玲奈のパーティーとダンジョン探索02~ 技ダンジョン・レベル三十・洞窟型~
御影もここの罠は分かっていた。
まず、攻撃用トラップが六つ。
それぞれ毒矢、火矢、地面から毒槍が二カ所づつ。
モンスターを呼び寄せるサイレン。毒霧、落とし穴が四カ所、天井落下トラップが四カ所。
攻撃用トラップは問題ない。
矢はよければいいし、槍は玲奈達がいる場所にはない。
モンスターがきても対処できる。問題は後の三つ、毒霧は運悪く玲奈達の近くだ。
見た限り、誰も聖魔法は覚えてなさそうだ。
感知した感じだと致死性の毒ではなく、せいぜい痺れるか熱を出すかだ。
やはり玲奈を狙っていたか。
そう、輝明は口説いているように見えて、どこで殺すタイミングを計っていた。直接攻撃は今までの戦いを見て高確率で失敗すると判断し、自分の得意分野、罠が多いポイントでしとめることにしたのだ。
玲奈の位置に落とし穴と天井落下トラップが密集していて、どこに逃げても罠に当たる。
御影の足や、通常時のプゥの足なら逃れられたが、不意のことだ、必ずどれかの罠に当たるだろうと御影は確信する。
穴は何処かの高レベルダンジョンと繋がっていて、技ダンジョンとは限らず完全にランダムだ。
続いて天井落下だが、今の状態の玲奈だと文字通りペチャンコになる。
いわゆる完全に詰みの状態だ・・・・・・普通ならだ。
しゃあないか。
「リバース」
御影は地面に手を当て唱える。
時空間魔法リバース。時と空間の複合魔法で、指定した空間を元に戻す。
発動した罠が巻き戻るかのように元の位置に戻り。
ジャンプし穴を見て焦った顔の玲奈も、矢を弾いたカティナと雫も、なにもできず呆然としていた連太郎も御影を見た。
「契約分の仕事は果たした。さっさと三十階に行くぞ」
語る気のない御影は、『解除した罠』の中さっさと階段に向かって歩く。
次に目を向けられたのはカティナだ。
「そっそんな目すんなって、私も師匠のこと全部知っているわけじゃねーんだから。この場はさすが師匠でいいんじゃないか」
ばつが悪くなったのか、カティナも慌てて御影の後を追う。
「あらあら、私もお先に行きますね」
次に、雫が先に行き。
「連太郎さん、あの魔法何か分かりますか?」
玲奈は連太郎に問いかける。
「僕も分からないよ玲ちゃん。多分複合魔法じゃないかな。信じられないけど、そうとしか考えられないよ」
俄には信じられない話だったが、そう考えれば辻褄が合う。
確かに時魔法でも同じ様なことはできる。あくまで人対象だが。それを御影は空間に干渉した。
玲奈もそれを見たので、頭では否定したいが、認めざるおえなかった。
あの癒杉舞が執心し、経歴不明の謎の男。
今日あって人となりを見ようと思った、例え第一印象が最悪だとしても。色眼鏡抜きで、初対面の気持ちで会おうと。
ぶっきらぼうで、口は悪いが、約束は守り、私よりもカティナから信頼されている。
事実、玲奈も命の危機を守ってもらった。
さすが師匠か・・・・・・『今日』はそういうことにしましょうか。
玲奈はくすっと笑い、優しげな表情になる。
「僕はちょっとようをたしたいから先に行ってて」
「そう、じゃあ先に行ってるね」
玲奈も階段に行き、ここには連太郎だけとなった。
「なんんだあいつは。玲奈は僕だけのものだ。殺す殺す殺す殺す殺す」
連太郎はどこかに連絡した。
数分後連太郎は何事も無かったかのように合流する。口元には邪悪な笑みを携えて。
「終わりです」
玲奈の槍が三十階層のボスの顔を貫き、危なげもなくクリアした。
これで終わりか。
御影はようやく一息ついた。
カティナや雫もすべてが終わったと、完全に気を抜いていた。
しかし、まだ終わってなかった。
「っぐ」
玲奈が突然苦しみ出す。
胸に手を当て、立っていられず膝をつく。
「「玲奈」」
カティナと雫は慌てて駆け寄る。
「玲奈、大丈夫か玲奈」
連太郎が玲奈を寝かせ、御影も側による。
遅効性の毒、あの時輝義が玲奈の手を握ったときか。
そう、輝義の策は二段仕掛けで罠にかけた後、あらかじめ握ったときにしみこませた無味無臭の浸透系毒を使ったのだ。
毒は発症後三十分で死に至る猛毒で、無論輝義は、解毒剤を飲んでいる。
「ししょぉ~」
縋るような、情けない表情でカティナは御影を見る。
安心させるように、御影はカティナを撫で。
「心配するな。契約主は死なせない。今回限りでもな。彼の者の毒を癒せ、ポイズンブレイク」
一つも二つも同じか。
開き直ったかのように、御影は癒魔法で玲奈を治す。
顔をしかめ苦しげな表情だった玲奈がすっとしたように和らぐ。
「又、助けられてしましましたね」
「まだ終わってないからな。契約は守る」
玲奈は立ち上がり、握手を求める。
「今日はありがとうございます。貴方の人となりが何となく分かりました」
「まぁ、何かあったら又契約してくれ。最もあのがめついフェリスがOKしたらの話だけどな」
差し出された手を御影は握る。
いろいろあって覚悟していたが、思ったより話のできる相手でよかった。最初は気が乗らんかったが、来てよかったと御影は思う。
「そんな事を言ったら、フェリスさんがかわいそうですよ。輝義さんは教会派の人間です。こんな事があった以上もう契約することはありません。今回の件で教会派に抗議したいと思います。おそらく輝義さんはお咎めなしになると思いますが」
「ままならないな」
どこもかしかも、これだから、権力者はいやだと御影は遠い目で思いに耽った。
二人の目線に気づきながら。
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