第11話

 食事を終えた三人は客間に戻り、碧は王都にいる王についてエリーゼに話を聞いていた――。


 「エリーゼさん、……王都の王様って一体どんな人なの?」

 「王……ですか? えぇ、そうねぇ……」

 「聞いてる話だと……怖いお方だと言う噂です……」

 「その昔……この国の王となられた時に、権力を振りかざしてる家臣たちをまとめて追放したと言うことがあったりだとか……他にも……」


 王について、知ってる限りを碧達に話すエリーゼ。


 「……話を聞く限りだと……かなり怖そうな王様ね」

 「え~……そんなの聞いちゃったら、僕……あんまり行きたくなくなっちゃったよ~」


 王がどんな人なのか想像し、ぞっとしてる碧と黄華だった。


 「それでも、私の旦那様も団長様もかなりお慕いしているから悪いお方ではないと思いますよ!」

 「へぇ~……一体どんな人なんだろ……」


 (……確かに、見た目はチャラそうなアレックスが副団長になっているあたり……ちゃんと中身で判断してるのかも……って奥さんに向かってこんなこと言えないわね……)


 碧は、自分の心の中を漏らすまいと口をつぐんだ……。


 そんな中、客間へとアレックスがやって来る。


 「失礼! 皆……そろそろ王都へ迎うのだけれど、準備はいいかい?」

 「おう! いつでも大丈夫だ!」

 

 烈人は親指を立てアレックスにサインをだし、他の二人もアレックスの言葉に首を縦に振った。


 「軍も町へ到着したとの報告もあったので、エリーゼもメイド達も、もし私の留守中危険が迫ったら軍の力を借りるように!! 」

 「はい! ご主人様」

 「ええ、……あなた!」

 「お互い無事にまたここで会えるように!!」


 アレックスとエリーゼは、お互いの手と手を取り合い、口づけを交わした……。


 「……うわぁ~……僕、こういうの初めて生で見た~」

 「目のやり場に困るわね……」

 「俺の親父と母ちゃんもよくチューしてたっけ!」

 「えッ!?」

 「げぇ~……自分の親のそんな姿、絶対見たくないわ……」


 碧のドン引きの視線が烈人に向けて注がれたのだった。


 ――アレックス邸、門の前にて――。


 軍の馬車に乗り込む烈人たち一向。


 見送ってくれているエリーゼとメイド達に手を振る三人だった。


 「あ~あ、ずっとアレックスさんのウチに居たかったね~」

 「黄華……、言いたい事はわかるけど、……完全にダメ人間になるわよ!」

 「ハハ! 私は別に構わないよ!」


 普通ならあり得ない事をさらっと了承しているアレックス……碧も黄華も決して冗談で言ってるわけではなさそうなアレックスを称えた。


 「アレックスさ~ん! あなたは神様ですか~!」

 「ハハハ! ……私の所もいいけど、君達なら自分の家を持つ方がいいと思うのだが……」

 「いや、アレックスさん! そんなお金私達にはありません! そもそもこの世界のお金なんて一切ないんですけどッ!」

 「君たちがお金を持ってなくとも、魔王倒した勇者の子とその仲間……としてなら、王に頼めばどうにかなるよ!! ハハハ!」

 「え~!? だってその王様って怖いんじゃ~……」

 「君たちの力を見せてあげれば! 何の問題もないさ!!」

 「も~、アレックスさん! 冗談キツイですよ!」

 「ハハ! 半分本気で半分冗談だが……今すぐにじゃなくても、君たちなら割と早く家を持つ事は出来そうだからね」

 「家かぁ、……欲しいな!! 自分の家ッ!! 王様に俺の力を見せてみればいいんだな! よっしゃー!」

 「れ……烈人!?」

 「烈人くん?」


 アレックスと碧は冗談話のつもりだったのだが、烈人だけは超本気だった――。


 ……話も一段落し、揺られる馬車の中、三人はうつらうつらとしていた。


 王都へは馬車で約3時間半ほどで到着すると聞いていた三人……只今約2時間くらいは走ったであろう王都への道すがら、馬車が急に止まってしまったのだった。

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