その頃の御影02~模擬戦:御影対二ャルコ01~
~三日目~
「うにゃー、だるくなってきたにゃー」
御影がダンジョンに入ってから三日が経過した。
魔力と気が四十パーセントに低下し、ニャルコは気怠げにごろごろする。
それを見ながら御影は考えていた。
ニャルコから獣森国のことや戦闘スタイル、世間話等々、いろいろお互い意見交換した。
獣森国は、本や舞先生に聞いていたとおり、亜人至上主義で、こことは逆に人間が差別と対象となっている。
差別の度合いはここよりもいくらかましで、先祖や家族、知人が他の国に行って酷いことをされた亜人は憎悪しているが、国民の二割ほどは比較的友好的だ。ちなみに桜花国は五パーセントしか亜人に対し友好的な人間はいないとされている。
ニャルコが通う獣王学園は獣森国最大の学園で、生徒の人数はなんと、御影が通う桜花学園よりも多い。
ニャルコは御影と同じく、戦闘科で一年S組。戦闘スタイルは、身体能力を生かした格闘戦。S組の中でも五本の指に入るらしい。
この前、誰かに嵌めれたといっていたが、よくよく聞いてみると、好物につられ気付いたら転移陣の前だったらしい。
だから、嵌めた人間が何人いるか、誰がいつどういう理由でやったのかも分からないが、野生の勘でだいたい分かっているらしい。
そんなことを胸を張ってニャルコは言い、御影は残念な者を見るような表情で思った。
頭脳では期待しないでおこうと。
御影から見てもニャルコの身体能力はかなりの水準だが、手合わせをしない事には、正確な実力が分からない。
御影は四日目までにやりたい作戦があり、そのためにはニャルコの実力を知りたかった。
さっき問題を解答したため、時間的にも余裕がある。
「ニャルコ、暇だから模擬戦をやらないか」
「にゃー、疲れるからいやにゃー」
ニャルコは尻尾をふりふりして丸くなる体制だ。
仕方ないな。昨日ニャルコの好物を聞き、御影が密かに保管しておいた。
「勝ったらこれをやろう」
ニャルコの目線に合わせ亜空庫から取り出す。
「にゃー、それはにゃーの好きな魚の干物にゃー」
目をハートマークにさせ、ニャルコは俊敏な動きで奪い取ろうとしたが、御影はひょいと避け、亜空庫に仕舞う。
「これは勝ったらだ、受けてくれるか」
「仕方ないにゃー、後悔しても知らないにゃー」
結局、御影の思惑通り模擬戦を行うこととなった。
ウォーミングアップを行った後二人は左右の扉付近にそれぞれ立つ。
「合図はどうするにゃー」
「好きに来い」
御影は構える。槍ではなくニャルコと同じ拳だが。
「一瞬で終わらせるにゃ」
次の瞬間ニャルコは消えた。御影の目から見ても、ぎりぎりで見えるくらい。
上か。
ニャルコの振り下ろしてきた足を両拳のクロスさせるようにしてガードする。
威力もなかなかだな。
「にゃふ、なかなかやるにゃー」
ニャルコは縦横無尽に攻撃を仕掛ける。
トリッーキに、あるいは本能のままに、御影の予想外のところから攻撃をしてきたり、型というものはなく猫そのものの様に自由奔放だ。
だからこそ、どこに攻撃を仕掛けてくるのかよみににくい。
今の所、プゥと美夜を足して2でかけたぐらいの実力。
しっぽを巧みに使い、サマーソルトをしてきたかと思えば、御影の足に尻尾で巻き付き、逆回転でかかと落としをしてきたり、御影がパンチをくり出したら、その上に乗り顔面めがけ蹴りを見舞ってきたり。
間接の稼動域もすごく、片足をついた状態で一回転し、股割りもでき、両手を組んで縄跳びもできる。
攻撃の威力は制限された状態で、カティナクラス。一発一発が岩を砕く位で、驚く事に、まだまだ余裕で、底が見えないように御影は思った。
いけないにゃいけないにゃ。
ニャルコはじっと耐えていた。
最初はすぐに終わると思っていた。別に侮っていたわけではない。獣王学園と桜花学園とでは実力に差があり、十二月に行われる年末のビックイベント、日本冒険者大会学園の部でも、総合はおろか全ての順位で十年連続獣王学園より下だ。
さらに御影は一年Gクラスなので楽勝だと。
こんなに楽しいの久し振りだにゃ。
加減はしているとはいえ、図体に見合わず俊敏な動きで、ニャルコの攻撃を避けたり受け止めていた。
ニャルコと同程度の実力の者や上の者はニャルコと戦いたがらない。
それはニャルコの性質にある。
もう我慢できないにゃ
ニャルコの全身の毛が逆立っている。
「にゃー、これから全力で殺るけどかわまないかにゃー」
「いつでも来い」
それが見たかったといわんばかりに、御影は言い、ニャルコは狂ったように笑い開放する。
そう、ニャルコは戦闘で楽しくなると、ストッパーが聞かず、見境がなくなり全力を出すのだ。
たとえ相手を殺す攻撃でも。
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