第6話
――場面は変わり、烈人達が町へ向かう前少し前……薄暗い洞窟内にて―― 。
ブラックホール状のモヤから黒いボロが現れる……。
「……む!? あやつらは……こちらの方には飛ばせなかったか……アチラの世界では魔力不足で不安定だったから仕方ないのぅ……ヒヒ……」
黒いボロはそう独り言を言うと不気味に微笑を浮かべる……そして両手を掲げ、自らの魔力を解放させた……。
「ヒヒヒッ……まぁいい……焦る必要もない……この世界には確実に来ているな……わずかばかりだがヤツらの力を感じるぞ……」
魔力で烈人達がこの世界にいることを確認したのであろう黒いボロは洞窟内の奥へと進む。
その洞窟の奥には魔力壁があり、誰も入れないようになってる様子だ。……黒いボロは手をかざして魔力壁を解除し、中へと進む。
その奥に辿り着くと、そこには黒く大きな棺があった……そして、それに向かって黒いボロはこう呟く……。
「あなた様の仇であるあやつとその息子を見つけ出しました……」
「……ついに!! 長年の怨みを晴らす時が来たのですじゃ!!」
「あやつの息子を殺すことで、絶望を与え……その上であやつに死の鉄槌を下す……」
「あなた様の野望は、この妾と息子が果たしてくれましょうぞ!!」
すると黒いボロから見て右側の壁の影より人影が現れ、黒いボロに向かって話し出す。
「……母者!! 声が聞こえると思ったら……戻っておられたのですか!?」
そう話した者は……まだ、年端もいかない幼い少年のような姿だった。
赤く、ルビーのような瞳……そして、白くて長く……まるでシルクのような綺麗な髪をし……その髪の毛の隙間からは鬼のような角が生えていた……。
「……して、我らの仇とやらはどうなったのですか?」
「あぁ……愛しい我が子よ……あやつらはこの世界のどこかに来ている……アチラの世界は魔素がほとんどなくてな……ここには転移出来なかったみたいなのじゃ……」
「……だがきっとすぐに相見えようぞ!! ……ヒヒッ! その時までそなたも力を蓄えておくがよい!」
「ハッ!! 承知しました」
「確実にヤツらの息の根を止める……」
「我が力も最大限に高めるため……今一層精進致しましょう!!」
「……では母者、今一度『異界の修羅城』にて修行を積んで参ります!!」
黒いボロの子はそう言うと、壁の中に消えるようにして姿を消した……。
「これからやることは沢山ある……先ずはヤツらの居場所を突き止めねばなぁ……それならば……」
黒いボロはなにやら呪文を唱え始めた。
すると、地面に魔方陣のようなものが現れ、その中から、異様な生物が出現したのだった。
顔は狼や犬のようであり、身体は人のような姿で二足歩行……毛は青と白が入り交じっていた。
獣人というのであろう、この人型狼は黒いボロに召還されたのだった。
そして人型の狼は黒いボロに尋ねる。
「これはお久しゅうございます!! 『ミカエラ』様!!」
黒いボロはミカエラと言うのだった。
「かの魔王様亡き今、どうしてこの私めの召還を!?」
「ヒヒッ……『リュカオン』よ……そなたはまだ知らなかったな……」
「魔王『サタニエル』があやつらに倒されてしまった後、運良く生き延びた妾は子を産んだのじゃ……」
「その子というのが私と魔王様の間の子でな……名は『デストラーダ』と言うのじゃ」
「なんと!! 魔王様の子ということであるか!!」
「そうじゃ、そして我が子に魔王様の悲願……この世に滅亡をもたらすべく、そなたにも力を貸してもらおうと思うてのぅ!!」
「……なるほど、そう言うことならば!! 私めの命に変えてでも!! その野望叶えましょう!! ……して、一体何をすれば!?」
「うむ、……この世界に妾たちの天敵の子を転移させてきたのじゃ……」
「天敵……と言うと!! もしやッ!! あの憎き勇者か!!」
リュカオンは何かを思い出したかのように怒りを
「あの勇者には忘れられぬ恨みがある……私の立派な尾を切られた恨みがッ!! あの時は私の未熟な力ゆえ相手にすらされなかった……」
「ヤツの圧倒的な力の前に何もできず……ヤツは私を逃がしおった……まさに屈辱!!」
当時の自分の弱さに嘆き、リュカオンは自らのお尻をさすっていた。
「あの勇者に一矢報いるため、その後も鍛えてきたその成果をあげる時が来たのであるな!」
「ヒヒ! ……残念じゃが、本人ではないが……あやつの息子であることに間違いはない……」
「あやつの息子を見つけ、そしてここに連れて来てもらいたいのじゃ……私の魔力では魔力探知は専門外でのぅ……いることはわかっても場所まで特定できぬから困ったものじゃ……」
「そこで!! お主の鼻と足が役に立つと思うたから召還したのじゃが……」
「なるほど……さすればそいつらを捕まえ、ここにとッ!! 了解した!! 死なない程度に痛め付けさせてもらうことを許して頂こう!!」
「ヒヒッ!……頼んだぞ」
「……そういえば……仲間も二人ほどいたが……あやつと似た格好をしていたようじゃから油断せぬようにな」
「承知!! それでは行って参る!!」
そう言うとリュカオンは物凄い勢いで駆けて行ったのだった――。
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