第4話
「なんか……ヤバいヤツかも!! 黄華と碧はここで自分の身を守ってて!!」
先ほどのクローンを倒した時とは打って変わり、その異様な雰囲気を肌で感じた烈人は余裕なさそうに二人にそう言うと、瞬時に姿を消した……。
「ッ――?? ……あ……あれッ?」
烈人は黒いボロの前に姿を表したのだが、風船が割れるような破裂音と共に弾かれてしまったのだった。
「……ヒヒヒ!! 先ほどのクローンヴィランのとやらが油断した攻撃と同じ手は食わぬ!!」
「お前の目では追えない尋常じゃないスピード……動かれる前に先手を打っておいたのじゃ!! お前たちの周辺をよぉく見てみぃ!!」
「
「魔法防御だって!?」
烈人は目を凝らすと黒いボロのすぐ前に、薄く空間に歪みのある壁を見た……、そしてその壁はなんと三人を丸々と囲んでいたのだった。
「まほ~!? 一体あいつは何を言ってるんだろ~……??」
「……まさかと思ったけど……この見たことのないこの壁らしきものは……魔法だって言うの!?」
碧と黄華は驚くばかりだった。
「ヒヒ……、この世界ではこれが限界みたいだね、やはり魔素のほとんどない世界では魔力量も劣る……か」
「しかし、今はこれで充分じゃ!!」
黒いボロは独り言を呟き、何か企んでいる様子だ。
「烈人ぉー!!」
どこからともなく、大声で叫ぶ声が聞こえる。声の先には烈人の父が立っていた。
「お前が心配で様子を見に来たが……これは一体!!」
「むっ!! アイツは!?」
「……なんだと!! ……まさか!! ヤツがこの世界にやって来たというのか!!」
「ん!? ……貴様!? ヒヒッ!! あの赤の者……あの時の戦いよりかなり小さくなったと思ったが……そう言うことか……」
「あやつは貴様の息子じゃな!?」
烈人の父と黒いボロはお互いのことを知っている様子だった。
「親父っ!? どうしてここに? それよりあの黒いヤツのこと知ってるの!?」
「……ああ、ちょっとな……」
「とにかく今の状況はマズイ!! 私が手を貸そう!!」
「ヒヒ……そうはさせぬ!!」
「
黒いボロはさらに何重にも魔法防御をヒーロー三人と自分、そして烈人の父にもかけた。
黒いボロの多重にかけた魔法防御は少しうっすらとして効果が薄くなっている様子だった……特に自分にかけた魔法防御は消えかかっていた。
「ヒヒヒッ、限界か……まぁいい!!」
黒のボロは両手を掲げると、小さい球体状の黒い物体が上空に現れ、瞬く間に大きく広がる。
それはまるですべてを飲み込むブラックホールのようだった……。
「ヒヒ……、安心しろ今はまだ時ではない、……じゃが、確実に……より苦しみを味あわせてやろう!!」
「妾たちの世界でな!! …ヒヒ……ヒヒヒヒヒ!!」
そう言って、黒いボロの放った黒いブラックホール状のモノは、烈人、碧、黄華の三人と魔法防御の周辺を空間ごと飲み込み始めた。
「烈人ッ!!」
「親父ぃー!!」
虚しく空に消えゆく叫び声……。
ブラックホールは烈人たちを飲み込むとすぐ消失した。一はガクっと膝を着き地面に己の拳を叩き付けた。
「クソッ!! 烈人をどこにやった!!」
「あの時……、確かにあの『災悪』と共にお前は消滅したはず……」
「ヒヒヒ……、お前に説明する必要などない!!」
「ただひとつ!! 『復讐』という執念がこの世界へと妾を呼び寄せたのじゃ!!」
「……ヒヒッ! 話は終わりじゃ!!」
「お前は自分の息子との別れを惜しむことなく、この世界で悲しみに暮れるがよい!!」
「もう二度と会うことのない悲しみになぁ……ヒヒッ!!」
「そして、……次こそ貴様の番じゃ!! ヒーヒヒヒッッッ!!」
「なんだと!? な!? ま……待て!!」
黒いボロはそう言うと、烈人の父に向かって不気味な笑みを浮かべ、自分の眼前にもブラックホールのような異空間を作り出しては自らその中へと入り……そして姿を消したのだった。
そして烈人の父を囲っていたバリアも消え、
解放された一だった……。
「……なんてことだ……」
「烈人たち……無事でいろよ……」
(もしヤツが言ってたことが本当なら、あの世界へ行ったのかもしれん)
(俺のように……無事に帰ってこれることを願うしか今は出来ないのか……くそったれ!!)
烈人の父は烈人たちの安否を心配し、無事を願って空を見上げた。そして、悔しそうに握りしめた拳から……血が滴り落ちるのだった。
―― 一方、烈人たちは ――
――――。
「……んん、……いたたた、あれ? ここはいったい!?」
「ん? なんだろ? この柔らかいの!!」
「キャッ!!」
「ッ――!! ……この、変態!! 切り刻まれたいらしいな!! うえっ!? なに? この納豆のような匂いわ!!」
「んー、納豆はあんまり好きじゃないですぅー……それより~甘いお菓子がいいです! ムニャムニャ……」
「ヒィィ!!」
「そんなことより、ここはどこ~!!」
異空間より放り出された烈人たちは、見たこともない場所へと辿り着いたのだった。
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