第2話
町中には銃撃のような破裂音と建物が崩れ落ちるような轟音が響き渡っていた。
そして、人の悲鳴のような叫び声も聞こえて来ていた……。
「あっちの方か!!」
烈人は電光石火の如く、ヴィランたちの暴れている場所へと急ぐ。
「あっ、そうだ! 親父から渡されたこのスーツ……ヴィランたちに出くわす前に急いで着ていかないと!!」
烈人はヴィランたちの元へ向かう途中、父から渡されたスーツを……誰もいなくなった町の中にある八百屋の中で着替えることにした。
「スミマセン! お邪魔します!」
誰もいないとはいえ、礼儀正しく挨拶する烈人。
「とりあえず先に飯食って……モグモグ……、……よし!! 着替えよッ!!」
烈人は先程父からもらったプロテインバーをを一気に口に押込み、そして着替えるのだった。
…………。
…………。
「……うッ!! ……ぐはッ!!」
「ッくっっせぇぇぇー!!」
……なんと……。
父のヒーロースーツは臭かった!!
……そう、例えるなら納豆のような……。
「マジで、臭い!! ヴィランたちと戦う前に、この匂いに殺される!!」
「何で渡された時に気づかなかったかな~……急いでたからしょうがないかもだけど……洗ってんのかなコレ……」
父への文句を垂れつつも、着替えを終えた烈人は八百屋を後にした。
それから間もなく烈人はヴィランたちが暴れている現場に到着する。
ふと見るとその目の前にはヴィランたちと戦う二人のヒーローの姿があったのだった。
一人は日本刀のような刀を構え……青色のスーツを纏い、細身のシルエットなのだが異様に胸が強調され、まるでスーツの方が苦しそうに見えてしまうのはなぜだろう……と、感じさせる少女……。
そして……もう一人は黄色のスーツを着た子供のような少女のヒーローだった。
まるで、このような危険な所にいるのは場違いとも言える。
ただ、それでもおかしな光景なのだが……さらに異様だったのが、その小さな背にはハードシェルのバックパックに可愛らしい黄色のテディベアのイラストが施されていた。きっと何かのキャラクターなのであろう、哀愁が漂っていた……。
更には自分より大きいのではないかという程のロケットランチャーを左手に! 右手にはガトリングガンを担いで武装していたのだった。
数はざっと20体近くのヴィランがこの二人のヒーローを取り囲んでいる。
……そして、一斉に襲いかかったと思いきや次の瞬間、青色スーツのヒーロー少女が刀を抜いたと同時に白い閃光が走り……一瞬にして弾け飛ばされていくヴィランたち。
そして、その弾け飛んでいったヴィランに追い討ちをかけるべく、黄色スーツの子供ヒーローは玩具で遊ぶように、ロケットランチャーとガトリングガンで無双したのである。
「うわぁ!! スッゲェー!!」
烈人は小さな子供のように目を輝かせた。
まるでその二人とヴィランの戦いが……幼い頃に見た、父がヒーローとして活躍していた頃を思い出させるようだったのだ。
「ブルー!! そっちいったよ~~!!」
「了解!! 任せて!!」
この二人のヒーローの活躍であっという間に何十体ものヴィランは殲滅させられていく。
まさにこの二人の息はピッタリだった。
…………。
ついつい烈人は二人の圧倒的な戦力に魅入ってしまっていた。
(……ん~と、とりあえず二人になんて声をかけようか……あ……、そうだ!!)
「あのー!! すみませ~ん!! 俺もヒーローなんで手伝いますよー!!」
少し離れた所から烈人は二人に大声そう言った。
そして、二人のヒーロー近付こうとしたのだが……その時、……青色のヒーローから思いがけない言葉を浴びせられることとなる。
「ここは私とイエローの二人で充分よ!! あなたも、……足手まといになる前にシェルターに逃げなさい!!」
「他のヒーロー達も数人来たけど、あなたと同じように言って避難してもらったわ!!」
「まぁ、あなたも逃げてる最中に、周りに逃げ遅れた人達を助けられれば充分な働きなんじゃないかしら!?」
いちいち
「ごめーん、彼女……本当はいい子なんだけど、口が悪くてー!! 気にしないでねー!!」
黄色の子供ヒーローはそう大声で申し訳なさそうに言うと、烈人に手を大きく振ったのだった。
「はぁ、……やっとヒーローとして活躍出来ると思ったのに……出番なし……かぁ」
烈人はガクッと肩を落とし、青いスーツを来たヒーローの言う通り、この場から去ろうとしたが、少し考えて立ち止まる。
(……待てよ……とりあえず二人の様子でも見てようかな……もしかしたら今後ヴィランと戦うことになるかもしれないだろうし!! この戦いを参考にしよう!!)
烈人はそう思い直して、二人のヒーローが戦ってる場所から少し離れた瓦礫の中に身を隠し、戦いの様子を見ることにしたのだった――。
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