その頃の御影03~模擬戦:御影対二ャルコ02~


「にゃぁぁぁ!!」


 両手を地面につけ四足歩行になり、ニャルコは雄叫びをあげる。


 無色から金色の気に変わり、上の扉付近に移動した御影にも音と気の振動が伝わってきた。


 ニャルコの体は雷獣の様に全身が、まるで重力に逆らっているかのように逆立ち、角膜は黒炎色で瞳孔は紅蓮に染まっている。


 カティナのバーサーカーモードみたいな感じか。


 カティナの姿を見て、御影は冷静に判断する。


 何を見せてくれるか、御影は楽しみだった。


 桜花学園で今まで対戦してきた学園生は、正直物足りなかった。


 一年Sクラスのカティナや雫、豪。玲奈は戦っていないが、見た感じドングリの背比べだ。この世界で、戦って強いと認めた者は舞先生しかおらず、育てるのもいいが、御影は強者と戦いたい気持ちもある。


 あまり緩い戦闘に馴れてしまうと、ぎりぎりの戦闘で勘が働かないからだ。


 しかし、御影は出方を窺うだけで、気も魔法も準備していない。ニャルコは下の扉付近にいるし、どうあってもニャルコの攻撃に対処できると思っているからだ。


 それこそが油断。


 反射的に、御影は左の扉付近に飛ぶ。


 ニャルコが下の扉付近にいるのは見えている。


 しかし御影の勘が警報を鳴らし、それに従った。


 残像か。


 御影のいた場所が空気の振動で歪む。


 レータ×9。


 御影は脳内で発し、四つ装着している重力倍加の魔道具を解除し闘気を纏う。


 生身では危険だと判断したからだ。


 当たれば、骨を折る所ではなく周囲が抉れる。カティナの使っていた技の比じゃなかった。


 まさしく電光石火の動き。


「にっにっにっゃぁぁぁ」


「くっ」


 着地前に、ニャルコのスピードと体重の乗ったキックを御影は両腕をクロスさせ受け止めたが。衝撃をころしきれず扉付近の床に激突する。


「ミャーーー」


 追撃しようとするニャルコを蹴りで牽制し、起きあがる。


 なかなかやるな。


 ニャルコの戦闘能力を上方修正する。


 しかし、弱点はカティナの技と同じだとも、御影はすぐに分かった。


 ニャルコは正気を失っていて、攻撃が単調だ。不規則に動いていたのが直線になったぐらいに。


 最初は驚いたが、同じ土俵に立てば負けることはない。


 ニャルコに合わせて、御影も魔法と闘気を調整して速度を増す。


 御影にはまだまだ余力はあった。


 ニャルコの攻撃を目で追い、いなし、かわす。


 クラブメンバーと闘っているのと同じスタイル。

 

 もう、御影はニャルコの実力を把握した。


「ニャー」


 ニャルコは壁を使って攪乱し背後から御影の首を狙ったひっかき攻撃を狙った。


「アクセルキック」


 その攻撃が届く前にニャルコの腹に御影の回し蹴りがめり込む。


「ギャー」


 ニャルコは吹っ飛び、階段部分に激突して血反吐を吐く。


 これで終わりか、それともニャルコの気と魔力が全部無くなるのを待つ事になるか。


 もちろん御影は終わった後ニャルコの治療をするつもりだ。気を失っているときにこっそりと。


 御影は緊張を緩ませた・・・・・・それこそがニャルコの狙い。


 ニャルコは完全には本能を失っていない。闘争本能はあがるが、三十分ほどは制御ができる。最も戦闘に関する脳だけで、理性のブレーキは壊れていて刹那的だが。まだ、あの技は制御ができなく、直線にしか動けない。


 それでも、速度で一瞬にして勝てるとニャルコは思っていたが、勝てないことはすぐに分かった。


 最初の攻撃でしとめていれば勝てたかもしれないが、今更いっても仕方がないとニャルコはすぐに切り替えた。


 御影には隙がない。


 どれだけ速く鋭くなっても対応し、まるで師匠とやっている気分にニャルコはなる。


 だから、ニャルコは隙を窺っていた。ニャルコの必殺技を御影に食らわせ、一矢報いるために。


 ニャルコが階段に激突したとき、御影がふっと気を緩めた。


 いまにゃー。ニャルコは階段を蹴る。


「ニャルコ・ザ・アルマゲドンニャァァァァ」


 それは隕石が衝突してくる様に御影は幻視する。


 それほどまでに、巨大な感覚だ。

 

 その感覚が御影の防衛本能が反応する。


 逃げる技、防御する技、相殺する技。いくつもの選択肢は御影にはあったが、不意の隙をつかれ、選択を見過る。


「イフリートの拳」


 御影の頭上から炎の化身の一部分。その拳が振り下ろされた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る