衝突、御影対雫02
この学園は第三十席まで存在し、上位十五席が学園の自治を任される。
慣例として、各学科のトップ(指揮科は二人)部活連と風紀委員から一人生徒会から三人選出される他、残りは十七人のトーナメントで選出される。
現在、学年の割合は上位十五席中三年が八人、二年が四人一年が三人。
十六席~三十席は五代派閥から各一名必ず入り、上位派閥から五名、派閥関係なしに五名選出される。
つまりいくら強くても、第三十席内には入れるが十五席内は狭き門ということだ。
ちなみに玲奈が入れたのは学園長派と貴族派の推薦で、残り五名の最後の一枠に選出された。
雫の実力は玲奈と同等だ。
藤島家同様、二階堂家も名門だ。クラブ派の重鎮で、分家からも代々優秀な人材を輩出してきた。長女も、学園在籍時は三年の時、生徒会会長になり序列第一席に選ばれた。
次女である雫もそれを期待され、クラブ派の後押しで玲奈と同じく選出された。
つまりはそういうことだ、派閥関係なしで五人決めるというルールも結局は五代派閥からとなり残り十五席も大体が五代派閥か上位派閥だ。
だから指名して勝ったらその人の序列に入れる下克上ルールもあってないようなものだ。
雫が玲奈より序列が高いのは、玲奈が、本来農業科のトップが入る末席を固辞したためだ。
雫の宣言に、御影は興味深げに雫を見る。
この前のダンジョンと今戦った中で雫の評価は、カティナや美夜と同程度で、玲奈よりも優れているとは思えなかった。
ということは、まだ奥の手を隠し持っていると。
ゆったりとした姿勢で、中指をくいくいさせ、御影は雫の出方を窺う。
おまえの全てを見せろといわんばかりに。
「あらあら、そのなめ腐った態度でいられるのも今のうちですよ・・・・・・豚の挽く肉みたいにしてさしあげます・・・・・・血で染めろ。ブラッディ・サイクロン」
雫の策はまだ終わってなかった。御影の傍で壊された扇子の破片たち、そして御影の周囲を格子状のピアノ線まで強度を増した魔力糸で覆った。
散らばった扇子が台風のように舞う。
刃のついた粉々になった扇子達が御影を血で染め上げる。
風が赤に変色し中の状態は見れないが、朱色が徐々にドス黒くなっていく。
勝ちました・・・・・・。
少なくとも致命傷を負わせたと確信した雫は、念のため指を浅く切り、気配を確認したが、御影の気はあそこに留まったままで、雫は一つ息を吐く。
この技は、格子状の魔力糸、ステージ二第四級の風魔法『サイクロン』、粉々になった扇子を気で覆い、殺傷能力を高くした。
放出系の気は、自身を強化するのに比べ、距離によって違うが三倍ほど魔力を必要とされ、さっきまでの攻撃で雫の七割ほど、魔力と気を消費した。
雫も疲労は隠せず肩で息をしていた。
そして風は晴れ、そこに御影はいなかった。
狐目だった目の瞳孔が開き、あたりを探す。
いません、どこでしょう。
気配を探ってもいなく。じりじりと後退し倉庫の扉を背に注意深く見渡す。
御影さんは致命傷を負ったはず、どこにも行けないはずです。
わからない。雫は追いつめられたように呼吸は苦しくなり、眉間に皺をよせる。
まばらにある街灯と夜空の星以外明かりのない漆黒ではないが薄暗闇。
極度の緊張の中暗闇にいるだけでストレスが増す。
暗闇は人の根源的恐怖の象徴で子供時代親に叱られ、狭い暗闇に閉じこめられたりしたように不安を煽る。
はぁはぁはぁ。
雫の息はあがっており、過呼吸気味だ。
お姉ちゃんが守らないと。
雫がいつも大事にしまっている思いでの記憶
あれは四歳の頃だっただろうか、当時、長女に憧れ親に頼んで修行を始めたばっかりの頃。
まだ本格的な訓練はさせてもらえず、長女の訓練を見てた時、風花が影からこそこそ見ていた。
目をまん丸にして瞳をきらきらさせ、まるでお伽話の勇者でも見ているかのように。
そんな風花を見ていると強烈にある感情が浮かんできた。
私もそういう風に見られたい。風チャンの勇者になりたい。
だから『若干』過保護かもしれないが、あらゆる事から風花を守ってきた。一年遅れても同学年で入学した。コネを総動員しHクラスに風花をいれ、クラスメイトと『話し合い』をしていじめもなく、派閥の争いにも巻き込まれず『平和』な学年生活を過ごしてもらうはずだった。
0クラスと関わるのは好ましくないと注意したが、それはまぁ可愛い反発だと思っていた。
その事で少し疎遠になってしまったが、時期分かってくれて仲直りできるだろうと、それに0クラスにはボブじいさんもいるし滅多なことは起こらないだろうと影から見守っていた。
そこにイレギュラーが入学してきた。御影友道、経歴不明の男。定例会議でも、五代派閥会議でも話題にあがった男。
0クラスの小屋を破壊し、ボブじいさんを『殺し』学園長派を罠にはめ、癒杉舞の信頼も厚い。
どこも欲しがり、どこも危険子し、どこも恐れていた。
御影は毒薬だ。良くも悪くも周りを巻き込み破壊する。
雫はそんな危険なトラブルメイカー男に積極的に関わりたくなかった・・・・・・風花が御影の仲間にならなければ。
何度も何度も真摯に説明した。
今までなら風花がおれて聞き分けてもらえた。
しかし今回ばかりは聞き入れられず、仕方なく姉に無理言って今回の作戦になった。
姉に言われたことは一つ。
やるからには絶対に成功させろ、失敗は死を意味する・・・・・・と。
だから・・・・・・。
雫はある一つの決意をする。
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