その頃の御影04~御影の作戦~


「にゃー、もうひどい目にあったにゃー」


 ニャルコはプンスカ怒りながら、尻尾を扇風機のように回し、詫びで出された好物の干物を食べる。


「悪かったな」


 御影は素直に謝罪する。いくら油断していたとはいえ、模擬戦であの選択肢はないなと。


 それだけ平和ぼけしていたのだと素直に御影は反省する。


「そうにゃー、おかげでにゃーの自慢の毛並みが真っ黒焦げになったにゃー」




 ニャルコは必殺技は気と魔法で高めた、大砲並の破壊力だったのに対し、御影のは本物の隕石が衝突してきた並の破壊力。


 どっちが勝ったのは比べるまでもない。

 衝突した後の膠着はなく、業火の巨大な拳は、あっという間にニャルコの拳をはじき、ニャルコは地獄の業火に焼かれ、存在そのものが塵とかす・・・・・・事はなく、御影が瞬時にニャルコに対し癒魔法と風魔法で相殺したが、毛並はボワボワになった。


 その後、水魔法と魔道具を駆使し何とか元の状態に戻ったが、ニャルコの機嫌は戻らないままだ。


「お詫びに勝ったらあげると約束した干物をやっただろ、それにそっちも殺す気できただろ。お互い様だと思うが」


「にゃーはレディーにゃー、乙女にはもっと優しくするにゃー」


 ニャルコは抗議するが、何処にそんな要素があるのかと御影は疑問に思うが話が進まないので、とりあえず頷くことにした。


 全部食べ終わったら、ニャルコは機嫌を治した。


「にゃー、それにしても御影強いにゃー、これほど完敗したの師匠以来にゃー」


「ニャルコも十分強かったぞ。少なくともうちの学園の一年生の誰よりもな」


「うにゃー、御影に言われると嫌味にしか聞こえないにゃー」


 まんざらでもなかったのか、ニャルコの尻尾が軽く揺れる。


「これからの事についてだが、ニャルコはどのぐらいまで耐えられる」


「にゃーあまり考えたくないにゃー」


 ニャルコは夢から現実に戻ったかのように、尻尾が垂れる。


「むにゃー、水や食料がなくても、あらゆる手段を使えば五日ぐらいはいきられるにゃー」


 そこで、ニャルコから期待する視線を向けられたが、御影は気づかない振りをする。


「つれないにゃー、御影が一日早くきたから御影基準の日数でいうと六日目にゃー、熱いのは耐えられるけど、寒いのは凍死するにゃー・・・・・・御影に良い魔道具があったら別だけどにゃー」


 ニャルコは獲物を逃がさないとばかりにストレートに自分の要求をいう。


 やはりまずかったか。


 御影は模擬戦での失敗を悔やむ。


 魔道具は極力見せたくないし、使いたくないからだ。例え離れた国だったとしても。


 その点では、御影はニャルコに対しいくつも失敗をおかしている。


 亜空庫の魔法を見せたのはいい。空間系魔法で、この世界にもあるからだ。


 しかし、イフリートの拳と癒魔法に魔道具を見せたのはやばい。


 魔道具は最悪見せても仕方ないと思っていた。この段階ではまだ使わない判断だったが、作戦が失敗したら、この先使う場面もあるし、使わないとニャルコは死ぬと思っていた。


 癒魔法はこの世界にないものだと舞先生に教えてもらい、クラブの面々には口止めと魔法契約書にサインしてもらっていた。


 最も、どこかしら他の者にばれているとは思うが、舞先生が睨みを利かせているため、何か言われたことはない。


 イフリートの拳は、召還系攻撃魔法で、魔力を媒介にしてイフリートの一部を召還する魔法。


 通称『神降ろし』ともいわれている。


 いわゆる戦略級魔法で、ステージにない魔法。癒魔法同様完全にアウトだ。



「いっとくが、癒魔法と最後の俺の攻撃は秘密だ」


「分かってるにゃー、にゃーと御影は一蓮托生だにゃー」


 ニャルコは能天気に頷く。


 ほんとに分かっているんだかと、御影は心配になるが、ひとまず置いておく。


「次の作戦で駄目だったら使うと思うが、四日目までに次の作戦を行う」


 気と魔力がなくなる前、御影はある作戦をやろうと思った。



 自分一人の時でもやったが、全力ではない。何かあったときのために余力は残していた。今度は全力でやろうと御影は思う。手持ちの一転必中の中で最強の攻撃を。


 御影が、模擬戦を行ったのもこのためだ。二人同時に攻撃するために。代償は余りに高かったが。


「んにゃー、どうするにゃー、救助を待つ以外どうもできないと思うけどにゃー」


 ぴんときてないのか、ニャルコは招き猫の様に頭をかく。


「どうしようもないばかばかしい計画だが、俺とニャルコで扉を破壊しよう」


 御影の計画、それはキューブの扉の破壊だった。

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