第7話
烈人たち三人はようやく町へ辿り着く所だった――。
「あれ!? あそこに見えるのは町かな~?」
「うん!! そうみたいだね!! さっき空から見た町並みもあんな感じだったかな!!」
「ふぅ……とりあえず何事もなく町に来れて良かったわ!!」
「ねぇ! 烈人!! さっき言った事覚えてる?」
「!! ……え!?」
「もぅ!! やっぱり忘れてたわね! ……スーツの事よ!!」
「あ!……ごめん……わかりました……」
「はぁ……しっかりしてよ!! ……その納豆臭い匂い、ちゃんと落としてきてよねッ!!」
「う……うん」
烈人はいたたまれない気持ちで肩を落とす。
その様子を見て黄華は碧に声をかけたのだった。
「ねぇ~……碧……あ! とりあえず僕も戦闘を終えたから、ブルーじゃなくて碧って呼ぶよ!」
「いちいち私に報告しなくてもいいわよッ! 好きに呼べばいいわ!」
「うん! あ、そうそう! そんなに烈人くんのこと虐めないであげてよ~……ほら! 町もすぐ目の前だから行こ~」
「わかったわよ! もぅ! 黄華は優しすぎるのよ!!」
「えへへ~……さあっ! 行くよ~!」
気まずい雰囲気に苦笑いしつつも、なんとか切り替えて先へ進もうという黄華であった。
そして、ようやく町の中へと進んで行く三人。
「うわぁ!! なんだか賑やかだね~!! なんか美味しい食べ物とかあるかな~!!」
「ちょっと黄華!! ……この国のお金も持ってないのにッ……どうするつもりよ、もうッ!!」
「アハハ~! 忘れてた~」
「あはははは!! 黄華は面白いね!」
町に着いたことにより心が緩む三人だったがすぐに驚く事となる。
「!!……って、えっ!! 大きいトカゲみたいなのが歩いてる……」
「ねぇ!! あっちは猫みたいな顔した人がいるよ~」
「……はは……こっちには羽の生えた鳥のような足をした女の人が……」
他にも見渡せば……小人や人型の動く岩……飛んでる者もいれば、スライム状のよくわからない者まで、様々な生き物が町を賑わせていた。
「ハハ……何かのお祭りかな……ハロウィン……ではないよね……時期が違うもの……」
この場所に飛ばされる前の世界では、まだ梅雨に入るぐらいであり、ハロウィンの時期ではなかったはずと首をかしげてそう言った烈人……。
「……まさか!?」
碧は何かに気付いた様子でこう話を続けた。
「もしかしたら……の話よ……」
「……うん!! 何か分かったの~」
「笑わずに聴いてね……」
「うんうん!!」
「約束よ!! ……絶対によッ!!」
「わかったから~!! 早く~」
碧は恥ずかしそうにして勿体降った。
そして、咳払いしてこう言ったのだった。
「ゴホン!! それじゃ言うわね!! ここは……」
…………。
「『異世界』じゃないかしら!!」
…………。
…………。
烈人と黄華はしばらくの間沈黙した……。
「……プッ!! キャハハハハ!!」
そしてその長い沈黙に、
「碧~、マジで面白いよ~!! も~、ズルいッ!!」
「笑わないでって……フラグ立てたな~、完璧にやられたよ~」
…………。
「……あれ? どうしたの碧?」
爆笑した黄華とは裏腹に、赤面し眉間にシワを寄せてワナワナとしている様子の碧だった。
「ッ……から、……だから、笑うなって言ったのに~!!」
「えぇ~!! 碧! ……それ、本気で言ってたの~!!」
「ちょっ……ごめん~、まさか碧からそんな言葉が出てくるとは思っても見なかったよ」
「……そっか……昔好きだったもんね、こういうの……僕、すっかり忘れてたよ」
「……もうッ!! 黄華なんて知らないッ!!」
ぷいッ!! ……っと外方向く碧、それはそうと烈人君のほうは……と言うと。
ポカーンと口を開け……二人のやり取りを見ているだけだった。
そしておもむろに口を開く。
「あの……二人とも……」
「『異世界』って何!?」
「!!」
「!!」
…………。
…………。
再び、先ほどとは様子の違った長い沈黙が三人の間に広がる……。
……しかし、あまりにも無知な烈人に対して……碧は怒るのすら馬鹿馬鹿しくなった様子でこう言った。
「はぁ……しょうがないわね烈人は……」
「異世界っていうのは……ん~説明すると……難しいわねぇ……」
「簡単に言うと、……私たちがいた世界とは異なる世界のことよ! そしてその世界はまるで……ゲームやラノベに出てくるような、私たちの見たことのない生物が存在するのッ!!」
「他にも魔法や特殊な技……スキルってのもあったり――」
いつもの碧とは違い、『異世界』について熱く語る碧は、とても楽しそうに目を輝かせていた。
碧は……先ほどまで怒っていた事すら忘れ、満足し、
「……っとまぁ、ざっとこんなところよッ!! わかったかしら」
「……え? ……う、……うん……」
(……碧が言ってること……全然分からなかったよ~……最初の、自分達とは異なる世界って所しか理解出来なかった……ラノベってそもそも何だろ?……)
烈人は全く理解出来ないでいた……。
「ごめん、烈人くん……」
「碧さ、小さい頃から勇者になりたい! って言ってた黒歴史があるの……だから、ゲームとか異世界モノの小説が好きで、話し出すと止まらないのよ……」
烈人にボソッと小声で耳打ちする黄華だった。
「そっか!! 勇者なら僕にもわかるよ!!」
(なるほど……碧は勇者になりたかったのか~!! ……そうか!! 勇者のような強くたくましい主人公に惹かれたから、きっとヒーローになったんだな~……俺と似たようなもんじゃないか~!!)
「……だから、碧はヒーローになったんだねッ!!」
「な……何よ!?」
「……んーん、何でもないよッ!! ははッ!」
碧との距離が少し縮んだかのように感じた烈人少年だった。
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