を取った……。
そして、アレックスはその倒れてる村人に対して手を合わせる。
おそらくもう既に息絶えていたいたのだろう……。
その後、三人の元へ戻っていく。
「残念だが、あの村人は何かに襲われたようだ……」
「背には、大きく切り裂かれた跡があり、……恐らく、大量の出血による死だったのであろう……なんと可哀想に……」
「何だって!? 一体何に?」
烈人は抑えられず声を荒立てた。
「人間だとすれば盗賊の可能性もある……だが、傷跡からしてどうやら刃物ではない様子なのだ……」
「……そうなると魔物の可能性が高いということになるのだが……」
アレックスは顎に手を当て、何やら難しい事を考えている様子だった。
「どうした? アレックス!」
「おかしいのだ……」
「おかしいってどういうことですか~?」
「何か気になることでもあったのかしら……」
「……魔王亡き今……人と人同士の争いはあっても……人を襲うような魔物の出現は全く無いんだよ……」
「な、何だって!!」
「何か良からぬ事が起こってるのかもしれない……」
「……とにかく、あの村人の遺体をあのままにしておくのは心苦しい……皆!! 申し訳ないが弔わせてくれ!」
「ああ! ……俺がアレックスの立場でも同じことをしたと思う! 俺たちにも手伝わせてくれ!! いいよな? 皆!!」
「ええ! 当たり前じゃない!」
「僕も手伝うよ~!!」
「すまない!! 助かるよ……」
最初に、アレックスと騎士が馬車の中にあった荷物の中から様々な道具を入れるために使用していた大きめの麻袋だけを出す。
「このままだとあまりにも可哀想だ……せめてこの大きな傷痕を消そう……」
そう言うとアレックスは魔法をかけ遺体の傷はみるみるうちに塞がっていった。
「……す、凄いあんな大きな傷が全く消えてしまうなんて……
」
アレックスの治癒魔法であろう、亡くなったものにもこういった使い道があることに碧は驚いている様子だった。
まるでその遺体は安らかに寝ているような状態となったのだった。
そして傷の周りの血を拭き取り、ボロボロに割かれた服を着替えさせた遺体を麻袋に入れて縛った。
そして、烈人達にアレックスはこう告げる。
「王都への道を一旦外れるが、すぐ近くに『ノーカ』という小さい町がある!」
「その町に教会があるので、そこの神父に遺体を弔ってもらおうと思う!」
「……しばらくこの村人の遺体を馬車で共に運ぶが、一緒に馬車へ上げてもらえないか?」
「ああ! 任せとけ!」
そう言って、烈人と他の二人も一緒に村人の遺体を馬車の中へと運んだのだった。
そして村人を弔うため、一向は『ノーカ』を目指す。
『ノーカ』への道のりは誰しもが口を開く事なく、静かに過ぎていった――。
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