うちの旦那は声優である。
笹原絢斗
第1話 斎藤夫婦編 番外編その1
私は斎藤詩乃。小説家である。
「橘綴(たちばなつづる)」というペンネームで活動している。
ペンネームの由来は橘は旧姓で、綴はまあ…察しのつく人もいるだろうが、物語を綴る、という理由で私の担当者の後藤君と決めた。
今私は「ハナガタリ」という作品を執筆中で、毎日どういう風に物語を進めていこうかPCで打ち込んでみて、文章を打っては削除しての繰り返しで、しっくりくる文章が出るまで自分自身とPCと日々にらめっこしている。
そして、休憩がてらにブラックコーヒー一杯と声優雑誌「Voice Lovers」を読むのが
至福の時である。
この表紙を独占しているこの男性は人気声優斎藤悠樹。私の夫である。
爽やかで特徴的な少年ボイスに定評のある彼は、今や様々なアニメの主人公に抜擢されている期待の声優である。
仕事でもプライベートでもその場を盛り上げてくれるムードメーカーで、表裏のないキャラクターがファンや業界の先輩から後輩にまで愛されている。
アニメのイベントなどで彼はツッコミ担当らしいが、徐々に先輩や後輩の声優さんからいじられる側になり結果しゃぶられまくって吐き捨てられるという完全に出来たお笑いに終わる。
自宅での悠樹はツンデレで、たまに何が言いたいのか、何を考えているのかさっぱり分からない時があるが私にとっては可愛いものでしかないし作品を書くのに参考になる人材だ。
私たちが付き合って、結婚したという事は世間には知らせていないが、やはり人気声優斎藤悠樹の結婚報道でファンの間ではかなり騒がれたようだ。
最近は声優の影響力は益々凄まじいものになっているが、ここまで大きな事態になるとは………。
本当に私がこの人気声優と結婚してるのかと、夢なんじゃないか、と何度も思う。
でもそれだけ彼は人々に愛されている存在なんだなと思うと、とても嬉しいし誇らしく思う。
(これからも、悠樹の活躍を応援してもらえるといいなぁ……。)
ちなみに、私たちの関係は仕事のそれぞれの業界では知られている。
だからこそ、業界関係者からはそこの話題について根掘り葉掘り聞かれるらしい。
私は物語を執筆するのが仕事で、一人での作業がほとんどのため、誰かと会うというと後藤君か親友くらいで話す機会はそこまでないが、悠樹の方ではかなり話題に挙げられるらしい。
特にアニメやゲーム、ラジオなどのイベントの仕事でそういった話題を出されると冷や汗をかきながら目をキョキョロさせ動揺している姿がもう可愛い過ぎる。
(はあー…………なんだこの可愛い生き物は。天使かよ…………。)
こんなこととてもじゃないが悠樹の前では言えるわけがないし、悠樹以上にアニメオタクで大量のグッズまで収集しているとバレると重い女だと思われるに決まってる。見せられたもんじゃない。
それに、現に今私はベラベラと悠樹について語っているが、これはすべて心の中で喋っているのである。つまり、人前では声を出してほとんど喋らないという事である。無愛想だし、顔から感情も読みずらいだろうし。
長年重度のコミュ障&口下手に人見知りが患ったせいか、自分の気持ちを口にして伝えるというのが中々大変なのである。
それは夫の悠樹にさえである。滅茶苦茶緊張するのである。
(いい歳して、結婚までしたっていうのに、私は全然だめだなぁ)
自分が恥ずかしい。
私なんか選んで良かったのだろうか。
心の中で感情を爆発させ、自分自身と葛藤する人気小説家橘綴こと斎藤詩乃であった。
ーーーーーこれは声優の旦那とその嫁により繰り広げられる凸凹ラブコメディである。ーーーーー
登場人物
斎藤詩乃
性別 女性
年齢 25歳
誕生日 4月4日
身長 158㎝
職業 小説家(主にファンタジー系)
配偶者 斎藤悠樹
うちの旦那は声優である。 笹原絢斗 @gannko
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